第51話
「それに彼氏って、何すればいいんだよ」
「私だって分からないわよ」
「例えばだよ、ほら、お化け屋敷入ったり、かき氷食べさせっこしたり」
「うーん、そんなものでいいんじゃないかしら」
「それもそうだな」
彼女いない歴=年齢の俺が、今日だけだとしても遥香の彼氏って、ハードル高くないか?
どれだけ配慮してても絶対照れてしまう。
だが、それを上手く隠しながら、
「ほら」
俺は遥香の方に手を差し伸べた。
「何、この手は」
「何って、一様“今日は”お前の彼氏なんだろ?だったら手くらい繋ぐだろ……普通」
「手くらいって、ハードル高くない?」
「お前が彼氏になれって言ったんだろ!?そんくらい嫌がらずやれよ!」
「べ、別に嫌がってないじゃない」
「なら紛らわしい反応するなよ!」
「逆に、リードしてくれてありがたいまであるわよ!」
「そ、そうかよ」
遥香は、俺の手をそっと握った。
平気そうな顔をしていたが、その手は少し手汗で湿っていた。
無理してるんじゃんか。
でも、こいつなりに頑張ってるんだろうな。
「それじゃ、ご飯食べに行くぞ遥香」
「なんでいきなり名前呼び!」
「リア充ってそんなもんじゃないのか?」
「いきなりすぎない!?」
「お前の方がいきなりすぎたわ!てかいつもお前のこと名前で呼んでるけど?」
「それは2人の時だけでしょ!?みんながいる場所では初めでじゃない!」
「でも聞きなれてるならそんなに驚く事なくないか?」
「それはそれ、これはこれだよ!」
遥香は握っている手の方をブンブンと振った。
「じゃぁ、とりあえずなんか食べに行くぞ」
俺は遥香の手を引き、少し歩いたところにある焼きそばの出店に向かった。
「ここの焼きそば無料券、駿水から貰ったからちょっとそこに座ってて」
窓側にあるテーブルに遥香を座らせて、焼きそばを買いに行った。
「おう、葵いらっしゃーい」
「相変わらずお前は元気だな」
陽気に焼きそばを受付をしているのが、横浜育人(よこはまいくと)。
綺良と駿水同様のヤリチンリア充。
みんな大好きなマッシュヘアのワンポイントに赤アッシュが入っており、韓国系スタイル。
顔もちゃんとカッコイイ。
「そんで、あちららは彼女さん?」
目線を遥香の方にやりながら言った。
「諸事情により、今日だけな」
「なんかめんどくさそうだな」
「ごもっとも」
「結構かわいい感じだけど、どうなんだ?」
「見た目に騙されてはいけないぞ?」
「ワンナイトだったら性格とかどうでもよくない?」
「お前は交尾する事しか考えてないのか?」
ヤリチンはみんなサルらしい。
「交尾って言い方はやめろ、俺は快楽を求めてエッチしてるだけだ」
「お前、俺に殺されたいのか?」
童貞に言ってはいけない事言ったぞ?
俺がどんな気持ちで童貞捨てれないか、お前には分からないだろ!
「とにかく、今日はお前の彼女なんだから大切にしてあげな」
「あー分かったよクソヤリチン」
「お前は早く童貞捨てろ、ワンチャン今日捨てられるかもしれないぞ?」
「うるせ~よ!お前は一生焼きそば売っとけ!」
中指を立てながら、遥香の方に戻った。
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