第49話

「でも、お前がメイド姿でマジ顔してるのは面白かった」


「それ俺も思った!」


「駿水もスーツ姿であの言葉はガチサイコパスだったぞ」


「ちょっと怖かったよな~、あいつらも殺意感じたんだろうな」


俺も緊張が解けたからか、表情が柔らかくなった。

あの状況で2人がいなかったら俺は今頃ボコボコにされてただろうな。

そうだとしたらめちゃくちゃ恥ずかしい。

ケンカ売ってやられて、周りの人に見られるとか死にたくなる。


「それじゃぁ、俺達戻るから」


「そっちもしっかり仕事やれよー」


事が終わると、2人はさらりと教室に戻って行った。


「お前、大丈夫だったか?なんかケガとか」


横に居た遥香に声を掛けると、


「手…………いつまで握ってるの……………………」


手元を見ながらぼそりと言った。


「ご、ごめん」


赤みが引いた顔は、またボッと赤くなり、急いて手を離した。

遥香も相変わらず顔が赤く、その顔を隠したいからかずっと下を向いてた。


「なんかごめんな、最後カッコ悪い事しちゃって」


自分の頭をさすりながら微笑していると、


「確かに最後はちょっとカッコ悪かった」


「だよなー」


「でも、途中までは………カッコよかった」


「え……………………カッコっ…………」


「別に…変な意味はないから………………」


「それは知ってるけど…………………」


「…………………………………………。」


突然、褒められたものだからびっくりした。

普段俺の事を褒めるどころか、貶したりバカにしたりしてるくせに、いきなり褒めるものだから小声で答えてしまった。

俺達はどちらも顔が真っ赤であった。


「でも、嘘でもあんな褒められると照れるよな」


そう苦笑いすると、

「別に……嘘じゃないし……………………」



「ん?なんか言ったか?」


「何でもないっ」


聞き返すと、なんでもないと強く言われてしまった。


「そ、そうか…………………」


今なんて言ったのだろう。

聞きたいけど、もう一回聞き返したら怒られそうだしやめておこう。


それにしても本当に照れるな。

噓だとしても顔がもつれるし、内心超嬉しい。


遥香がもっとまともだったら恋人候補だっただろうな。

でも、なんだかんだ俺のこと信頼してくれてて、ウザイ所も慣れるとちょっと可愛く見えるんだよな。

そんな事を、横でもじもじしている遥香を横目に思うのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る