第48話

最初の一言は余計であったが、その言葉に、俺の顔をすっかり真っ赤であった。

遥香に言われたからと言って、俺が照れないわけがない。

中身を除けば、おしとやかな美少女なんだからな。

俺は、照れを隠しながら、


「だそうですけど…………………」


「あっそ」


「なんだつまんねえーの」


「なんでこんなダサい奴がいいんだか」


ボロクソ言いながらその場を立ち去ろうとするヤンキーに俺は結構腹が立った。

このまま言われたままでは虫が収まらない。


「おいお前ら。靴は真っ白だけどよ、心はそのジーンズみたいにボロボロだな」


自分でも言った事にバカだと思ったが、カッコイイ捨て台詞を言った。

その言葉をヤンキーが無視するわけがなく、


「は?喧嘩売ってんのかお前」


「やっちゃうぞゴラ」


「調子乗るなよ」


サルみたく、前かがみに威嚇しながらこちらに向かってきた。

頭の中がサルだけではなく、行動までサルだった。


「別に喧嘩は売ってないですよ?これはあくまで僕の見解ですけど」


鼻で笑いながら言うと、


「それが喧嘩売ってんだよ!」


GUCCIのベルトの奴に怒鳴られながら胸倉を掴まれた。

この騒動の周囲にいた人も「何ケンカ?」「ヤンキーが喧嘩してるよ」とザワザワしていた。

1人の時なら、さっきみたいなめんどくさくなること言わないが、


「ちょっと~綺良と駿水こっち来て~」


胸倉をつかまれながらも、教室のドアに顔を出して2人呼び出した。


「おっす、なんだこの状況」


「葵がヤンキー絡まれてる。めっちゃレア」


ドアから出てきた二人はこの状況を笑いながら俺を掴んでるヤンキーの手を振り払った。


「あ?なんだお前らは」


その問いに綺良は、


「こいつの友人ですがそっちはイキり陰キャですか?」


ヤンキーの肩をポンと小突いた。

そして、2人の表情は険しくなり、


「お前たちケガしなくないなら早くここから消えな?」と綺良。


「ここにあと5秒いたら、3人とも骨が1本づつ折れていくけどいーい?」と駿水。


綺良の脅しならまだしも、駿水に関してはマジサイコパス発言であった。

綺良たちの容姿と発言にビビったヤンキー達は、


「お、覚えとけよ」


「お前許さねえーからな」


「今度大勢で来てやるからな」


と、腰を丸めて逃げて行った。


「マジ助かった」


ホッとため息を吐きながら2人にお礼を言うと、


「やっぱただのイキりだったな~」


「あーゆーやつは大体そんなもんだって」


いいよいいよと笑いながら俺の肩を叩いた。


「いやーお前が絡まれてるの面白いな」


「確かに、コントみたいだったな」


「お前らあの状況で楽しんでるって頭バグってるぞ」


「そうかもしれないな」


「俺はバグってるから大丈夫」


駿水はドヤ顔でサムズアップした。

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