第32話


遥香の一言で、その場の空気は凍り付いた。


「え……………………?」


事実を突きつけられた小林は頭がパンクしていた。


「それ、ホント?」


「ホントだね」


「ガチ?」


「ガチ」


「マジ?」


「マジ」


小林はここが現実だと確認しようと、一言一言確認し始めた。


「バレてるって………………どこまで?」


「大体…………バレてる……………………よ」


「中学校の事全部?」


「まぁ、全部と言っても過言ではないわね」


「あんな事やこんな事まで?」


「そんな事やひょんな事まで」


「隅から隅まで?」


「端っこから端っこまで」


段々とこれが現実だと分かってきた小林の目には、じわじわと涙が滲み出していた。

これは大大大ダメージだな。

今はじわじわとダメージが加算されて、瀕死の状態で耐えているが、後から強烈な一撃が入ってKOされるであろう。


そしてそこからドンキーコ●グみたいに暴走し始める。

ダメージを受けながらも、小林はまだ現実を受け止めきれないため、また質問を始めた。


「どうしてそのことがバレたの?」


「えっとー色々ありまして……………………」


「その色々って?」

「それ言わなきゃだめ」


「絶対ダメ」


その真顔で涙流しながらのダメは怖いな。


「まず私が陰キャだったことがバレて、それで優穂も疑われてたんだけど、最初は庇ったよ!庇ったけど……これまでの事バラすって言われたから…………………」


「それ、本当なの?」


「本当だけど……………………悪いと思ってる!この通り!」


遥香は土下座をするが、小林の表情は変わらず、


「そ、そう…………………………………………」


「ごめん!本当に本当にごめん!今度BL本買ってあげるから」


「…………………………………………」


「あの、優穂?」


「………………………………………………………………。」


小林は遂に動かなくなった。

遥香がどれだけ話しかけても、小林は涙を流しながらずっと一点を見つめていた。

すると、遥香は俺に近づくと、


「ちょっと、この空気どうしてくれるのよ」


と、耳打ちした。


「それ、俺に言っちゃう?」


「あんたが原因でしょ!?何とかしなさいよ!」


「何とかって俺が何かしなくても状況はすぐ変わると思うぞ?」


「この状況から何がどうやって変わるのよ!」


「何もしなくてもこれから面白くなるぞ?」


俺は小林の方を指差すと、数秒後、


「な――――――――――なんで」


小林は後ろに倒れたかと思うと、


「なんでよぉ~~~!!!!こんなのおかしいじゃない~~~!!!」


リミッターが外れ、小林の暴走が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る