第27話

遥香の家の前に着くや否や、小林は隣の家の表札を見に行った。


「本当に隣に住んでるんだ、キモっ」


「キモとはなんだ、キモとは」


「だって、今でもよく行ってる友達の家の隣にあんたが住んでるんだよ?」


「だからってキモいはないだろ」


俺がどこに住んだって自由じゃないかよ。

日本国憲法第22条『居住移転の自由』だぞ!


「とりあえずピンポン押さない?多分このままだと遥香あと1時間は部屋の掃除するわよ」


「なんでそんな事分かるんだよ」


「遥香の部屋見てみ?」


小林が指さす方向には、カーテン越しに人影が右往左往していた。


「確かにあれは終わらないそうだな」


俺はその光景を見て微笑していると、


「遥香は一度手を付けるとブレーキ効かないキャラだからね~」


小林も窓の方向を見て苦笑いを浮かべていた。


「だから下ネタもあんなにのめり込んだのか」


「一単語教えたら、『この単語何?これは?』ってずっと聞いてくるもんだから私も教えざる負えなくて」


「それはさぞかし大変だっただろうな……………………」


流石に愛想笑いしか出来ないぞ。

一つの事に熱中するのは良い事だけど、なんかズレてるんだよな。

それを違うことに生かして欲しいものだ。


ため息を吐きながらインターホンを押すと、家の中からドコドコと走るような音が聞こえてきた。

そして、少し鳴りやむと思うと、


「も、もう来たの!?ちょっと待ってて~!」


インターホン越しに遥香が焦った様子で反応した。


「あと少しでそっち行くから~!!」


それを最後に声が途切れると、家の中の物音が激しくなり、工事現場の様になっていた。


「これ時間かかる感じじゃないのか」


「そんくらいいじゃない。女の子の家入れるんだから」


「初女の子の家くらい彼女が良かったんだが?」


「遥香可愛いからそれで我慢しなさい」


「それは否定できないけど……………………」


否定したいけど、嘘はつけない俺であった。






~俺達がピンポンをした時の中の様子~


「なんでこんなに早く来るのよ~!ってもう約束の時間じゃない!」


「服は汗かいてるからとりあえず学校のジャージでいいか!でも、掃除したせいで部屋の匂いがぁ~~!!」


「ヤバい物は全部クローゼットにしまったわよね、よし。パソコンの検索履歴は~、まぁ見られないからいっか…………………でも一様消しておこう」


「あ、でも履歴から見たいものあるし~、やっぱ消さなくていっか!」


「準備できたし、玄関行きますか!」


このように大変だったようだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る