第26話
俺と小林は周りの人に気づかれないように学校を出ると、遥香の家と歩きだした。
本当、家から歩いて行ける距離の学校を選んでよかったと実感する。
まぁ実際の所、ここら辺の地域で俺の偏差値で行ける学校がここしかなかったことは内緒にしておこう。
学校から家までは大体15分程度。
遠くもなく近くもない距離だ。
ここで疑問に思うことがあるだろう。
なぜ自転車を使わないのか。
自転車を使えば5分程度で学校に着け、時間短縮になるのに使わないのかと。
実は僕、有馬葵は自転車に乗れません。
…………………………………………………。
嘘だと思うだろうが、いたって真面目だからな?
乗れないと言うよりは、トラウマで乗りたくない。
小学校低学年くらいの頃に自転車の練習をしていた時、最初は広場で練習してたのは良いものの、少し乗れたからと言って道路に出た。
そして交通ルールなどまだあまり知らない俺は、案の定交差点で車に轢かれたと。
そこから約9年間。
俺は自転車に触れる所が近づくことすらしていない。
多分乗れるのだろうが、まだちょっと心が体に追いついていない。
その経緯はさておき、俺は遥香の家への道をスイスイと歩いていると、
「何、遥香の家知ってるわけ?」
小林は疑いの眼差しを向けてきた。
「知ってるけど、なんで?」
「いや、なんで遥香の家知ってるのかなーって」
「知ってるもなにも、家隣だからな」
「そっかー。家隣なんだねー………………………ってえぇぇぇ!!!!」
小林は俺の言葉に絶叫した。
「とと隣ってどうゆう意味!?」
「どうゆうってそのままの意味だろ」
「いつから知ってたの!?」
「つい最近だよ、てか昨日」
「その話を詳しく」
そこから俺は、小林にある程度の経緯を話してやった。
その話の中にもちろん遥香が陰キャだったという話題もあったが、そこは言わなかった。
これをここでバラしてしまうと、小林も陰キャだったことがバレていると思われるし、これからの楽しみがなくなってしまう。
「大体経緯は分かったけど、よく会わなかったわね遥香と」
「いや、会ったぞ?」
その言葉に小林はビクッと少し体を跳ね上がらせた。
「遥香ではないが、妹と」
「そ、そう」
「あいつの妹、性格真反対なんだな。なんか根暗みたいだった」
「そ、そうんなんだよね〜。遥香の妹ちゃん少し暗い感じなんだよね〜」
ホッとため息をついた。
どこまで嘘を重ねたら気が済むんだよ。
そろそろ自分の首絞めてるのに気がついた方がいいんじゃないのか?こいつ。
まぁ、これから地獄を見るのは小林だからどうでもいっか。
そんな事を考えていると、遥香の家への前へと来ていた。
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