第23話

午後の授業は駿水が早退し、平和な時間が訪れた。

つまらない授業を、お昼を食べてウトウトした状態で聞く。


「平和だ~~~よ~~~」


教科書を枕に寝言を言っていると、


「お前、幸せそうに寝るよなー」


斜め前の席の綺良が話しかけてきた。


「だって~今は難も考えなくていいんだもん~」


俺は寝ぼけながらそう答える。


「何も考えなくていいって、今数学の時間なんだが?」


「そんなの関係ないよぉ~」


「お前、前回の数学のテスト赤点取ってただろ!」


「ぁ~そんなこともあったっけ~?」


「それに補修食らっても行かなかったから、次赤点取ったら進級できなくなるぞ?」


「そーなんだ~今は関係ないよ~」


「だから授業中なんだけど?」


俺にとってはこの時間は至福の時間なんだよ。

遥香から話しかけられることはないし、駿水は今日いないし。


この時間!この金曜日の5時間目だけは俺から取らないでくれ!

その後、45分間熟睡をして授業が終わった。

そして、顔を上げるとと机には一枚のプリントが置いてあった。


「なんだこれ」


そのプリントを見ると、そこには


『前期期末テスト。数学科、2日目 2限目』


と丁寧に書いてあった。


「…………………………………………綺良?」


俺は半分思考停止しながら綺良に助けを求める。


「9月だから当たり前だろ?」


「あのー、凄く言いにくいのですが……………………」


椅子から立ち、床に正座してすると


「勉強教えて下さいお願いします!!!!!!」


頭を床にこすりつけて土下座をした。

綺良は勉強ができる。


ヤンキーみたいな見た目してるのに、定期テストで上位に食い込むくらい勉強ができる。

ヤリチンなのに勉強ができる……………………


普通このキャラ赤点ばっか取るキャラだろーが!

なんで童貞で健全な生き方している俺がこんな奴に勉強も負けなきゃいけねーんだよ!


なんなんだ?これは新手のイジメかなんかのか?

しかし、綺良の答えは


「ダメだ、今回は自分で勉強しろ。俺も今回の範囲苦手な部分だから勉強しないと」


交渉決裂だった。


「そこを何とかしてくれ!お前が苦手だったら俺はなおさらなんだよ!」


「授業聞いてないのが悪いし、今回は無理だから下仁田さんにでも頼みな。今日は美香ちゃんの家いくからじゃぁな」


そう言うと綺良は、土下座している俺の横をと通りすぎ、セフレの元へ向かった。


「おいおい、マジかよ……………………この後小林と遥香と集まるんだが?」


土下座体制で俺はそう呟いた。

テストのせいで俺への負担がぐんと上がり、現実逃避をしようと、小林との待ち合わせの時間まで空き教室でVtuberの生配信を見るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る