第17話

遥香の頭に手をやろうとすると、俺たちの顔は、唇があと1センチくらいでくっつくまでに迫っていた。


それに気づいた遥香はボッと顔を赤らめ、すぐに後ろを向いてしまった。

その可愛げに照れた遥香を見て、俺も少し笑みがこぼれた。


マジで、下ネタさえ言わなかったら完璧告白してるだろうな~。

俺はそう思いながら遥香の方を見て、それを隠すように、


「お前、何したかったの?」


と、聞いた。

すると、遥香も顔はまだ赤く照っていたが、そんなの構わず、


「これをしたかった」


俺のこめかみをこぶしでぐりぐりし始めた。


「あ、いたっ!いた、いたたたたたたたたた」


必死に頭を守るが、遥香は手を止めることはなく、


「私をこんな目に合わせた罰だ。じっくりと味わえ」


「ちょ、ホント痛いから」


「やめないよ?だって私にこんな……………………恥ずかしいこと」


「なんだよ、恥ずかしいことって、なにかやったか?俺」


うん、さっきキスしかけた。それが原因だ。


それを聞くと、遥香の顔は一気に茹で上がり、


「……………………っつ、う、うるせぇ~~~~~~!」


更にこぶしに力が入りさっきの倍以上の力が、俺の頭を襲った。

10秒ほど経ち、遥香からの攻撃は収まったものの、痛みは公園を出るまで収まることはなかった。


「お前、ちょっとは手加減しろよな?」


公園を出てから数分経ち、俺たちは家へ帰る道を歩いていた。


「手加減なんかしないし」


「なんでだよ」


「だって…………………………………………それはもういいから!」


顔を赤くして目をバッテンにしながら、遥香は恥ずかしい理由を断固として教えてくれなかった。

なんかやったか?俺。


全然身に覚えがないのだが、なんか罪悪感が残る変な感じがする。

まぁそんな事より、


「なんでついてきてるんだ?」


そういえば、公園からずっとついてきてるぞこいつ。

まっすぐ自分の家まで帰ればいいのに。そんなに俺と一緒に居たいのか?

言ってくれれば、俺は別にいいんだぞ?一緒にいるくらいなら。

俺が質問すると、


「は?」


遥香は鋭い眼光で睨んできた。


「なんだその目は」


「私の家こっちなんですけど。あんなこそなんでこっちいるわけ」


「俺も家こっちなんだよ。悪いか?」


「うん、悪い」


「何がだ」


「家が一緒の方面なのが悪い」


こいつ何キレてるんだ?もしかして生……………………いや、やめておこう。

そこからまたまた数分が過ぎ、俺は立ち止った。

と、ほぼ同時に遥香も足を止めた。


「なぜ止まる」


俺はあきれた様子で言うと、


「あんたこそなんで止まるのよ」


またキレられてしまった。


「だって俺の家ココだし」


目の前にあるクリーム色の一軒家を指さした。


「流石に家が隣ってことはないよな~」


俺が冗談交じりに言うと、


「は?…………………………………………え……………………?」


遥香の顔は真っ青になっていた。


「あの~遥香さん」


「…………………………………………」


俺が呼び掛けても反応をしない。


「冗談だよな?そんなわけないよな?」


体を揺さぶり、必死に問いかけると


「あ、あれ―――――――――私の家――――――――――」


俺の隣にある水色の少し派手な一軒家を指差した。


「お、おい。流石にそんな訳ない……………………よな」


俺は隣の家にゆっくりと近づき、表札を見ると、そこにはくっきりと『下仁田』と書いてあった。

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