第11話

「まさかのお前だったのか」


俺は動揺した心を落ち着せ、ベンチに腰を掛けた。


「驚いたでしょ」


二ヒヒという表情を浮かべて俺を見る小林。


「それはそうだろ。こんな情緒不安定な奴とお前が友達だったなんて」


「意外でしょ?」


「あぁ、びっくりして死ぬかと思った」


「それはそれはいいサプライズになったよ」


ほんと、いいサプライズなこったこれは。


「でさぁ、私呼んで何をするの?」


遥香が飲んでいたココアを一口飲み、小林はそう言った。


「え?会わせるだけだけど」


「そんだけ?」


「だけ」


「ほんとに?」


「とに」


マジかよ。

会わせたいとは言ってたけど、本当に会って終わりだとは流石に思ってなかったわ。

もっと何かあるかと思ってたわ。


例えば3人でご飯行って親交を深めるとかその他諸々。

だが、彼女はほんとに会わせる気しかなかったらしい。

マジで何考えているかわからない。この女。


「じゃぁ、俺教室戻るから」


もうすることもないし、俺はバックを持ち教室に戻ろうとすると、


「ちょっと~、もう行っちゃうの」


遥香は声をかけて来た。


「だって、会わせるだけだったんだろ?ならすることないじゃん」


「いや、普通会ったらある程度話したりご飯食べ行ったりするんじゃないの?」


「はぁ?」


さっきと言ってること違うんですけど!会わせるだけじゃないんですか!?

それとも君の「会わせるだけ」は、その後ご飯も行くことも含まれてるんですか!?


「だって、そうでしょ。このままだったらつまらないじゃない」


意味不明なことを言っている遥香を横目に、俺は小林に視線を向けると、


「中学の時もあんなだったから」


「それは、ご苦労さん」


「まぁもう慣れたけどね」


と、苦笑いした。


「それで、もう少し話していかない?」


優しく言われたが、


「時計見てみ」


俺がそういうと、遥香はスマホのロック画面を見た瞬間、


「ヤバい!私、体育男女合同じゃないからで移動教室だ!」


「私はまだ大丈夫」


「ちなみに俺も余裕で大丈夫」


「うるさい!じゃぁ放課後、放課後マック行こう!授業終わったら校門集合だから!」


遥香は急いで屋上から姿を消した。


「あいつ、バカなのか?」


小林に聞くと、


「うん、バカだしドジだし情緒不安定」


「それは俺も知ってる」


「あと、可愛い」


「それもわかる……………………え?」


つい本音が出てしまった。


「え!?やっぱ遥香可愛い!?」


「え、いや、まぁ」


「でしょ!?いつもは可愛さ隠してるけど、可愛いよね?」


「可愛い方ではある」


性格はともかく、顔は可愛いので嘘はつけない。


「で、遥香ちゃん狙ってんの?」


ニマニマした表情で小林は聞いてきた。


「はぁ、お前バカじゃないの!誰があんな――――――」


俺は顔が真っ赤になった。


「でもさ、そんなに顔真っ赤にして言われても説得力ないんだけど」


「う、うるせぇ!授業行くぞ!」


俺は赤くなった顔を隠しながら、小走りで屋上を後にした。

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