第8話

屋上に向かう途中、俺の精神安定剤のエナジードリンクを学校の自販機で買い、ちびちびと飲みながら、階段を上がった。


カフェインが効いたからか、あまり緊張や不安などは感じられず、階段を一番上まで上ると、普通に屋上の扉を開けた。


「遅い」


遙香は少し離れた所でフェンスに寄りかかっていた。


「悪い、少し用があった」


「もしかして大野さんと?」


ここにもエスパーがいた。


「あぁ、そうだがなにか?」


「いや、昨日のこと話してないかなと」


遙香は少し心配そうな顔をしていた。


「あぁ~。話したよ」


遙香の困っている反応が、可愛くて面白いので嘘をついてみる事にした。

昨日のを見てしまったら、こうせざる負えない。

だって可愛いから。


「はぁ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!」


遙香は俺の胸倉をつかみ大きく揺さぶった。


「何やってんのよあんた!!!!!!!!!!殺されたいの!?私人生終ったんだけど。もういい、あんたを殺して私も死ぬ!」


半泣きになって言ってくる遙香はやはり可愛かった。

この弱い人に対する俺のSは自分でも凄いと思う。

なんか多重人格みたいで。


遙香はとうとう体育座りをしてうずくまってしまった。

ぐすりとすすり泣く声に、俺も流石に可愛そうだと思ったので、


「遙香、さっきの嘘だから、誰にも言ってない」


正直に言ってやることにした。

それを聞くと遙香は、


「ほんと?」


体育座り×上目遣いの神演出で、俺を見てきた。

俺はそのあまり可愛さに理性を取り戻し、少し顔を赤らめながら、


「あぁ、嘘ついて悪かった」


ホントに遙香の怒ったり、泣いたりした顔は可愛いんだよなぁ~。

今度、もう五回やってみようかな。


「それならいいんだけど、今日集まってもらったのは、これからどうするかよ」


「これからって?」


「この性格を知っている人への簡単なルール」


ここから、遙香との性格会議が始まった。


「えっとぉ~、ルールがあるって事はその性格の事知ってる人がいるんだよね?」


「当り前じゃない、中学の人はみんな知ってるわよ」


そうだった。

大人しい性格になったのは高校入ってからだった。


「その人たちにはなんて言ってるんだ?」


「絶対言わないでって皆に100回以上言ってるわ」


どれだけバレたくないか嫌でも分かる回数だなおい。

これは俺も絶対言わないようにしよう。

言わないだけで、遥香では遊ぶがな。


「それは、すごいな」


「それであんたは、この学校で2人目の理解者だから、ちゃんとルールを教えとくわ」


「え?この学校知ってる人いたの!?」


素直に驚いた。


「うん、中学の友達がね」


「そうなんだ」


「そ。そのことの間で私の性格を隠すためのルールがあるから、それを今から教える」


「よろしくお願いいたします」

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