第4話

これは、まずい。

本当に見てはいけない物だ。

俺は一回目を逸らすが、


「セックス……………………クスクス」


「ま●こ……………ふふふ」


など、下ネタの発せられる量は増すだけであった。

これは止めた方が良いのか?止めない方が良いのか?

俺の心の中で葛藤があった。


もしも俺が声をかけたなら、こんな恥かしい所を見られた下仁田さんは何をするか分からない。


だが、これで声を掛けなかったら、誰かが図書室に来てこの光景を見たらもっと悲惨な目にあうだろう。

俺はそのことを天秤にかけた結果、声を掛けることにした。


「あの」


「………………………ア●ル…………………………………………」


「下仁田さん?」


「…………………………おな………………くくく」


彼女の返事の代わりに下ネタで返してきた。

というのも、ただ、俺に気づいていないだけであった。

俺は思い切って立ち上がり、下仁田さんの元へ近づいた。

そして、肩を叩き、


「下仁田さん?」


と、声をかけた。


「ひゃいっ!」


今までに聞いたことのない可愛い声を出して驚く下仁田さん。


「な、なんなんですか?あ、有馬さん」


少し焦りながらも、何事もなかったかのように話しかけてきた。


「あの、さっきのって」


「何のことでしょう」


俺は下仁田さんのスマホを指さし、


「そのことです」


下仁田さんのスマホに表示されていたのは、「Ⅴtuber下ネタ集」と書かれた動画だった。


「はえ?」


スマホを確認するないなや、スマホの画面を閉じ、


「私、何してた?」


質問をしてきた。


「何って………………………………」


「言い方が悪かった、何言ってた」


下仁田さんには、いつもの落ち着いた表情&口調では無く、今は怯えたシマリスの様な感じだ。


「えっと……………………………」


俺は言葉に詰まっていると、下仁田さんは俺に寄ってきて、壁に追い詰めた。

いわゆる壁ドンの形だ。


壁ドンと言っても、俺の方が身長ははるかに高いしムードがムードなので、童貞の俺でも全然ドキドキしなかった。


「正直に答えて……………いい?」


「はい、えっと~下ネタを言ってました」


俺は正直に言うと、


「なぁ~っ!私のキャラが崩れたぁ~~~!!!!!」


下仁田さんは、いきなり地団駄を踏んだ。


「い、いきなりどうしたんですか?下仁田さん」


次々と起こる展開に、動揺していると


「あぁ~、お前にはバレたからこれ以上真面目を演じる必要はないか」


声のトーンを少し低くして、髪をかき上げた。


「下仁田さん、それって」


「そうだよ、私は学校で大人しいキャラを演じているの。あと名字で呼ぶな、むずむずする」


「お、おう。分かった」


俺は、下仁田さん(言われた通りに、これからは遙香と呼ぼう)の変りように唖然とした。


「それは、いいんだけど、どうしてキャラなんかを?」


素朴な疑問だ。


「私は、高校生活を静かに過ごしたかったんだ」


それは簡単な答えだった。


「中学生の頃は、うるさくて、まぁギャルだった。でも、高校からはその性格を辞めようと思ったんだ」


「その理由は?」


「可憐な美少女に思われたかったからだ!」


「凄い単純!」


俺は勢いでツッコんでしまった。

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