第3話

「それってどうゆう意味?」


俺はいきなり目が鋭くなった下仁田さんに動揺しながら聞くと、


「あなた達の話を聞いてたの」


その話と言うのは多分、先程綺良と話していた俺の彼女をどう作るかの問題の事であった。


「聞いてたのか」


「ええ、教室を通りかかった時に偶然あなた達の話し声が聞こえたから」


「それ、どこから聞いてた?」


「最初から最後まで全て」


「そうなのか」


俺は、俯きながら申し訳なさそうに言うと、


「私は、大野さんみたいな猿脳の事が嫌いだわ」


「猿脳とは?」


「女の事や、性欲を満たすことで頭がいっぱいの人の事よ」


「なら猿脳っているのは当たってるな」


「しかも、あんなに下品な話を教室で堂々と話すなんて、頭湧いているんじゃないのかしら」


「……………………。」


その正論にグーの根も出なかった。


「そんな下品でいかがわしい話に私を巻き込まないでくれるかしら」


下仁田さんのキャラなら、下ネタが嫌いなのはわからなくもない。

それか、むっつりスケベっていう逆パターンもあり得るが、ここまで言われるとそのパターンはなさそうだ。


「有馬さんはそんなのではないと思っていたのに、見損なったわ」


俺は少し訂正しようと思ったが、確かに今日、俺は下仁田さんに話しかけようとした。

しかも、ヤル目的と解釈できるような理由で、

だから、


「ごめん」


その一言しか口に出せなかった。


「まぁそうゆうことだから、私はあなた達のおもちゃではないから」


下仁田さんはそう言うと、椅子を後ろに向けてスマホにイヤホンを付け、画面に目をやった。

どうしよう、確実に嫌われた。


ヤバい。今日の目的と真反対かつ最悪な状況になってしまった。

このままだと、下仁田さんと話せなくなるだけではなく、絶対に綺良にバカにされてしまう!


どうにか、早めに機嫌を直してもらう方が良いだろう。

これからの委員会生活に関わるからな。


俺は下仁田さんの方を見るが、画面に集中していて、いつもより話しかけるなオーラが濃かった。

だから俺は、イヤホン耳につけ、音楽を聴いた振りをしながら下仁田さんの様子を窺う事にした。


だが、下仁田さんは一向に動きを見せず、20分が経った。

これは長期戦になりそうだな。

そう覚悟し、本を読み進めようとすると、


「おっぱい」


どこからか、唐突に俺の耳にそう入ってきた。

いやいや、この場所でそんな事聞こえるはずがない。

ただの空耳だろうと解釈したが、


「ちんこ」


やはり聞こえてくる。

どこからかハッキリとした下ネタが。

しかも聞き覚えのある、綺麗な透き通った声で。


もしかして、これを言ってるの下仁田さんか?

いや、でも下ネタが嫌いと言っていたし、それはないか。

だが、ここまでハッキリと聞こえるのは不自然極まりない。


これがもし、下仁田さんじゃないのなら逆に怖い。

これじゃ埒が明かないので俺は、下仁田さんの方を見た。

多分、俺は見てはいけない物を見てしまった。


俺は目にしたのは、


ニコニコとスマホの画面をガン見しながら、下ネタを言っている下仁田さんの姿があった。

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