第2話

俺は今、先程話した事を実行するべく、図書室へ続く廊下を歩いている。


ホントあいつら、下仁田さんの事舐めてるだろ。

そう、下仁田さんはおしとやかで、可憐な少女という感じなのだが、話しかけるなオーラがこれでもかと滲みてている為、話しかけられない。


そのせいで、下仁田さんの仕事をどれだけ俺がしたことやら…………………………

まぁ、そんなの”今は”どうでもよく、今日は下仁田さんに絶対話しかけなければいけない。


これ以上、綺良達の話についていけないのはヤダ!

童貞でバカにされたくない!


俺も「いやぁ~●●ちゃん良かったよ~」とか言ってみたい!

廊下でそのような事を考えていると、


「有馬さん。そんなところでどうかしたんですか?」


背後から、耳が幸せになる声が聞こえた。

後ろを向くと、先程話していた”今日の目標”がキョトンとした顔で立っていた。


「い、いやその」


「今日、当番の日でしょ?」


「あ、あぁ」


「そんな所で突っ立ってないで早く行きましょ?」


下仁田さんは廊下を歩いて行ってしまった。


俺は少し動揺した。

いつもは通りすがっても何も言ってこなかったのに、今日は話しかけられたのだ。


話しかけられたって事は、俺から話しかけてもいいって事だよな。

そうゆう解釈でなければ、逆ギレにも程がある。


ていうか今は、というか今日は、絶対に俺から何か話題を作って話さないといけな

い。

危うく忘れるところだった。


俺が動揺していた脳みそを再度動かした頃には、廊下に下仁田さんの姿はなかった。

どれだけフリーズしていたが、自分でも分からなかった。

え、1時間くらい止まってたらどうしよう。


俺は、そんなしょうもない不安を抱えながら図書室へと向かった。

廊下の角にある図書室の扉を開けると、受付には先に着いていた下仁田さんが、本を読んで座っていた。


読書の邪魔にならないように、静かに受付の隣の席に座り、俺も本を読み始めた。

すると、


「遅かったじゃない」


また話かけられた。


「あぁ、ちょっとお花を摘みに行ってて」


「あら、そう」


やはりおかしい、様子がおかしい。

言葉の数は少ないし、すぐ会話は終わってしまうが、話しかけてくるのが根本的におかしい。

熱でもあるんだろうか。


いつもなら無言の空間に、本のページをめくる音しか聞こえない図書室に、今日は話し声が響いている。

だが、逆に考えればこれは好都合だ。


話しかけてくれるなら、圧倒的にこちらも話しかけやすい。

今日は話かけるなオーラも出ていないみたいだし、今のうちに、


「ね、ねぇ下仁田さん」


「何かしら」


「その本面白い?」


不格好な笑顔でそう聞くと、


「私はあなた達の遊び道具ではないわ」


「へぇ~、変わった本の名前だね」


「いえ、あなたに言ってるのよ」


「え?」


「私は、あなた達の遊び道具ではないと言ってるの」


眼球を鋭くして、繰り返した。

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