下ネタが嫌いと言いながら、さりげなく言ってくる下仁田さん

もんすたー

下ネタ

第1話

男は喋っていると大体、下ネタが出てくる。

夕日が照らす、ある日の放課後の教室。

この空間も例外ではいなかった。


「昨日、西宮ちゃんとヤッたんだけど、胸大きくて締まりめっちゃよかったぜ」


「いいなぁ~、俺の彼女なんか顔と声は可愛いんだけど、胸小さいんだよなぁ」


「でも、貧乳は感度いいからいいじゃんか。あと舐めやすい」


「でも、男のロマンはパイズリされながらのフェラでしょ」


「まぁ、そこは否定できん」


「だから、セフレ作ろーかな~?」


「いいんじゃない?ネットならすぐできそう」


今、この会話に入れていないのが、俺。有馬葵(ありまあおい)なのだ。


「そうえば、葵は童貞なんだっけ?」


「まぁ、まぁな」


俺は童貞という言葉が嫌いだ。

周りの友達は中学で卒業した人もいるが、高校になり、さらに大人になっていく人が増えた。

その中で、俺は高校2年になった今でも童貞のままだった。


「葵なら童貞卒業出来なくとも彼女くらいできるでしょ。イケメンなんだし」


「そ、そうか?でもほら、俺……………………ビビりだし、貧弱だし」


「でも、彼女の一人くらい出来たことあるでしょ~」


「ない」


ハッキリとそう言った。

恥ずかしながら、彼女いない歴=年齢なのだ。


「だから~、俺に彼女を作らせてくれよぁ~」


俺は泣き目になって頼んだ。


「俺の可愛いセフレちゃん達は渡さん!」


そう言ったのは大野綺良(おうのきら)。通称、ヤリ手の王子様。

金髪が輝く、身長181の高身長イケメン。それにテ●スの王子様みたいなあだ名がつくほどのヤリチン。


ただただ羨ましい。

こいつとは高校から知り合った中で一番仲がいい。

だが、綺良の高校入学当初の噂はものすごいものだった。


「あいつと絡むと、ろくなことないから」


こんな噂だ。

俺も最初は怖かったが、次第にその噂は、女に対しての、しかもエッチなあんな事やこんな事。


俺には到底体験できない、羨ましい噂だった事を教えられ、そこから俺たちは次第に仲良くなり、つるむような仲になった。


「そうだ!なら、葵と同じ図書委員の下仁田さんなんてどう?ほら、かわいいし」


「いやいや、無理だよあんな可愛い人。俺になんて釣り合わないって」


「でもさ、あの容姿で彼氏いないんだぜ?」


下仁田遙香(しもにたはるか)俺と同じ図書委員の女子。

黒のショートボブに右耳にはピアスが一つ。


おっぱいは…………………………………普通より少し小さい。

スラッと伸びた鼻の先には、薄ピンクのプルっとした唇。大人見ているというよりは、どこか小動物を思わせるような可愛いさだ。


「でも、俺あんま話したことないんだよな」


「なんでだよ。俺だったら絶対話しかけるのに」


「お前と一緒にするな。最後に話したのは――――――――――――――――――『この、文庫本管理の書類書いておいてね』『わかりました』このやり取りを一週間

前くらいに」


俺はその当時の事を再現しなら言うと、


「お前もっと話広げろよな?例えば『書き方教えて』とか『一緒に書こう』とか何でもあったろ!?」


「それはお前だから出来るんだ!」


「まぁいい、今日当番だろ?今日話しかけてみろ。どうせ受付けで2人ぼーっと本読んで座ってるだけなんだろうし」


「結構ハードル高いぞ?」


俺にそんな勇気あるだろうか。

しかも、いつ見ても話しかけるなオーラを醸し出しているから話しかけづらい。

もし俺が話しかけたとしても、『何、用がないのに話しかけないでくれる』と言われるのは目に浮かぶ。


どこかの『青春とは嘘であり、悪である』と言っている人に、正論をぶつけて論破しているヒロインのように……………………


「大丈夫だって、もしも話しかけないでって言われたら『可愛すぎて無理だよ』って言えば、大体の女は恋に落ちた顔になるからな」


「そのヤリチンの謎理論が俺に通じると思うなよ!?」


「そっかー、これだから童貞は」


綺良は鼻で笑いながらそう言った。


「誰が童貞だ!」


「この空間で童貞はお前だけなんだけどな~」


「あーそうだった忘れてたよ!」


「怒ってないで早く委員会行った方がいいんじゃないのか?今日お前当番だろ?」


「あ、ヤバい!早く行かなきゃ」


「じゃぁ、ちゃんと話しかけて来いよな」


「おう、頑張ってはみる」


「下仁田さんに怒られて、童貞イジりされないといいな~」


「そんな事されるか!」


俺は絶叫しながら教室の扉を勢いよく開け、図書室へと向かった。


~~~



「ホントあいつ、出来るのかね~」


「なんで俺を話に入れてくれなかったんだ?お前」


「悪い、葵の話に夢中になっててお前の存在忘れてた」


「それ酷くないか!!」

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