第3話003「特別な力(前編)」



「さて、ここで異世界の救世主様たちの特徴・・をご説明致しますね」


 そう言って、シャルロット女王が俺たち『異世界人』の特徴とやらを具体的に説明した。


「まず、異世界の救世主様たちのステータスは基本、この世界の人よりも初期値が高くなっているはずです。また『固有魔法』を『レベル1』の時点からすでに持っている人もいるはずです」

「「「「「あ、ある! あるぞ!」」」」」


 シャルロットの説明を聞いて、ほとんどが「ある」と声を上げる。


「あと、特に重要なのが『固有スキル』です。これは通常『ない』のが普通ですが、異世界の救世主様たちはかなりの確率で『固有スキル』を持っている方がいるはずです。⋯⋯いかがでしょう?」

「「「「「あるぞ!」」」」」


 またしても、ほとんどの者が「ある」と声を上げる。


「そうなのですね! ちなみに『固有スキル』は1つあるだけでも凄いことですが、さらに特別な人によっては『固有スキルが2つ以上』ある方もいるようで⋯⋯」

「ある!」


 すると、ここで一人だけ・・・・「ある」と答えた。そいつの名は⋯⋯⋯⋯柊木拓海。


「まあ! 固有スキルが2つもあるのですね! 見せてくださいませ!」


 そう言って、シャルロットが柊木に近づきステータスを確認した。


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【ステータス】


名前:タクミ・ヒイラギ(異世界人)

年齢:16歳


称号:勇者

レベル:1


HP:220

MP:290

身体能力:151

身体硬度:131


魔法:火炎放射フレイム・スロー身体強化ブースト治癒ヒリング

固有魔法:光の槍フォトン・スピア

固有スキル:女神の加護(Lv1)、勇者の加護(Lv1)

体術:なし


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「す、凄い、固有スキルが本当に2つも⋯⋯。それに『称号』があの⋯⋯⋯⋯『勇者』!」

「おお、なんと! 称号が『勇者』ですと!」


 シャルロットの『勇者』という言葉に、お偉いさんっぽいじいさんたちが急に色めきだった。


「はい。しかも『固有スキル』は『女神の加護』と『勇者の加護』です!」

「「「「「おお! 勇者の加護っ!!!!」」」」」


 どうやら、この『勇者の加護』というのに皆がかなり驚いていた。


「この⋯⋯『勇者の加護』というのは何なのですか?」

「は、はい。えーと⋯⋯」

「あ、待ってください。何か『頭の中』で『勇者の加護』についての知識みたいなのが出てきました」


 柊木はシャルロットに『勇者の加護』についての説明を求めたが、その時、自身の頭の中にその説明が『知識』として出てきたのでそれを確認した。


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『固有スキル:女神の加護』

・ステータス成長率に10%の補正


『固有スキル:勇者の加護』

・ステータス成長率に20%の補正


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「『勇者の加護』がステータス成長率に20%の補正⋯⋯。あと『女神の加護』が10%の補正⋯⋯。つまり、加護がない人に比べて30%のステータスの成長補正がつくということか」

「そ、その通りです。ただ、通常固有スキルを持っている方でも『ステータス成長率補正』という『成長レベルアップに関する固有スキル』を保持している方は滅多にいません。なので、それだけでもすごいことです。ですが、それ以上に『勇者の加護』には特別な意味がありまして⋯⋯」

「特別な意味?」

「はい。これは、異世界の救世主様の活躍が記された書物に書いてあるのですが、最後に邪神を封印したのは『勇者の加護』を持つ者⋯⋯すなわち『勇者の称号を持つ者』だと記されております。なので、『勇者』の称号を獲得したのは、スキルの効果以上に重要なことだと我々は認識しているのです!」

「つ、つまり、私が⋯⋯その⋯⋯『勇者』?」

「はい! そうです、タクミ・ヒイラギ様! あなた様はそのかつての邪神を封印した勇者と同じ『称号』と『固有スキル』を持つ者です! これはとても特別なことですっ!!!!」


 シャルロットが目をキラキラ輝かせながら、柊木に興奮気味に『勇者の凄さ』を捲し立て羨望の眼差しを向ける。


「シャ、シャルロット様⋯⋯落ち着いてください。私にはまだ自分がどういう状況なのか、よくわかりませんので⋯⋯」

「はっ!? す、すみません⋯⋯私としたことが!! 余りにも凄いことだったので⋯⋯つい⋯⋯」

「い、いえ、大丈夫です」


 そんな謙虚な物言いをする柊木だったが、口元はニチャァと醜く歪んでいた。⋯⋯間違いない。柊木こいつは今、すべてを把握した上で『自分はやはり特別だ』と思って悦に浸ってやがる。


 また、お偉いさんたちは他にも「レベル1なのに能力値がすべて三桁! 信じられんっ!?」などと柊木のステータスの初期値の高さにもかなり驚いている様子だった。おそらく、これまで召喚された異世界人の中でも相当高スペックなのだろう。


 次にシャルロットは、他のメンツのところにも行き、ステータスを確認し始めた。すると、


「え! こ、今度は⋯⋯称号『拳聖』!」

「なんと『拳聖』ですとっ!?」


 次に、称号が『拳聖』ということでシャルロットもじーさんたちも、その『拳聖』を獲得した生徒⋯⋯⋯⋯吾妻翔太へと駆け寄った。


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【ステータス】


名前:ショウタ・アズマ(異世界人)

年齢:16歳


称号:拳聖

レベル:1


HP:75

MP:49

身体能力:91

身体硬度:133


魔法:身体強化ブースト

固有魔法:幾千もの拳サウザンド・ナックル

固有スキル:女神の加護(Lv1)

体術:なし


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「す、素晴らしい⋯⋯! こちらは防御力の高さとなる『身体硬度』がレベル1ですでに100を超えている⋯⋯」

「おお! この方も固有スキルにステータス成長率補正の『女神の加護』がついていますぞ!」

「お、おい! レベル1で固有魔法に『幾千もの拳サウザンド・ナックル』がすでに備わっているぞ! 信じられんっ!」


 どうやら、シャルロットよりもお偉いさんのほうが吾妻のスペックにかなり衝撃を受けているようだ。


 そして、次に向かったのが、


「え? え? この方⋯⋯称号が『大魔道士』!」

「だ、『大魔道士』! 単一魔法、広範囲魔法、どちらも高出力の⋯⋯あの『大魔道士』じゃと!」


 そんなシャルロットにもじーさんたちにもけっこう驚かれた『大魔道士』の称号を獲得していたのは⋯⋯⋯⋯オタクの吉村稔だった。

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