第22話 大地と雪の挟み焼き



「織風は買い物上手です

厚揚げが半額になっていたので大量に買ってきますた

なので、と言うことでぇ

今まで似非えせ料理人がこぞって出て来ますたので

今回は間違いのないように日本料理の達人をお迎えいたしますた

では、先生、よろしくお願いします」


分かりますた

・・・・・・・・。

ではなくて

分かりました。


では先ず

厚揚げを適当に切って

更に厚揚げに切れ目を入れましょう。


「先生、大体の大きさは?」


そうですね一口大くらいで良いでしょう

で次ですが

お肉を焼きましょう

ただし、もう一度焼きますので軽く火を通す程度にしておいてください

それで、鳥さん、豚さん、なんでも良いのですが

できれば国産のお肉を使いましょう。


「なるほど、国産を使うことで日本の酪農家を助けることにもなりますよね。一次産業のこともお考えになられる先生は素晴らしいと思います」


有難うございます

お高いですがお肉は美味しいですので

そして次に

野菜は冬らしく

大根なんかが良いですが

この時代ですから何でもありますね。


「そうですね、温室栽培などで季節に関係なく野菜が揃うのは有難いですよね。いやー本当にありがたい。うちの妻なんかも、そりゃーもう喜んでおります」


そうですか

焼いたお肉は厚揚げに挟んでもう一度火を通しましょう。


「おおー、これが二度焼きと言うことですね、ここで二度焼きが出て来るとは! 普通では考えられませんね、うちの家なんかは二度焼きって言うと前日の冷えたやつを温める時にしかしませんよ」


そうですか

二度焼きすると更に焦げ目もついて美味しいです。


「それに肉汁も染み込んで良い味になりますよね、これは煮込み料理ではない煮込み風の焼き料理ですよね」


そうですか

で次に

生野菜は厚揚げを焼いてから挟んでみましょう。


「そうか、野菜のシャキッとした食感を残そうと言うことですね、これは参った。絶対に美味しいですよ」


そうですか

もしも他の根菜類ならば

出汁をとったお醤油で煮込んでみましょう

それをそのまま焼いた厚揚げに挟みます。


「ほー、既にお味がついているから、そのままでも美味しい!と言うことですね、見上げたもんだよ屋根屋のふんどし。よっ先生! 恐れ入り屋の鬼子母神!」


・・・・・・・・。

全部揃ったら盛り付けです


「ここで盛り付けですか、盛り付けは和食の華、これぞまさしく和食の真髄やー。ほんと女房に教えたいです。もう盛り付け一つで子供たちが喜んで、あ、うちの子供たちのことなんですけどね」


・・・・・・・・。

お肉や生野菜を挟んだ厚揚げは

おろした生姜を乗せてポン酢が良いと思います。


「私、ポン酢が大好きなのですよ。やっぱり先生が作った板前ポン酢を使うのですか? もうよだれが止まりません!」


・・・・・・・・。

それでですね

煮込んだ根菜を挟んだ厚揚げは

お味がついているので

おろした生姜を乗せるだけで良いですよ


「やっぱりそう来ましたか! さすが先生、私の言った通りですね。いやー素晴らしい! 私が予想していた通りです」


へー、そうですか。


「そう!これぞ厚揚げの外の茶色と、中の白でぇーっと、大地と雪の挟み焼きじゃー! で良いでしょうか」


もう、なんでも良いです・・・。


「では皆様!どうぞー召し上がれー!」


私、帰ります。


「それと、やっぱり、飲み物は日本酒が良いでしょうか? やっぱり熱燗ですかね? ね、先生。おーい、先生! せんせーい!・・・。 以上、織風がお送りいたしますたー!」

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