第9話 復活の女神

 永遠に続くかと思われる長い階段を子ども達は登っていく。もうかれこれ途中休憩をはさんで二時間は登っただろうか、塔の壁にそって、時計回りで螺旋状に作られた階段は、今だ終わりを見せない。最初は意気揚々と登っていた新太達だったが、次第に疲れ果て、今は足取りも重い。それでもなんとか脱出しなければという気力だけで登っていた。

 新太は壁に手をつき、左側にある四角い窓からアンタカラの海を見る。海上にいるガーゴイル達はもはや砂粒のように見えた。海には足場が作られ、着実に町の再建が進んでいるように思われる。新太は歯を食いしばると、再び階段の先を見つめた。今だ先は見えないが、それでも着実に進んでいると自分に言い聞かせる。

 新太は乱れた息を整えながら、後ろを振り返る。自分のあとに続いている子ども達を見た。間隔こそ五、六段ずつ開いているが、皆ついてきてくれている。最年少の女の子も途中、喜一におぶわれて休んでいたが、今は自分の足で立って、登ってきてくれている。それはとてもありがたいことだと新太は思った。

 新太は立ち止まると、子ども達に向かって、

「よし、皆、休憩だ。いったん止まれ」

 その言葉に子ども達は脱力したようにその場に崩れ落ちる。ひとりだけまだ体力に余裕がある喜一が列の一番最後から跳ねるように上がってきた。

「アラタ、皆、体力消耗しているみたい。アラタは大丈夫?」

「おれは大丈夫だけど……」

 新太は腰を降ろし、一息つくと、皆の様子を眺めた。子ども達は階段に寝転がったり、壁に背をつけたりと、ぐったりと休んでいる。体力の限界が近いのだろう。

 新太は考えた。この先どのくらい階段が続くかわからない。さりとて、このままここに残しておくわけにもいかない。新太は長い休憩をとることにした。喜一と一緒に、しばらく休むと、前々から心配していたことを口にした。

「皆に相談したいんだけど、アヴィンサとあったらどうする? どうやってアンタカラから帰る?」

 子ども達はおのおの、うっすら汗をかいた顔を見合わせて、

「アヴィンサにおねがいする!」

「でも帰してくれるかな? なにか他の方法を探すとか?」

「ブチたおす!」

「まあ、それくらいだよな……」

 子ども達の意見に新太は考えこむ。自分でもそれくらいは考えた。だが、これといって今ひとつだ。

 新太は喜一を見て、

「喜一、お前はどう思う? どうすればいいと思う?」

 喜一は軽く頭をひねって、

「帰る! ジンもアースラさんも解放して、皆で一緒に帰る!」

「よし! そうしようって……だから、どうやって帰るんだよ」

「わかんない。でも、大丈夫だよ。ぼくにはこれがあるから!」

 そう言うと、喜一は洋服をめくりあげ、腹から木製のトップスターを取りだした。ふたりがアンタカラの海に飲みこまれた時、夢で見たものだ。

 新太は驚き、

「これ、まだ、あったのか」

「もちろん! 爆発したのは夢だよ、アラタ」

「そっか、そうだよな」

 新太は喜一が掲げるトップスターをまじまじと見た。先端部分の金色がはがれかけているが、土台となる板の部分はまだまだ強固だ。新太は嬉しくなった。これがなかったら、今頃自分たちはどうなっていただろうか。夢に飲みこまれたままかもしれない。

 新太は考え深げに、

「これには世話になったな」

「うん! みんなを守ってもらった」

「これがあれば、大丈夫か」

「うん! 絶対大丈夫!」

「そうか、よし!」

 新太は立ち上がると、子ども達に向け、

「皆、聞いてくれ。約束してほしいことがある」

 子ども達は一斉に新太を見た。新太は不敵に笑った。

「奇跡の町アンタカラの本当の奇跡を、おれたちで起こそうぜ」



 休憩を終え、十五分ほど階段を登ると、ようやく階段デッキが見えてきた。子ども達は喜んで階段を駆けあがる。目の前に木製の古めかしい扉が現れた。いよいよラストの、アヴィンサがいる部屋の扉だ。子ども達は扉の前に並ぶと、緊張したような不安なような覚悟を決めた眼差しで、互いに見合った。新太も喜一と目配せをする。何があっても動じない。受け入れる。あきらめない。そんな覚悟を決めた顔つきで頷き合う。

 新太が扉の前に立ち、ドアノブを握った。子ども達に向け、

「いいか、一、二の三で開けるからな。三で皆で踏みこむんだ」

 子ども達は強い意思をこめた眼差しで静かに頷いた。

「いくぞ、一、二の三!」

 新太は勢いよく扉を開く。天井が高く広い部屋だ。全てが真っ白で、壁一面を占める巨大なモニターが目に飛びこんでくる。モニターはそれぞれ部屋の真ん中、左右にあり、アンタカラの青い海を映しだしている。そのモニターの正面に椅子に座ったアヴィンサの後姿があった。

 アヴィンサはクルリと椅子を回転させると、子ども達に向き直り、

「これはこれは、皆さん。アンタカラの海を越えて、私の執務室へようこそおいでくださいました。何用ですかな?」

「何用じゃねえよ。おれたちを帰せ。おれたちを元の世界に帰してほしい」

 アヴィンサは上機嫌に、

「んっんー、それはできません。あなたたちはアンタカラの海を越えたとはいえ、すでにアンタカラの一部。つまり、この私の一部であるということ。お帰しすることはできません」

「そうですか……って、引けねぇんだよ」

 喜一が一歩前に出て、

「皆を帰して! アースラさんを解放して! ジンを帰して!」

「アースラ? ああ、彼女に会ったのですか。それは僥倖。それに、仁君ですか? 仁君なら、そこにいますよ」

「え?」

 新太と子ども達は部屋の中をきょろきょろと見回した。すると、リンッという小さな音をたてて、小さな黒い何かが足元を通りすぎる。それはアヴィンサの足元に行くと、くわえていたボールでじゃれだした。黒い子犬だ。鈴つきの赤い首輪をした子犬がボールで遊んでいるのだ。

「ウソだろ……」

 新太は信じられない気持ちでつぶやいた。人間が犬になるなんてことあるのだろうか。いや、この世界ならなんでもあるのか。

 戸惑い、状況が飲みこめない新太を差し置いて、喜一が、

「ジンどこ! どこにもいないじゃない!」

「……喜一」

「ジンどこなの? 返してよ!」

「……喜一君は、困った子ですね」

 アヴィンサはやれやれといったように肩をすくめると、足元で遊ぶ黒い子犬を抱きかかえた。

「これが仁君ですよ……とはいきませんね」

 アヴィンサはバサッとマントをひるがえした。子犬が消えると同時に、マントの中から仁が現れその場に倒れる。意識がないのか、ピクリとも動かない。

「仁!」

「ジン!」

「困った子ども達です。私は子どもの頼みごとに弱いのですよ。人の弱みにつけこんで、まったくしょうがない子達ですねえ」

「しょうがないのはどっちだよ。子どもの弱みにつけこんで、アンタカラに誘いやがって。おれたちを解放しろ。仁を解放しろ」

「そうだよ。ジンを返して!」

「やれやれ、こうやって仁君の無事を確認させてあげたのに、まだ、それ以上を望みますか。困りものですね。そんなあなたたちには、罰を与えましょう」

 アヴィンサは両手を広げた。モニターいっぱいにせりあがってくる波が映る。いや、違うと新太は感じた。壁際から風を感じる。海の音もさっきよりうるさい。前までは確かにモニターだった。だが、今は吹き抜けの穴が空いているのだ。

高波だ!と新太は思った。こんな地上五百メートルの高さまで、高波が襲ってこようとしているのだ。

 アヴィンサは高らかに、

「さあ、再び、アンタカラの海に帰るのです! 他の子ども達も皆、あなた方が来るのを待っていますよ」

 新太が目を向ければ、高波から無数の小さな白い手が生えている。子どもの手だ。アンタカラに飲みこまれた幾千万の子ども達が、新太達を捕まえようと手を伸ばしているのだ。

「うげっ、なんだあれ?」

「いや!」

 あまりの光景に子ども達は体を畏縮させる。次の瞬間、ドッという轟音とともに、部屋に高波が侵入する。あっと思う間もなく、波が押し寄せ、新太は壁に押しつけられる。横を見れば、他の子ども達も同様だ。みな、流されないようにか、ただただ、水圧で動けないのか、壁に張りついていた。その間にも、水がどんどん部屋に侵入し、満ち始める。あっという間に、新太の胸の高さまでになった。

「皆、無事か? こらえてくれ!」

 おうともうんともつかない返事がかすかに聞こえたが、波音に紛れて、すぐにかき消える。新太の右隣では喜一が必死に腹ばいになり壁にへばりついていた。

「アラタ!」

「喜一!」

 新太と手を繋ごうと、喜一が必死に右手を伸ばしてくる。新太はそれに応えようと、動ける範囲で、じりじりと右腕を伸ばした。

 ドッと後ろから轟音が聞こえた。左側の壁に空いた穴から高波が侵入したのだ。

「きゃあっ」

「わっ!」

「お前ら!」

 新太が振り向けば、音もなく子ども達が波にのまれ、部屋の出入り口へ吸いこまれる。

「ま――っ」

 待てと叫ぼうにも、波は容赦なく新太の元へも襲ってくる。顔までせりあがってくる波に新太はうまく呼吸できない。足を滑らせ、頭までどぷんっと海面に沈んだ。

「アラタ!」

 波の下は流れがゆるやかだった。新太は呼吸を止めると、扉口から吸いこまれないように、めいっぱい手足を動かしながら、海面に向かって泳いでいく。途中、喜一が気づき、腕をつかんで引っ張りあげた。

 新太はプハアッと大きく呼吸をする。そのまま肩で息をし、荒い呼吸を整えた。

「あ、あいつらが流された。助けに行かねぇと……」

「ダメだよ、アラタ! 今はムリだよ」

「でも……」

「アラタが辛いの、ぼく、わかるよ。ぼくだって、同じ気持ちだよ。でも、今はダメなの。皆を信じて、前を見ていないとだめ。だって、僕たちの前には……」

 そう言って、喜一は前方をにらんだ。前方には空中に浮かび、優雅に紅茶を飲んでいるアヴィンサがいる。

「倒すべき敵がいるから!」

「これはこれは、喜一君。敵とは私のことですかな?」

 アヴィンサはティーカップをソーサーに置くと、喜一を見た。喜一は強い眼差しで、

「そうだよ、アヴィンサ。僕たちを帰して! ジンを返して! アースラさんを解放して!」

「んっんー、実に心外です。私ほど子ども達のために、身も心も粉にして努めている者はないのですよ。心外。実に心外です」

 アヴィンサは苦悩するように、頭とあごに手を置いた。

「よろしい。仁君をお返ししましょう」

 アヴィンサは人差し指をくいっと上に曲げると、波の中から仁が浮かび上がってくる。

「死んではいませんよ。この私が、子どもを殺すわけがない」

 仁は空中を浮きながら、新太達の前に来ると、海面に落ちた。新太はあわてて抱きかかえる。

「仁! おい、仁!」

「ジンジン、目を覚まして!」

 新太が頬を叩くと、仁はうっすらと目を開いた。

「う……ん? 加納?」

「仁!」

「ジン!」

「ここは……? オレ、どうなって……?」

「大丈夫だ、仁」

「ジン、よかった!」

「ほら、こうして仁君はあなた達にお返ししました。私はあなた方の敵ではありませんよ」

 喜一はアヴィンサをにらみつけ、

「ちがうちがうちがう! そうじゃないでしょ。アヴィンサ、やることが根底から間違っているの!」

「間違っている?」

「そう! ぼくたちを、子どもを全然信用してない。信じてない」

「ほう?」

「ぼくたち子どもはね、大丈夫なの。何があっても、大丈夫なの! だから、そこから出発してほしいの」

「……そうですか、とは言い難いですね」

 アヴィンサはあごに手を置いて考え始める。

「私は今まで何回もの悲劇を、憎悪を苦悩を見てきました。その度にあなた方は傷つき、怒り、憎しみ、悲しんできました。絶望に打ちひしがれて自害しようとする者もいました。私がいくら手を差し伸べても救いきれない。だから、私は……っ」

 アヴィンサは手で仮面を覆った。次の瞬間、仮面が半分赤で半分黒色の怒りと笑みが入り混じった表情に変わる。

「この世に悲劇のない世界を作り上げようと思ったのです。嘆きも憎しみも絶望もいらない。誰かをしいたげることもしいたげられることもない。なんでも思うがまま、誰もが幸福で公平な世界。そういうものを作ろうと思ったのです。せめて、自分の手が届く範囲の者は全て救おうと、救いあげようと思ったのです。だから、私はアンタカラを作った!」

「ちが、それはちがうよ! アヴィンサ!」

「なにが違うというのです。あなた達は大切な子ども。永遠に閉じこめて、誰も傷つかないようにしなければいけないのです! この私が守らなければいけないのです!」

「アヴィンサ!」

 アヴィンサは両手で顔を覆うと、腰を屈めた。と同時に、アヴィンサのマントがじわじわと伸びていく。新太はそれを何事かと思い、凝視する。

 じわじわと伸びたマントは倍の長さになると、波に浸った。そこから黒いインクのようなものが流れ出てくる。黒いインクは徐々に広がり、波を黒く染めあげる。新太は危機感を覚えた。

「お、おい。なんか、ヤベえな。喜一」

「うん。ヤバそうだね!」

「ヤバそうって、なんとかしろよ、喜一」

「うん! ぼくにはムリ!」

 がっくりとうなだれる新太をよそに、黒い波は広がっていく。黒いインクが白い壁を伝い、今度は天井に向かって侵食し始めたのを見て、新太はぞっとした。これは、本当にマズいかもしれない。

「お、おい、喜一、逃げるぞ!」

「え? なんで? ダメだよ、アラタ」

「バカ、そんなこといってる場合じゃねぇだろ!」

 新太は喜一と、まだ起きたてでぼんやりしている仁の腕を引っ張ると、強引に出入口に向かって泳ごうとした。その時、

 アヴィンサが上体を起こした。顔には真っ黒な仮面が乗っている。表情など何も描かれていない。ただただ、闇夜のごとく真っ黒なのっぺりとした仮面をつけている。新太は戦慄した。

「ヤバい、マジでヤバい!」

 二人を引き連れてあわてて扉に向かおうとする新太をよそに、アヴィンサは両手をさっと広げた。

 とたんに、辺りが一瞬で真っ暗になった。部屋を満たしていた波が消え、新太は床に落ち、その場に倒れた。

「な、なんだ?」

 手の表面からは冷たい床の感触が伝わる。今まで張りついていた壁に手を伸ばすと、宙をかいた。壁がなくなっているのだ。

「喜一? 仁?」

 後ろを振り返ると、今までいたはずの二人の気配がない。新太は戸惑い慌てた。

「お、おいっ、喜一! 仁! 冗談きついぜ」

 新太は手探りしながら、二人を呼んだが返事はなかった。倒れているかもと思い、床を探ったがなんの感触もない。新太は呆然とたたずんだ。

「喜一! 仁! 皆!」

 大声で呼んだが、声が反響することもなく、ただただ、空間に吸いこまれていく。新太は自分が途方もなく広い空間にいるのだとわかった。新太はその場に胡坐をかく。

「マジで……どうするかな……」

 新太はとりあえず状況を整理することにした。アヴィンサの起こした高波で、子ども達が波にさらわれた。子ども達は助けに行かないといけない。そして、仁が返ってきた。だが、喜一もろとも三人、暗闇に飲みこまれた。そして、二人はいない。

「やっぱ……そうだよな」

 新太は立ち上がると、二人を探すことにした。どうやらアヴィンサが直接危害を加えることはなさそうだ。暗闇の中動き回っても、ケガをするようなことはないだろう。

 新太はとりあえず、真っ直ぐ進むことにした。壁に行き当たればしめたものだ。この場所を知る目安になるだろう。波に飲みこまれた子ども達にも会えるかもしれない。

 新太は恐る恐る一歩踏み出すと、数歩進み、しだいにいつもの調子で歩きだした。どうやらただただ広い平面にいるようだ。

 新太は歌を歌うことにした。普段は歌なんて、一つも歌わない。だが、この暗闇の中で、ひとりは心もとない。それに、ここでは誰も聞いていないだろう。新太は流行歌から学校で習った童謡まで思いついたものを片っ端から歌っていく。もし、誰かが聞きつけて駆けつけてくれたら幸いだ。それに時間の把握にもなる。

新太は五、六曲ほど歌った。しだいにレパートリーもつき、声も乾燥して枯れてくる。

「ひとりリサイタルご清聴ありがとうございます……って、誰も聞いてないけどな」

 水が欲しいと内心思う。だが、この暗闇の中、それは無理な話だ。

 どこまでも続く暗闇に新太はしだいに焦りと不安がでてくる。大声で叫んでみた。だが、返答どころか物音ひとつしない。

 新太はふと昔読んだネットの記事を思いだした。なんでも人間は真っ暗闇の中では三日ともたらないらしい。しだいに幻聴や幻覚を見始めるのだとか。

 新太は内心、焦った。不安から逃れようと、走りだそうとした時だ。どこからともなく女性の美しい歌声が聞こえた。新太は誘われるように歌声が聞こえる方向に歩きだす。しばらく行くと、前方に光るものが見えた。車座になっている人々が見える。どうやらあそこから聞こえるらしい。

 新太はもう少し近づくことにした。正直、アヴィンサの罠か、アンタカラの住人かとも思う。だが、このままここにいるよりはましだ。ここから出られる情報が手に入るかもしれない。

 新太は人々の声と顔がなんとなくわかる位置まで近づくと、腰を落として、聞き耳を立てた。様子をうかがう。

 女性がひとり後ろを向いて立っている。金色の長い髪をした女性だ。その女性を囲むように子ども達が座っている。人々は一枚の白い布に腰ひもをして、それをドレスのようにして着ていた。

 女性が指揮をとるように、子ども達に指を伸ばし、

「うん。いいね。じゃあ、今度はなに歌う?」

「おれ、山の歌がいい!」

「え? 狩人に捧げる賛歌がいいよ!」

「牧場の歌!」

「うん! じゃあ、牧場の歌にしようか。みんな、準備はいい?」

 子ども達が一斉に手を挙げる。最初に女性が歌いだした。

「羊はなんとなく? メエ、メエ、メエ」

 メエと鳴く部分を女性が腰を曲げて本物そっくりに真似しだした。子ども達は爆笑する。女性と同じように腰を曲げて真似する子どももでてきた。それを見て、楽しそうに踊りだす子、ぴょんぴょんと飛び跳ねる子、女性と一緒に大声で歌う子など、皆、楽しそうだ。歌が終わる頃には、宴のような賑わいになった。

「……」

 これはなにが起こっているのだろうかと新太は考える。なぜ、この人たちはここにいるのか?

 考えこむ新太をよそに、女性が、

「さあ、みんな、ご飯になるよ。帰ろう!」

「わあ、ごはんだ!」

「ハラへったー!」

「さあさあ、行こう行こう!」

 子ども達を促して、女性はその場を立ち去ろうとする。

「ちょっ、まっ」

 新太は慌てて立ちあがろうとした。すると、女性と子ども達は陽炎のごとく消えてしまう。

「なっ……」

 新太は少し考え、これは映像か幻のようなものと理解した。アンタカラの海に沈んだ時のように、アヴィンサによって誰かの記憶か夢を見せられているのかもしれない。このままここに残ってもいいが、新太はもう少し先へ進んでみることにした。

 しばらくすると、再び前方に光が灯った。新太はゆっくり歩きながら進む。今度は思い切って、もっと近づいてみることにした。

 室内が見えた。五、六メートルほどの光の輪の中に、石造りの質素な部屋が映しだされている。木製のベッドには子どもが寝ており、そのかたわらに先ほどの金髪の女性が椅子に座っている。子どもの手を握りしめ、気づかわしげに見つめていた。

 新太は二メートルほど手前まで来ると、立ち止まった。念のため声をかけてみるが、女性と子どもに反応はない。やはりこれは映像か幻のようだ。新太は安心して、傍観者を決めこんだ。ことの成り行きを見つめる。

 女性はわざと顔に笑顔をつくり、

「ぼくが来たから、もう大丈夫。すぐに良くなるよ」

「ア××××様。きてくれて……うれしい」

 子どもがうつろな顔で女性を見つめる。不思議なことに女性の名前だけ雑音が入り、新太にはよく聞き取れなかった。子どもは青白く痩せこけており、新太から見ていても気持ちがざわざわした。もしかしたらもう長くは生きられないのかもしれない。

 女性は努めて明るく、

「また一緒に歌を歌おう。ぼく一曲披露するよ。何がいい?」

「まき……ばの……うた」

「うん! じゃあ、歌うね」

 女性は立ち上がると、その場で元気よく歌い始めた。それを見て、子どもはにこっと口元だけ微笑んだ。

 女性は目に涙を浮かべながら、歌い続ける。もう聞いてくれる子どもは動かなくなっていたが、女性はそのまま歌い続けた。まるで、歌い終わるまでがその子の命の時間だとでもいうように。歌を変え、声を変え、何度でも、誰かが止めに入るまでは永遠に……。

「……」

 新太は見ていて胸が苦しくなった。いたたまれなくて、その場を離れる。女性の歌声が後を追いかける。新太は耳を塞いだ。痛々しくて足早にその場を遠く離れた。

「ハアッ……」

 早く歩いたせいだろう、息が上がった。呼吸が苦しい。新太は立ち止まり、少し休むことにした。まさか、ああいった映像があるとは。今度は見る時、気をつけなければいけない。

 新太は呼吸が整うと、歩きだそうとした。すると、左手前方に光が見える。新太は懸念した。だが、他に手立てがない以上、行くしかない。

 新太が近づくと、大人の男女が立っているのが見えた。どうやら今度は悲しい映像ではなさそうだ。新太は胸をひとなでして、映像に接近した。

 女性は先ほどの金髪の女性だ。男性はやはり同じような金髪で、上半身裸の、腰に布を一枚巻いている。筋骨隆々な男性だ。

 男性は険しい顔で女性に向かって、

「だから、何度でも言っているだろう。ア××××! この地の者に肩入れすべきではないと。お前は、情が深すぎる。いずれそれが足かせになり、我らが天(こきょう)に戻れなくなるぞ」

「だって、そうはいってもさ、この地上の人間たちって可愛いんだもん。ぼく、ほっとけないよ」

「ア××××……」

「それに子どもって、本当に面白いんだ。クルクル表情が変わるし、無邪気だし、純粋だし。ぼくね、子どもって、大好き! もっとみんなを幸せにしたいんだよ」

「ア××××……、その思いはいずれお前を過酷な道へと歩ませることになるぞ」

「うん! ぼくはね、別にそれでもかまわない。ぼくの願いはこの地の人々を幸せにすることだから。笑顔でいっぱいにするんだ。そのためだったら、ぼくはどうなったってかまわない」

「……お前は、なんと嘆かわしい。お前を連れてきたのは、失敗だった」

「そう? ぼくはありがとうしかないけど」

 にこりと微笑む女性に、男性は恨みがましい視線を向ける。男性は気を取り直したように、平静な表情をつくった。地図を広げて話しだす。

「では、入植計画第三段階の話だが……」

 そこでフツと映像が途切れた。光が消えて、辺りに暗闇が広がる。

「……」

 新太は考えた。先ほどの映像は彼らが他の国、もしくは他の場所から来た移民者だということだろう。それが何を意味しているのか。

「……わかんねえ」

答えがでなかった新太は先を行くことにした。

 少し行くと、またも前方に光が見えた。新太はゆっくりと近づく。

 遠目に見て、破壊された石造りの町が見えた。空が赤く染まり、あちらこちらから煙と炎が上がっている。新太はとまどう。これはきっと精神的にダメージを与える映像だ。だが、映像を見せる目的と意図がわからない今、見て謎を解き明かすしかない。

 新太はさらに近づいた。映像から二メートルほど離れて事の成り行きを見守る。

 先ほどの女性が胸に赤ん坊を抱き、数人の子ども達を引き連れて逃げている。

 女性は後ろを走る子ども達を振り返ると、壊れた壁から見える丘を指さした。

「皆、あの丘まで逃げたら安全だから、それまでがんばろう!」

 子ども達は各々返事をする。足もとを見れば、皮のサンダルをはいている子、裸足の子、様々だ。きっと慌てて逃げてきたのだろう。女性も裸足のままだった。

 女性は赤ん坊を抱きなおすと、

「大丈夫。絶対ぼくがお母さんに会わせてあげるからね」

 そう優しくいい、強い眼差しで前を向く。

「さあ、行こう!」

 突然、目の前の地面に矢が刺さった。女性は思わず立ち止まる。見れば、前方の建物の影から腰布を巻き、皮製のマントと帽子をかぶった兵士の一団が現れた。

「皆、ぼくの後ろに隠れて」

 女性はかばうように子ども達の前に立つと、赤ん坊を後ろの子どもにたくした。

「ぼくたちは無害だ。見ての通り、女、子どもしかいない。通してよ」

「いいえ。それはできません」

 兵士の一団の奥から銅製の兜をかぶった男が現れた。どうやらこの一団の隊長のようだ。隊長は腰に刺した剣の柄に手をかけながら、

「その髪の色、女神ア××××様と見受けられる。ご同行願いたい」

「なぜ? なぜぼくがそうしなきゃならないの?」

「未だ人の世に留まる唯一の神だ。他のご同胞はみな、天(そら)に帰られたというのに。貴重な神だ。我が国に迎え入れて、守護神としたい」

「いやだって言ったら?」

「あなたに選択の余地はないはずだ」

 隊長が手を挙げると、兵士の一団は子ども達を取り囲むように広がり、矢を向けた。

「っ」

「子ども達を犠牲にしてもいいのですか?」

「わかった……同行するよ。ただし、子ども達には手をださないで」

「かしこまりました」

 女神は後ろにいる子ども達を振り返ると、にっこりとほほ笑んだ。

「皆、ここでお別れだ。でも、心配しないで。きっとまた会えるから。それまで、なんとか生き延びて。元気で。君たちに祝福を贈るよ」

「ア××××様!」

「行かないで!」

 困惑し、泣きじゃくる子ども達をひとりひとり抱きしめて、女性はお別れを言った。最後に一番年長の利発そうな少年に声をかける。

「今から君が子ども達をひっぱっていくんだ。あの丘を越えて海に出るんだ。そうしたら町がある。そこまで、頑張るんだよ」

 少年は力強く頷くと、女性はわずかに微笑み、そっと列を離れた。兵士の一団へ向かう。

「ご英断を。我々はあなたを快く迎え入れましょう。丁重に」

 女性は隊長をひとにらみすると、そのまま大人しく両腕と首、そして両足に枷を取りつけられた。

「殺せ。この町の者は皆殺しだ」

「!」

 女性は駆けだそうとしたが、足かせによってその場に倒れた。子ども達に矢の雨が降り注ぐ。女性は声にならない叫びをあげ、ただ、その場にうずくまった。

「……」

 新太はそっとその場を離れた。あまりにも辛すぎる。正直もう見たくはない。しばらく歩くと、前方に光が見えた。また、あの映像なのかと思うと足取りが重くなる。素通りしようかとも思った。歩く向きを変えかけて、やはり、見なければだめだと思う。今の問題は女性の悲劇ではない。自分の脱出なのだと。なにかしら情報をつかまなければだめなのだと。

 新太は光に近づいた。そうしながら、新太は女性と子供にまつわる様々な苦悩と悲劇を見た。

 国の守護神となった女性は幼いひとりの王子を愛した。だが、王子は成長すると権力闘争の果てに自害した。また、ある時は、旅人だった。山間の村に住み着くと、そこで子ども達に智慧を教えた。だが、土石流が起こり、全て飲みこまれた。

 女性の元には何度も何度も悲劇が訪れる。その度ごとに女性は打ち砕かれ、痛みに囚われ、そうして、子ども達に救われた。そして、女性は徐々にこの地上の理(ことわり)に飲みこまれ、段々と年老いていった。

新太は気づいた。映像のたびに女性の服装が変わっているのは、文化がちがう、それはすなわち、女性がそれだけ長い時間を生きているということだと。どうやらこの女性はかなりの長命らしい。

ある時女性は森の中で暮らす隠者だった。目深い灰色のフードをかぶり、ふっくらした頬も今はやせ細り、豊かな金色の髪も白髪と化していた。目は落ちくぼんでいたが、その下にある眼差しはしっかりとしたものがあった。

 ある日、女性の住む簡素な小屋に少年が訪れた。少年は泣きそうな顔で傷ついた小鳥を女性に差し出した。鳥かごから出したら猫に襲われた。治してほしいと訴えながら。

 女性は傷の処置をすると、少年に薬を手渡した。

 少年はお礼を言って帰っていく。その後ろ姿を見て、女性はつぶやく。

「傷つけたくない大事なものはね……鳥かごに閉まっておくんだよ。ずっと、ずうっとね……」



 ある満月の夜だった。女性がテーブルに大きな羊皮紙を広げ、一心不乱に何かを書いている。数列のような記号のような新太が初めて見る図式だ。

 女性は顔をあげると、目を見開き、歓喜の声をあげた。羊皮紙を手に取ると、

「できた! ようやくできた! ぼくが手に入れたかったものが! あちらの世界の奇跡が! ようやくできた! ぼくは手に入れたんだ!」

 女性は後ろを振り向くと、戸棚から仮面を取りだした。微笑みを浮かべた何の変哲もない真っ白な仮面だ。

 女性は仮面を羊皮紙の上に置くと、なにかをつぶやいた。すると、仮面の表面に羊皮紙に書いた図式がスルスルと吸いこまれていく。やがてすべて吸いこむと、仮面は不思議な輝きを放った。

 女性はフードを取りはらうと、顔をあらわにした。仮面を両手に持つと、喜びとも狂気ともつかぬ顔で、

「ぼくは奇跡を起こす! 子ども達が誰も傷つかない世界を。不幸も悲劇も嘆きも争いもない世界を。それがぼくの願い、ぼくの希望だ!」

 女性は仮面をかかげる。

「ぼくはどうなったってかまわない。ぼくの心も体も全部あげる! だから、お願い。希望を叶えて! ぼくの願いを叶えて! アンタカラ! ぼくの故郷の町。永遠の理想郷。アンタカラをこの地上に再現して!」

 そして女性は仮面を被った。仮面は一瞬で黒に染まり、辺りは闇に包まれた。

「……」

 新太はその場を離れた。なにか大変なものを見てしまった気がする。まさか女性があいつだったなんて。

 情報を整理しきれない新太は頭を片手で押さえながら、フラフラと歩いていく。そうして、しばらく歩くと、新太は街灯の下、静かにたたずむアヴィンサに出会った。

       


「やあ、こんにちは。新太君。今宵はよい月夜ですね。あの日の、私が誕生した日の、満月を思い出させる」

 新太は警戒している様子で、

「アヴィンサ、あんたは……女神様だったのか」

「いいえ。違います。私は女神ではない。女神は依り代となり、変わりに私が誕生したのです。女神の希望を叶えるために」

「そうか……で、出してくれんの? くれないの? おれ、向こうの世界に帰りたいんだけど。そろそろ親父も心配だし」

 アヴィンサは通せんぼをするように両手を広げ、

「新太君。それはできません。誰もこの世界から帰らぬように、永遠の幸せを与えるのが女神の希望、女神の願い、それはできません」

「――めんどくせえな」

「は?」

「めんどくせえって、言ってんだよ! おれが、子どものおれが、幸も不幸も悲劇もある向こうの世界に帰りたいって言ってんだよ! 尊重して帰してくれよ!」

「……それはできません」

「おれは、向こうの世界に行ったら、希望だけ見て生きるんだ。失敗したり落ち込んだりすることもあるかもしれない。でも、どんな時でも、おれは、自分の心に従って生きる! 自分の希望にそって、真っ直ぐに生きる! それを、おれはこっちに来て、喜一から教わったんだ」

「……」

「こっちに来るとき、約束したよな。夢を、希望を叶える素晴らしさを教えてくれるって。おれは、こっちに来て、皆と遊んで願いを叶えて、願いを言う、叶うことの楽しさを思いだしたよ。向こうでは到底無理だって、言う前からあきらめていたんだから」

「新太君」

「だから、アヴィンサ、おれたちを信じてほしいんだ。おれたちは傷つき、へこたれることもあるかもしれない。でも、おれたちはそれでも前を向きながら歩くんだ。痛みを知った分、強くなるんだ。そうやって、希望に真っ直ぐに生きる。それが、子どもの特権だろ!」

「……そうなのかもしれませんね」

「なら!」

「ですが、傷つき、立ちあがれない時が来ても、前を向いて歩けると、どう保証するのですか? 到底乗り越えられそうにない高い壁に当たった時、くじけずに乗り越えると、誰が保証するのです? 現にあなたは、今、私と対峙し、喜一君も仁君もいない。あなたを慕う子ども達もいない。ここからでる手立てもない。この圧倒的不利な中で、あなたはどう希望を見出すというのです? 希望に生きるというのなら、私に希望を見せてください。今、私の目の前で奇跡を起こしてみせてください」

 新太は一瞬ためらった。これは確証はない。保証もない。けれど、たぶん、きっと、大丈夫。自分を信じて希望に真っ直ぐ生きるだけだって、知ったから。

 新太は腹に力をこめ、背筋を真っ直ぐに伸ばした。にんまりと笑う。

「だせぇな。そんなことでいいのかよ」

「……と、いいますと?」

「いいぜ、アヴィンサ。目ん玉見開いてよく見るんだな。このおれが奇跡を起こすところを」

 新太はアヴィンサに近づいた。すぐそばに立つと、

「なんもしねぇから、そのままじっとしていろよ」

「はて、なんでしょうか?」

 新太はそっとアヴィンサを抱きしめた。肌の上から上質なスーツ特有のハリのある感触が伝わる。新太はアヴィンサが何もしてこないのを確認すると、そのまま強く深く抱きしめた。この思いが女神に伝わるようにと願いをこめながら。

「なあ、女神様。あんたが傷ついてきたのはよくわかったよ。そりゃ、あんだけの悲劇だ。長い間、側で見てきたらたまらねぇよな。あんたが立てなくなるのもわかるよ」

 新太はさらに思う。女神の人生の上を通りすぎていった子ども達のことを。

「でも、思いだしてほしいんだ。あんたが関わった子ども達のことを。あんたは子ども達に起こったことを悲劇だ、かわいそうだって言って泣くけれど、本当にそうなのか? あんたと出会って過ごしたなかで、子ども達には悲劇しかなかったのか? 不幸しか起きなかったのか?」

 新太は首を横に振る。アヴィンサを見上げて、はっきりとした口調で、

「おれはそうは思わない。あんたと出会って、過ごして、子ども達はきっと楽しいことだってたくさんあったはずだから。あんたはさ、嘆きや悲しみに目を奪われて、不幸しか数えられないようになっているけど、そういうさ、幸福とか喜び、楽しさ、嬉しさ、そういうことにも目を向けて欲しんだ。だって、たぶん、喜びも悲しみも同じくらい起こることだと思うから。悲しみを数えるより、喜びを数えた方が人生、きっと楽しいだろ。あんたもさ、そうやって生きてみちゃくれないか?」

「新太君……」

「それにさ、おれは思うんだ。あんたの歌を聞きながら死んだ子も、矢に射抜かれて死んだ子も、全然、不幸じゃないって。だって、そばにあんたが、大好きなあんたがそばにいいたから。おれだったら、自分の身の上に起こる悲劇を嘆くより、あんたの、好きな人の、大切な人の幸福を願って死ぬ。人間ってそういう存在(もの)なんじゃねえのかな?」

「……いやはや」

「だからさ、おれはあんたに言いたい。この地球上に不幸な人間はいないんだって。もしあるとしたら、それは自分の頭の中だけなんだ。だから、あんたもさ、その頭の中、変えてみちゃくれねえか? 俺と一緒にさ、前を向いて生きてみちゃくれねぇか?」

「……」

 新太は少し離れると、アヴィンサを真っ直ぐに見つめた。右手を差しだす。

「俺と一緒にさ、希望を見て生きようぜ。女神様」

「……新太君。あなたはなんと愚かな。もう女神などいないというのに」

 それでも新太は揺るがない。ただ、真っ直ぐ、迷いなしに手をさし伸ばす。

「……愚かな。本当に、愚かです。子どもというのは、なんと、こんなにも愚かで、こんなにも純粋で悲しくて、こんなにも――」

 アヴィンサはふらふらと後ずさる。そうして、新太は見た。立ち止まったアヴィンサから仮面が外れる瞬間を。仮面の下の女神の年老いた素顔を。

 白髪の女性は泣き笑いのような顔をして、

「――大好きだ」

「女神様……」

 新太は息を飲んだ。映像ではずっと見てきたけれど、実物は初めてだ。それに、まさか本当に仮面が外れて、その下から女神が現れるなんて、予感はしていたが、思ってもみなかった新太だ。

 女神は仮面を拾うと、両腕を上にあげて思いっきり背伸びをした。

「んー、久しぶりに外にでたなぁ。ところで、君、なんでぼくがいるってわかったの?」

「別に確証があったわけじゃねぇよ。ただ、喜一が、希望は皆で叶えるものだっていうから、その場におれの希望を叶えてくれそうなのはあんただけだったって話」

「そっか。君は命を信じているんだね」

「は?」

 女神は横を向くと、

「じゃあ、ぼくはきみの願いを叶える手助けをしないとね」

 そう言うと、暗闇のなか、腕を縦に振り下ろす。暗闇が切り裂かれたように、一筋の光の線ができた。

「さあ、行こう。準備は整ったよ」

「え?」

 状況を理解できない新太を気にもかけず、女神は光の筋の間に両手をかけた。カーテンを開けるように、そのまま勢いよく闇を破いた。

「!」

 闇が切り裂け、光があふれだす。新太はまぶしさに目を細めた。すべてが光に包まれる。

「アラタ!」

 聞き覚えのある声で名前を呼ばれて、新太はうっすらと瞼を開けた。喜一だ。光があふれる空間に、喜一が嬉しそうな顔で立っている。

「喜一」

 喜一は新太に駆け寄ると、そのまま勢いよく抱きしめた。

「うわっ、や、やめろって。喜一」

「アラタ、会えてよかった。アラタ!」

「アラタくん! 会いたかったよお」

「新太さん、無事でよかった」

「新太くん!」

「お前たち……」

 喜一の後ろからぞくぞくと波にさらわれた子ども達が現れる。みな、ケガひとつない、元気そうな姿だ。

 新太は喜一の腕の中から離れると、

「無事だったのか! よかった」

「アースラさんの船がね、助けてくれたんだよ。波にさらわれた時、びゅんって飛んできてくれたんだ!」

「うん! 船、おりこうさん」

「いやー、助かった。助かった」

「そうか。よかった。あとでアースラさんにお礼を言わないとな」

「うん!」

子ども達は口をそろえて頷いた。

 そして、新太は気づいた。子ども達のさらに後ろに、ひとりぽつんと所在なく立っている仁の姿を。

「仁……」

 新太は仁に駆け寄った。仁はなんともいえない微妙な顔で、

「加納……」

「大丈夫か? 体、なんともないか」

「あ、ああ……その、迷惑かけたな」

 どうやら仁は眠っている間のことを喜一から聞いたようだ。いつもとはちょっとちがう神妙な姿に、新太は笑って、

「んな、らしくねぇな、仁。気にすんなよ」

「加納……ありがとうな」

「おう」

 新太は握りこぶしを作って仁の前にかかげた。仁も同じように握りこぶしをつくって、かかげる。ふたり、げんこつをくっつき合わせ、顔を見合って笑った。

「はいはーい。じゃあ、みんな、そろそろ帰るよ」

 女神が仕切るように手を挙げた。

「誰? あの人」

「仁、わかんねぇのか? お前をずうっとマントに入れて大事に隠し持っていた人だぜ」

「……まさか、アヴィンサか?」

「アヴィンサだった人」

 新太は笑うと、女神に近づいた。女神を見上げ、

「なあ、あんた、名前なんていうんだ? やっぱりアヴィンサか?」

「ぼく、ぼくはね、アンダルファ。こっちの世界ではアプロディーテーって呼ばれることもあったよ」

「へー。なんかどっかで聞いたことあるような名前だな」

「そう? ありがとう」

 女神はにっこりとほほ笑むと、何もない空間に指で、人がひとり入れるくらいの大きさの長方形を描く真似をした。すると不思議なことに女神が描き始めたそばから虹色の線が浮かび上がる。やがて描きあがると、それは虹色の輪郭を持つ扉になった。女神は扉のドアノブを回す。

「さあ、入って。いったん、元の場所に戻るよ。外の世界に帰るにはアヴィンサの執務室からじゃないとダメなんだ」

 女神は扉を開けた。そこには元いた部屋、アヴィンサの執務室が見える。新太は子ども達を振り返り、

「よし、じゃあ、行くぞ。お前ら。帰る段階の一歩手前だ!」

「おー!」

と子ども達はそれぞれ返事をする。

 新太たちは扉に向かって一歩踏みだした。



 新太と子ども達は執務室に戻ってきた。執務室に一歩踏み入れて、新太は辺りを見回す。真っ白い天井、真っ白い壁、巨大なモニターとスツールのイスがあるくらいで、来る前と変わりはない。新太は久しぶりに訪れたかのような懐かしさを感じた。

 子ども達と女神が全員部屋に入ると、扉は自動的に消えた。女神は子ども達の前に進み出て、

「はーい、じゃあ、今から帰る方法説明するね。その前に……」

 女神は指を鳴らして、一瞬で衣装を変える。アヴィンサの着ていたタキシード姿から、白いローブを着た姿になった。

「うん。やっぱりこれくらい余裕がなくっちゃね」

 どうやら女神は絞めつけのある服は苦手らしい。その場でくるくると回った。

「うん、じゃあ、改めて、アンタカラから向こうの世界に帰るには、簡単! このモニターから出ればいいんだよ」

 そう言って、女神は壁の正面にある巨大なモニターを指さした。

「は? モニターだぞ」

「うん。だからぼくがモニターと向こうの世界をつなぐ道を作るよ。アヴィンサもよくこのモニターからあちらとこちらを行き来していたんだ」

「そっか。アヴィンサが……」

 新太は少し考え、

「なあ、アヴィンサはどうなったんだ? その仮面をつけるとまた、復活するのか?」

 新太は女神が持っている白い仮面を指さした。

 女神は首を横に振り、

「アヴィンサは停止中だよ。アヴィンサはシステムなんだ。ぼく――開発者の同意がない限りは起動しない。ぼくがそういうふうに設定したからね。だから、ぼくが起動させない限りは、復活はしないよ」

「そっか……」

「うん。それにぼくはもう二度とアヴィンサを起動させない。ぼくがやってきたことは自分のわがままだったって、気づいたからね」

 女神は天井を見上げた。自分の過去を振り返るように、

「ぼくはただ、自分の周りに起こることが悲しくて、子ども達に降り注ぐ不幸が悲しくて、なんとかしたいと外側の世界を変えようとそればかりしてきた。けれど、ぼくが本当に一番先にやるべきだったのは、自分の心を変えることだったんだね。自分を変える。自分の感情を受け入れて、そこからどうしたいかを決める。まずはそこからだったんだ」

「女神様……」

「そこに君は、気づかせてくれた。お礼をいうよ。ありがとう」

 女神はにっこりと優しく微笑んだ。新太はわずかに照れてそっぽを向く。

「どういたしまして。別にお礼を言われるようなことはしてねぇよ。それに……」

 新太は背伸びをすると、隣に立つ喜一の肩をぐいっと抱き寄せた。

「お礼を言うならこいつにもだ。こいつがいなかったら、おれは希望ってなんなのか、わからなかった。もちろん、希望の叶え方も知らなかった。ありがとな、喜一」

「アラタ……」

「それに、皆もだ。皆がいなかったらおれは希望を叶える楽しさも、一緒に乗り越える喜びもわからなかった。皆、ありがとう」

「新太くん」

「いいってことよ!」

 女神は和気あいあいとしている子ども達を微笑みながら見つめた。そして、喜一に近づくと、その前で膝をついた。喜一の手を取って、

「喜一君、君はとても強いエネルギーを持っているね。君のなかにも被害者意識はある。けれど、君はいつだって、使わない選択をしてきたんだ。それはすごいことだよ。これからも希望に真っ直ぐに生きてほしいな」

「うん! 当たり前!」

 次いで、女神は子ども達の前でしゃがむ。子ども達に目線を合わせて、

「君たちも同じだ。強いエネルギーを持っている。これからも自分の心に正直に生きてね」

「はい!」

「おうともっ」

「うん。わかった!」

 最後に女神は仁の前にしゃがんだ。仁の手を取り、

「仁君。ぼく――アヴィンサが君にひどいことをしたね。心の底から謝るよ。ごめんなさい。でも、これだけは覚えていて欲しいんだ」

 そう言うと、女神は仁の瞳を真っ直ぐに見た。

「仁君。君は勇気ある人間だ。アヴィンサの脅しに屈しなかったね。子ども達のクリスマスツリーを壊さなかった。ぼくは知っている。壊したのはアヴィンサに操られたアンタカラの住人だって。だから、自分を誇りに持って。自分のイメージを変えて。君は制圧に屈しない人間なんだって。愛ある人間だ。他人の大事なものを守れる。心の強い人間だということを忘れないで欲しい」

 そう言うと、女神はにっこりと笑った。仁の頬がわずかに上気し、瞳に生気が満ち始める。

「そう……します」

「うん! いいね!」

「……ありがとうございます」

 仁は軽く頭を下げた。女神はそれを見てから立ち上がり、

「さあ、皆、そろそろ帰る時間だよ。忘れ物はないかい?」

 喜一が手を挙げて、

「女神様、アースラさんを出してあげて。ずっと小さな島に閉じこめられているの」

「うん! 彼女ならもう、大丈夫。ぼくの仮面が外れた時点で、島から出られるようになっているから」

「本当!?」

「本当だとも」

 突如、風が吹き荒れた。新太は思わず目を細める。風が治まり、そっと目を開けると、そこにはアースラが立っていた。

「アースラさん!」

「人の子らよ、よくぞ困難な道を乗り越えて、達成してくれた。このアースラ、心から礼をいうぞ」

 喜一がアースラに駆け寄り、

「ううん! ぼくたちの方こそ、アースラさんの船にはとても助かったよ!」

「そうだぜ。あんたの魔術は万能だな」

「万能ではない。そこにはちゃんと自然科学的法則が……」

「はいはーい、もういいかな?」

 女神が片手をあげて、会話をさえぎる。アースラは女神を振り返った。つかつかと歩み寄ると、片膝をつき、片手を胸に当て頭を下げた。

「女神アンダルファよ。お会いできて恐悦至極。復活を心よりお祝い申しあげます」

「うん。ありがとう」

「つきまして、このアースラよりお願いがございます。ぜひ、このアースラをあなたの供として付き添わせて頂きたいのです。ご了承頂けますか?」

「供? ……従者としてはダメだけど、友達としてならいいよ」

「! では、是非に。ありがとうございます」

「うん! よろしくね」

 女神は片手をさしだした。アースラがそれに応えるように、手を握りしめる。立ち上がると、ふたりは握手を交わした。

「アースラさんのこれからも決まったみたいだし、良かったな」

「うん。アースラさん、嬉しそう」

 アースラは女神から離れるとふたりの元に来た。胸に手を挙げ、頭を軽く下げる。

「ありがとう。人の子らよ。おかげで我が悲願、神の神髄に達することができそうだ。礼をいう」

「こっちこそ、あんたの解釈、参考になったよ。おかげで女神を呼び覚ませた」

「ふっ。興味がないと思っていたが、意外と聞いていたものだな」

「まあね」

 新太はニヤリと笑った。アースラも不敵に笑う。

「はい、じゃあ、本当に帰るよー」

 女神が片手をふりつつ、手招いた。新太や喜一、子ども達は女神の元に集う。

 女神は正面のモニター前に立ち、

「……えいっ!」

 女神が両手でモニターを横になでると、海上を映している画面が変わった。新太や喜一、仁、子ども達がよく見知った町の風景、ついで、夕焼けにそまる小学校の校舎が映し出される。子ども達の間から歓声がわき起こった。なんだか、とても長い時間、こっちの世界にいたような気がする。

 新太は女神に頼んで、校舎の玄関に取りつけられた時計を映しだしてもらった。時計の針は十七時十分。どうやらこちらに来てから、まだ、四十分ほどしかたっていないようだ。新太は心底ほっとした。これなら、家にいる父親もまだ寝ているだろう。

 女神はそんな新太を見つめると、画面に目をやった。

「じゃあ、どこに帰る? 学校? お家? 自分の部屋? 好きな場所に帰れるよ」

 子ども達はそわそわと目配せして、

「学校!」

「お家の部屋でお願いします」

「駅前がいいな!」

 と口々に言う。

「うん、じゃあ、順番ね。君たちは?」

 女神は新太と喜一、仁に視線を向けた。

「ぼくは病院の前! 帰ったら、百々花にすっごい冒険の話をきかせてあげるんだ!」

「オレはサッカークラブの部室で。ボールに触ってから帰りたい」

「うんうん、君は? 新太君」

「おれは……」

 新太は考える。果たして自分は一番にどこに帰りたいだろう。どこに戻りたいか。

 しばらく考えると、新太は顔をあげた。

「おれは、商店街の肉屋の前でお願いします」

「うん、お肉屋さんね」

 女神はモニターのボタンをいじると、順番に映像を映しだして行く。

「じゃあ、まずは学校ね!」

 学校の玄関が映し出される。どことなく緊張したような高揚とした顔で、男の子がモニター前に進み出た。

「来た時、枠の中に飛び込んだよね。それと同じだよ。モニター画面に飛びこむんだ」

「わかった! じゃあ、みんな、お先に失礼」

 片手をあげて敬礼ポーズをとると、男の子はモニター画面に一歩踏みだす。水面に吸いこまれるように、男の子の姿が消えて行った。次いで、モニター画面に学校の玄関前に立ち、こちらを向いて手をふる男の子が現れる。

「うん、いいね! じゃあ、次は自宅の部屋ね」

 女神はモニターをフリックした。女の子の部屋が現れる。女の子がすこし恥ずかしそうに、そそくさと前に出た。

「じゃあ、みんな、ありがとう! また、学校でね」

 そう言って、女の子はモニターに飛びこんだ。モニターには部屋の中、こちらに向かって手をふる女の子の姿が映る。

「はい、じゃあ、次は駅前ね」

 小さい女の子が嬉しそうに弾みながら前に出る。女神はモニターの画面を駅前に変えた。帰宅ラッシュで混雑した駅の改札口が見える。女の子は小さく手をふり、

「またね。また明日」

 モニターの中に入っていった。画面に改札から出てきた母親とおぼしき女性と手を繋ぐ女の子の後姿が映る。

「じゃあ、次は……」

「オレいくわ」

 と仁が手を挙げ立ちあがった。

「仁」

「トリはふたりに任せた」

「じゃあ、仁君はサッカークラブの部室ね」

 仁はモニターの前に立った。薄汚れたサッカー部の部室が現れる。

「またな、安浦、加納。父さんのこと、約束守れよ」

「おう!」

「うん! もちろん!」

喜一と新太は仁に向かって、拳を突きだした。

 仁も軽く笑ってふたりに向かって拳を突きだす。後ろを振り向き、モニターの中に入っていった。画面にサッカーボールを触ってわずかに微笑む仁が映しだされた。

「はい、じゃあ、あとはふたりだね」

 喜一が立ちあがると、新太の腕を引っ張った。

「喜一、どうした?」

「アラタも一緒に行こう! ぼく、商店街にしてもらうから、一緒に帰ろう!」

「……そうだな」

 新太も立ち上がり、ふたりでモニター前に進んだ。女神はそれを見てうなずき、

「じゃあ、商店街の入り口でいい?」

「うん! いいよ!」

「おう、たのむわ」

 女神はモニター画面を商店街の入り口に変えた。赤いアーケードが印象的な商店街が現れる。

 ふたりは見合って笑い、

「じゃあ、帰るか!」

「うん! 楽しかったね!」

せーの、のかけ声で、ふたり同時に一歩を踏みだす。商店街のモニター画面に飛びこんだ。



 モニター画面に飛びこむと、そこは商店街だった。後ろを振り向くが、モニターも何もない。ただ、いつもの夕暮れに沈む雑居ビルが見える。

商店街からは陽気なクリスマスソングが流れ、冷え冷えとした空気が新太に、今は十二月だったと思いださせた。夕暮れ時でみな、早く家路につきたいためか、コートやジャケットを着こんだ人々が肩をすくめながら、足早に通り過ぎていく。気がつけば新太の格好もジャケットにランドセルを背負った、アンタカラに来る前の物に戻っている。

新太は白い息を吐きながら、自分がアンタカラから帰ってきたのだということを実感した。喜一を見ると、同じように鼻を赤くさせ、瞳をキラキラと輝かせている。ふたりは顔を見合わせ、

「ようやく、帰って来たな、おれたち」

「うん! 帰って来たね!」

 ふたりは肩を抱き合い、晴れやかな顔で辺りを見回す。クリスマスの飾りつけがされた町の通りも、ちょっと古めかしい商店街もなんだか懐かしい感じがする。新太は胸いっぱいに冷たい空気を吸いこんだ。排気ガス交じりの空気も今となっては懐かしい感じがする。

 新太は喜一を振り返り、

「そういえばさ、喜一……その、なんていうか、残念だったな。クリスマスツリー。結局、持って帰れなくて」

「ううん。大丈夫。アヴィンサは許せないけど、もう一回作ればいいでしょ! それに……」

 と、喜一は洋服をまくりあげ、腹からトップツリーを取りだした。

「これもあるしね!」

「そっか、そうだったな。じゃあ、大丈夫か」

「うん! また皆に手伝ってもらう」

「おれも手伝うよ」

「うん、ありがとう!」

 じゃあ、ぼく病院の面会時間があるからと喜一は商店街とは反対の方向へ歩いて行った。新太は後姿に手をふる。見えなくなると、踵を返した。ジャンバーのポケットに手を入れて、商店街の通りを歩いていく。

 途中、肉屋の看板を見かけると、ためらいながらも立ち寄った。

「おじさん、メンチカツ四つください」

「おっ、新太君。今日は遅いね。また何かあったかい?」

「いや、とくには……」

 店主は手際よく紙袋にメンチカツを四つ入れていく。新太はその手の動きを見ながら、どうするか考える。店主が紙袋を差しだすと、新太は受けとり、現金トレイにちょうどぴったり小銭を入れた。

「あいよ、ぴったりね」

「おじさん、あの」

「どうした、新太君」

 新太は思い切って顔をあげた。はっきりと、

「おれと父さん、どうしようもなくておじさんに迷惑かける時があるかもしれないけど、また、その時は助けてください。よろしくお願いします」

 そう言って、新太は深々と頭を下げた。店主は一瞬きょとんとして、

「バカだな。子どもが気にすることじゃねぇよ。子どもってのは笑うのが仕事だろ。あたぼうよ」

「……ありがとうございます」

新太はメンチカツの入った袋を胸に抱くと、少し恥ずかしそうに、足早に歩きだした。

「新太君、また来てよ。今度はお父さんと一緒にな」

 新太は軽く会釈すると、そのまま紙袋を抱えて駆けだした。

胸がほんのりと温かい。これはきっと、メンチカツの入った紙袋のせいだけじゃないと新太は知っていた――。

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