第2話 奇跡の町アンタカラ


「うわああああああああっ!」

 上空をまっすぐ新太は落ちていく。ごうごうとうなり声をあげて、風が耳もとを通りすぎる。新太は頭をしたに、弾丸のごとく速さで、大気の層を切りさき落ちているのだ。風圧で髪や服のそでぐちがむちゃくちゃにいりみだれる。目の下には貝殻の形をした島がみえた。島はぐるりと森にかこまれ、中心部に白銀の塔がある。その塔をかこうように、虹色の屋根の建物がびっしりとしきつめられていた。

(な、なに?なんだよこれ?)

 状況がよくのみこめない新太は、ただ、叫び声をあげるしかできない。ひめいのようなうなり声がただ、のどもとを通りすぎるだけだ。

 となりをみると、アヴィンサが平然とおなじように落下している。アヴィンサは新太を見て、

「さあ、新太君、ここはすでにアンタカラの領域ですよ。さあ、希望を見せてください」

「き、希望って、なんだよ!」

「望みをいうのです。空を飛びたい。無事着地したい。さあ、早くいわないと、落ちて死んでしまいますよ」

 そうはいっても、状況がよくのみこめない新太だ。ここがどこなのか、なぜ、自分はこんなことになっているのか、はたまた、これはゲームの世界――今どき流行の仮想現実というやつで、自分はいつのまにか装置をとりつけられたのではないか、などなど、新太の頭のなかは考えることでいっぱいだ。

 そうこうしているうちに、雲をつきやぶり、鳥の群れをよこぎり、どんどん地面がちかづいてくる。森がせまり、野原にひかれた茶色い道が視界いっぱいに広がった。ぶつかる! ――そう思った瞬間、

「と、とまれ! とまれ! とまれ! とまれ! 助かりたい! おれは助かる!」

 うわずった声で新太は叫ぶ。すると、ふしぎなことにピタリと落下がとまった。地面まであと1メートルというところで、新太はプカプカと空中にういている。アヴィンサがさきに地面におり立ち、新太に手をさしだした。

「すばらしい! 新太くん、さっそくアンタカラの奇跡を体感しましたね。どうですか?」

「べ、べつに……悪くねえんじゃねえの?」

と、いいつつも、新太の心臓はドキドキと鳴っている。アヴィンサの手をとり、地面におろしてもらったが、なかなか心臓の音がおさまらない。空からおちた恐怖で、ひざがわずかにふるえていた。

「さあ、新太くん、奇跡の町アンタカラへようこそ! 開門をねがいます!」

「へ?」

 新太が顔をあげると、目の前に二階だての家くらいの高さで、大きな分厚い木の扉がある。あまりの大きさに、新太はぽかんと口をあけ、扉をみあげた。扉の両側には、白い石をつみあげてできた、どっしりとしたおなじ高さの壁がある。町をとりかこんでいるのだろう、壁のはしは、森にかくれてみえなかった。

アヴィンサの声とともに、地面をひきづるようなにぶい音をたてて、扉がゆっくりと開く。白い石つぶてをしきつめられてできた広場がみえた。その広場に太陽の光が反射して、新太はまぶしさに目を細める。目がなれてきたとき、陽炎のように、いつの間にかたくさんの人たちが広場に立っていることに気づいた。

 広場に立っている人たちは、老若男女問わず、中世ヨーロッパのような古めかしい衣装を着ている。男性たちはチュニックにタイツをはき、女性たちはワンピースのうえにエプロンをつけている。新太は、ファンタジー映画の登場人物を思いだした。

「アンタカラへようこそ、加納新太さん。私たちはあなたを心からかんげいします!」

「あ、ああ……」

 せいだいな拍手がなりひびいた。と思うと、どこからともなく心がはずむような陽気な音楽が流れはじめる。町の人たちは音楽にのっておどりだし、新太をさそった。

 新太はそれをやんわりと断り、そっと広場をぬけだした。にぎやかなのはきらいじゃない。でも、なれないのは苦手だ。

 広場をぬけだすと、小道にはいる。道はせまく、両脇の家がせまるようにところせましとならんでいる。三階だてのほそながい家々だ。壁は白く、不思議なことに真珠のように、ほのかに光沢を放っている。空からみた虹色の屋根も日の光に照らされて、淡いかがやきを放っていた。

「へぇ。どこもかしこもピカピカだな」

 新太はそぼくに思った。もうすこし、あたりをまわってみようと、歩きだした。そのとき、

「加納! 加納新太! お前もこっちにきたのか?」

「え?」

 ふりかえると、クラスメイトの仁がいる。仁の数メートルうしろに、よくみれば、ちがうクラスや学年の、顔みしりの生徒が三人いた。

「……かさはら、じん?」

「お前もアヴィンサに招待されてきたのか? いや、本当、すごいよな」

「ああ。いまだに信じられないよ」

「そうだろうな。ところで、俺たちこれからあっちで遊ぼうと思うんだけど、お前もどう? 一緒に遊ばないか?」

「そうだな……」

 新太は一瞬、考えた。遊びたいのはやまやまだが、はやく家に帰って、夕飯をつくらねばならない。それに、父親のことも心配だ。昨日の今日だし、またなにかしでかしたら、たまったものではない。

 新太はことわろうとした。気分転換にぐるっと町をまわったら、アヴィンサにたのんで帰ろうと思っていた新太だ。新太は口をひらいた。

「わるい、笠原。おれ、遊ばない。かえるよ」

「そうか? もったいないな」

「そうそう、とてももったいないですよ。新太くん」

 ポンっと肩をたたかれた。ぎょっとして、新太は後ろをふりかえる。広場では姿をけしていたアヴィンサが、いつのまにか、後ろにたっていた。

「アヴィンサ、あんた、いつのまにいたんだよ」

「新太くん、せっかくなんでも願いがかなう奇跡の町にきたのに、たった一度の奇跡だけで帰るなんて、なんてもったいない。仁くんもそう思いませんか?」

「そうだな。もう少しいればいいのにとは思うよ」

 仁の後ろをみると、ほかの生徒もその通りだというように、うなずいている。

「ほら、みなさん、そういっていることですし、新太くんも一緒に遊んではどうですか?」

「……でもな」

「時間が気になる?あちらにのこしてきたお父さまが気になるとでも?」

「……まあ、そうだけど」

「なら、安心してください。こちらの一日があちらの世界では、たったの十分になります。こちらに三日いてもあちらでは三十分しか過ぎていません。証拠に……」

といって、アヴィンサは上着のポケットから銀色の懐中時計をとりだした。時計の針は午後五時をさしている。

「こちらをごらんください」

 そういうと、アヴィンサはステッキの先で空間にテレビサイズの四角い枠を描いた。

 四角い枠内に、新太が住む世界が映し出される。小学校の校舎の時計だ。時計の針は十六時三十分をさしている。新太がこちらにきてから、一分とたっていない。

「いかがですかな?新太くん、これで安心しましたかな?」

「……おれの家、出せる?」

「ご自宅ですかな?いいでしょう」

 アヴィンサが空間をステッキの先でフリックする。すると、古い一戸だての新太の家が現れ、ついでうす暗い部屋のなかが映し出された。

「とめて」

 新太の指示により映像をとめると、そこには父親がうつる。ベットで布団にくるまり、気持ちよさそうにねむっている。新太は安心して、ため息をついた。これなら、しばらく帰らなくても、父親はおとなしくねむっていてくれるだろう。

 新太はアヴィンサと仁をふりかえり、

「いいぜ。笠原、遊ぼうぜ! ただし、あっちの世界の時計で三十分な」

「そうこなくちゃな。こっちで三日。いいぜ」

 新太は軽口をたたきながら、仁と数人の子どもたちとで、小道をかけていく。新太にとって、父親を気にしなくていい自由に遊べる時間はひさしぶりだ。自然に心がはずんでくる。

 そんな新太をみて、アヴィンサは楽しそうにつぶやいた。

「子どもたちよ、すばらしき希望を。たくさんたくさん、叶えるのですよ」

 そのつぶやきは風にふかれてとんでいく。だれの耳にもとどかなかった。


 風がふくたびに、雲がたなびく。新太は目をとじて、髪や頬をくすぐる風を感じる。今、新太はぽっかりと空いた雲の切れ間にうかんでいた。

 足もとには、アンタカラの家々の屋根がみえる。アンタカラにきたときとは、反対に、今度は自分の意思でここまで飛んできたのだ。

 新太はしずかに深呼吸をすると、耳をすませた。どんな音も聞きもらすまいと、集中する。風のふく音のなかに、かすかに子どものかん高い笑い声が聞こえた。

「そこ!」

 新太は目をみひらき、ふいに頭上をつかんだ。すると、つかんだ場所から、スニーカーをはいた子どもの足がするするとあらわれる。新太は子どもの足首をつかんでいるのだ。

「あ~!みつかっちゃったかぁ」

 半ズボンをはいた、小学校低学年くらいの男の子が姿をあらわした。くやしそうに、新太の頭上ふきんで頭をかかえながら、ふよふよとうかんでいる。

「次、おまえ、オニだからな」

「へーい」

 新太たちは、今、オニごっこをしている。ただのオニごっこじゃない。なりきって遊ぶオニごっこだ。範囲をきめて、そのなかで、鬼が指定したものに変身する。最初のオニである新太が指定したのは『風』だった。だから、子どもたちはアンタカラにお願いして、めいめい風になりきっているのだ。

「おまえ、おれのそば通っていくとき、笑うのやめろよ。もろバレだぞ」

「だって、アラタくん、ぼうっと立っているから、おもしろくって」

 そういうと、うぷぷっと口もとをおさえて男の子は笑った。

「……たくっ、のんびりしてんな」

「おっ、なんだ。もうつかまったのか?」

 新太の頭上、3、4メートル離れた場所に仁があらわれた。その声が合図とばかりに、数名の子どもたちがその場に姿をあらわす。

「ゆだんしてるから、すぐつかまるのよ」

「もっと、空とびたーい!風、たのしーい」

 子どもたちは好き勝手にいいあう。

「じゃあ、つぎな。オニ役の人は何に変身するか決めるんだ」

 仁が手をたたいて、しきりなおした。

「え? んーと、んーと……」

「あたし、雨がいい。それか海!」

「トンボがいいよ。ばびゅーんって飛ぶの!」

「ええっ? うーんと、うんと……」

 男の子はますますなやましそうに、頭を抱える。しばらくすると、ぱっと顔をあげた。

「ぜんぶ! ぜんぶがいい! ぜんぶやろう!」

「全部ね。まあ、いいんじゃねぇのか」

「じゃあ、決まりだな」

 子どもたちは輪になりアンタカラにどうお願いするか相談しはじめた。やがて、決まったのか、顔をあげる。

 オニ役の男の子が、

「アンタカラ! ぼくたちを雨にしてください。オニごっこをしているんで、ぼくがふれたらみんなを人間にもどしてください。あ、ぼくも変身したいんで、雨にしてください。で……」

 なんだっけというように、男の子はとなりにいる新太をみた。新太はため息をついて、

「雨のあとには、トンボにしてください。トンボのあとには、海の波にしてください。海の波のあとには、砂浜にみんなを安全にたどりつけるようにしてください。全ての変化は5分ずつで。途中で鬼にふれられて、人間にもどったやつは、安全に地面におろしてください。場所は砂浜で」

「ありがとう!アラタくん」

「べつに」

「よし、じゃあ、これでいいな。アンタカラ、俺も加納と同じで」

「あ、わたしもいっしょ!」

「あたしもー!」

 子どもたちはくちぐちに叫んだ。

「よし、じゃあ、スタートだな」

 仁の合図とともに、新太は体がさらなる上空へ引っぱりあげられるのを感じた。まわりをみれば、ほかの子どもたちの姿が消えている。新太は自分の体が空気となってみえなくなっていることに気づいた。意識のみある感じだ。

 そのままぐんぐん新太は上昇していく。やがて、目の前に灰色の雲があらわれ、新太はすいこまれた。雲のなかは霧がかかったようだ。新太は暗い霧のなかをどんどん上昇していく。

どこまであがるのだろう、そう思ったとき、新太はひんやりとした気配を感じた。あたりの温度が急激にさがっているのだ。ひやっ、ひやっと、体中につめたいなにかがくっつき、そのたびに、自分の体がどんどん重くなるのがわかる。あたりにただよう水分がくっついて、重くなっているのだ。

その重みにたえかねて、新太は自分の体が雲のなかにいるには、限界をむかえようとしているのを感じた。すべり落ちる――、そう思ったとき、新太の体は急激に落下する。霧をかきわけるように、猛スピードで落ちていく。と同時に、気温もぬるいものへと変化し、体もまた、氷の粒から水滴へと変わっていることに気づいた。新太は雨となって、地面にふりそそぐのだ。

 霧がどんどんうすくなり、やがて、新太は雲をぬけた。目の前に、真っ青な海が広がる。ああ、海となって、すべての水と同化するのだと新太は思った。

 だが、海が目前にせまった瞬間、ふいに体がうかびあがるのを感じた。トンボだ。新太はみどりの光る眼をもつ真っ赤なトンボになっていたのだ。

「おおーっ!」

 新太は楽しくなって、風をきりながら、海の面をなぞるように、水平に飛んでいく。波と遊ぶように、波頭にあわせて、高く低く、高く低くと、自由自在だ。器用に飛沫をよけていく。

自分の背中をみれば、ステンドグラスのような透明な羽が、光をうけてきらきらとかがやき、力強くこきざみにはばたいている。新太はそれがたのもしく、ほこらしげに思えた。

「加納。そこにいるの加納か?」

 ふいに後ろから声をかけられた。声の主は直角に曲がると、器用に新太のとなりにぴったりと並んだ。

 大きな金色の目に、ピカピカとかがやく緑のつややかな体。その節だったお腹をじまんげにそらしている。

「仁か?」

「トンボってすごいな。こんなに体が軽いとは知らなかった。これなら飛んでどこにだっていけるな」

 仁は新太を中心に、ぐるりと大きく一周した。

「ああ。気持ちいいよな」

「だな」

 ふたりはしばらく並んで飛んだ。波のくだける音と、塩をふくんだしめった空気だけが、ふたりをつつむ。新太が海をみると、二匹の小さな影がうつった。新太は自分が本当に、トンボになったのだと実感する。

 そろそろ5分になるかというとき、

「にげて!」

 うしろから声が聞こえた。

 新太と仁がふりかえると、3匹のトンボがものすごい勢いで飛んでくる。前を飛んでくるのは、ピンクと黄色の小さなトンボだ。その後ろには、新太たちのゆうに5倍はあろうか、角の生えた大きな黒と赤のうずまきもようのトンボが飛んでくる。

「うわはっはっ、つかまえてやるう!」

「あいつ!」

 うずまきもようの大きなトンボはオニ役の男の子だ。アンタカラにお願いして大きくて凶悪なトンボの姿にしてもらったのだ。

 新太と仁もあわててスピードをあげて、飛びはじめた。

「あれってルール違反じゃねえ?」

「いや、問題はない。あいつはかしこい」

 うしろの小さな2匹のトンボが大きなトンボにはねとばされた。その瞬間、姿が消える。きっと、最初にアンタカラにお願いしたとおり、砂浜にもどって人間の姿になったのだろう。

 そうこうするうちに、オニ役のトンボがぐんぐんとせまってくる。

「うわっはっはっ! くいちらかしてやるーっ!」

 するどい牙をもつ口をひらいた。あわや、追いつかれると思った、その時――、

目の前に巨大な波がせまった。

「!」

 ざっぱーんと大きな波音をあげて、三匹は海にのみこまれた。

「あばばっ、ぼく、およげないっ」

 トンボ姿のオニ役の男の子が、苦しそうに足と羽をばたつかせている。

 新太は海から頭をだし、

「おい、落ちつけ。そろそろ波になる時間だ」

「あばばばっ、もうムリ! アンタカラ、ぼくをすなはまにもどして!」

 瞬間、男の子は彗星の ごとく光になって、砂浜にもどっていった。

「あいつ……」

 新太はほっと息をついた。なんにせよ無事なのはいいことだ。

「加納! 第二波くる!」

「え?」

 後ろをふりむくと、大きな波がふたたび二匹をおそおうとしていた。

「!」

 新太は思わず目をおさえた。波がくだける音とともに、新太の体は海に引きずりこまれる。

はげしい流れが新太の体をもみくちゃにする。前後左右がわからなくなったころ、新太は自分の体がとけてなくなっていることに気づいた。海の一部、波になったのだ。

 どこまでも透明な世界で、新太は仁の名前をよんだ。

「仁、いるか? 仁」

「加納、ここだ」

 気づかなかったが、仁はどうやら声の近さから、となりにいるらしい。

「そろそろもどるか」

「そうだな。他の奴らも気になるしな」

 新太と仁はふたりならんで、小さな波となって砂浜をめざして泳ぎはじめた。

 波として頭をのぞかせれば、ぽっかりと雲がただよい、わたり鳥がのんびりと空を飛んでいる。逆に、海のしたをのぞきこめば、黄色と黒のもようの小さな魚がサンゴ礁をつつきながら、泳いでいた。

「なんか、平和って感じ」

「そうだな」

 新太はのんびりバカンスにきた気分になる。ともすれば、家のことも忘れそうだ。

「――なあ、仁はさ、いつ帰るの?」

「何がだ?」

「何がって、アンタカラだよ。ずっといるわけじゃねぇだろ」

「まあ、そうだな……」

 そう言うと、仁はそのまま黙ってしまった。新太は思う。自分も仁のことをよく知っているわけじゃない。何か理由があるのだろう。

 浜辺に近づくと、仁が話しかけてきた。

「砂浜が見えたな。そろそろ人間に戻るぞ」

「ああ」

 新太が前を注視すると、浜辺で子どもたちが手をふっている。新太は岸を目指して泳ぎ続けた。


 アンタカラの中心部、銀色の塔の一角に、真っ白な部屋があった。そこは壁も天井もどこもかしこも真っ白だ。窓はなく、照明もない。だが、不思議なことに部屋全体がほのかに光り輝き、室内は明るく、すべてをみとおせた。

 その部屋の中央に背の高い銀色のスツールのイスがある。そのイスにアヴィンサが足をくんですわっていた。

 壁一面がモニターになっており、映像が映しだされている。砂浜にいる新太と仁、子どもたちが映っていた。バーベキューをしているのだろうか、大ぶりの肉と野菜をさした串をもって、新太が楽しそうに笑っている。まわりの子どもたちも、それぞれ好きな物をアンタカラに願って、食べているようだ。

 その様子をみて、アヴィンサは満足げにうなずいた。

「ふむ。こちらの子どもたちはいい感じですね」

 さて……と、アヴィンサは指で空間を横にフリックした。すると、映像が切り替わり、ぼうず頭のひょろりとした少年が映っている。森の中、町の住人達と一緒に斧とノコギリで木を伐りだしているようだ。

 アヴィンサはあごに手を当てて、困ったように小首を傾けた。

「んっんー。これはいけませんね。アンタカラのルールはお伝えしましたが、まさか、こう来ましたか」

 アヴィンサは椅子から立ちあがると、映像に背を向けて扉口へ歩きだした。その足取りは力強く、確固たる意志を感じさせた。

「このままではいけません。なにか、早急に手を打たなければ」



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