性悪女子に振られたら、なぜか恋愛相談所を手伝うことになりまして、様々な出会いのお蔭で、学校の人気者になっていました。振った女性? もう眼中にありません
【好きな女の子の絵を描いていたら、幼馴染の体を描くことになりました】
【好きな女の子の絵を描いていたら、幼馴染の体を描くことになりました】
次の日。将太は勇気を振り絞り、竹内さんを体育館裏に呼び出す。
「小林君、用って何?」
「えっと……」
今すぐ逃げ出したいぐらい緊張しているようで、微かに体が震えていた。
「一年の時から、ずっと竹内さんの事がずっと好きで、絵を描いていました。受け取ってください」
将太は目を合わせられないようで、俯きながら絵を竹内に差し出した。
「ごめん。私、好きな人がいるから」
竹内は迷うことなく、そう返事をする。将太は悲しげな表情で差し出した手を下ろすと「そう……だよね」
「私、もう行くね」
「うん。ありがとう」
将太はそう返事をすると、帰っていく竹内の背中を黙って見送った。
※※※
その日の昼休み。将太がトイレを済ませて教室に戻ろうとすると、反対側から竹内がクラスメイトの女子と歩いて来るをの見掛ける。振られた将太は気まずいと思ったようで慌てて、階段の方へと隠れた。
「今日さぁ、小林君に告られてさ」
「小林君って、将太君?」
将太は暗い面持ちから嫌な予感がしているようだったが、気になってしまっているようで、耳を澄ませていた。
「そうそう。一回も話した事ないだけでも無理なのに、私の絵を描いていたって渡してきてさぁ。まじ気持ち悪くて断ったわ」
「マジ? それでその絵は上手かったの?」
「普通より上手いってだけで何も感じなかったわ」
「なにそれ、うける」
人の考えはそれぞれ、冷静に考えれば、そういう意見もあるのかもしれない。だけど将太にとっては優奈に手伝って貰って一生懸命に練習して描いた絵だ。馬鹿にされて悔しいのだろう。
将太は怒りを必死に堪えている様子で、鬼のような形相を浮かべながら、両手をギュッと握り、フルフルと震わせていた。
「ちょっと美香さん!」と、優菜は二人の後ろから、怒鳴るように呼び止める。そして二人が振り向くと「人が一生懸命に描いた絵を馬鹿にするような言い方、酷いと思う!」
「誰?」
「同じ学年の菊池 優奈さんだよ。小林君とたまに話している所を見たことある」
「あぁ……そういうこと。気持ち悪いのを気持ち悪いって言って何が悪い? ウザッ、行こ」
そこで会話が途切れ、竹内とクラスメイトは教室に入っていった。将太はそれを確認すると、その場で「噂通り本当に性格が悪いな。振られて良かった」と呟いていた。
※※※
その日の夕方、将太は家に帰ると直ぐに自分の部屋に向かった――部屋に入るとお絵描きノートを開き、描いた絵をビリビリに刻んでいく。
今日一日、何度も何度も「あんな奴のこと気にするな」と呟いていたが、怒りが収まらないようだった。
「くそ……俺にもっと勇気があれば、あの場で優奈が傷つく事は無かった――いや、それ以前にあの時、優奈の言う事を聞いて、サッサと諦めておけば良かったんだ」
将太は悲しみが込み上げて来たようで、涙で頬を濡らしながら「そうすれば優奈も俺も傷つくことはなかったのに……ごめんな、優奈」
──少しして将太は制服の袖で涙を拭うと、ノートを床に放り投げた。ベッドの方に行くと、倒れこむかのように横になる。
「優奈、お前はいつも優しすぎるよ」
将太は天井を見つめボソッと呟き、昔の事を思い出し始める──。
小さい頃から人付き合いが苦手で、からかわれやすい体質だった将太。それをいつもサポートしてくれていたのは優奈だった。
一人っ子だった優菜にとって、将太は可愛い弟のような存在だったのかもしれない。いつも一緒に泣いて笑って過ごして、何も意識せずに過ごしていたけど、将太は小学校高学年になる頃にはそれだけじゃ満足できなくなって、次を求めたくなっているようだった。
それでも一歩進めることが出来ずに、中学生になった。将太は好きだという想いは残っているのに、別々のクラスになったのもあり、次第に優菜と遊ばなくなり、お互いにどう過ごしているのかも分からなくなっていった。
そんなある日の事だ。優奈が男の子に告白された事を耳にする。本人にその事を聞く勇気がない将太は、とにかく周りの会話を聞きながら過ごし、優奈が好きな人が居るからと断った事を耳にした。その時の将太は、大切なものを失ったかのように、落ち込んだ表情を見せていた。
「はぁ……それから俺は、優奈から離れる事を決意し、他の人を好きになる道を選んだ訳だけど……その決断は間違えだった」
将太は上半身を起こすと「こんな悲しい結末になるのなら、気持ちを偽らないで振られても良いから、ずっと優奈の事を想い続けていれば良かった」と、後悔の言葉を口にした。
そしてスッとベッドから立ち上がると、「さて……俺のせいで優奈も傷ついた訳だし、明日になったら謝りに家に行ってみるか」
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