【美人の幼馴染は表情豊かではないけれど、SNSでは感情を剥き出しにして僕にデレてくる】

「真奈美、今日は学校休みか……」


 拓真は真奈美の事を心配しているようで、真奈美の席を見つめながら、眉を顰めてそう呟いた。昼休み時間に入ると携帯の電源を入れ、SNSを開いて、真奈美に所へ覗きにいく。


『もうすぐ彼氏の誕生日、何を用意しようかな?』


「書き込みが出来ているってことは具合が悪いって事じゃないのかな?」


 拓真は椅子の背もたれに背中を預け、天井を見据える──少しして姿勢を戻すと『もうすぐ僕の誕生日だけど、欲しいものは何も浮かばない』と、書き込みした。


 ──しばらくして真奈美の書き込みが更新される。


『形に残るものをあげたいなぁ。何かないかな?』


 拓真はそれをみてパッと浮かばないようで、頬杖をかいて一点を見据える──何か思いついたのか姿勢を戻すと『カレンさんのラバーストラップにするかな!』と、人気アニメに出てくる女の子のストラップをお願いした。


『彼氏に聞いたら、女の子のラバーストラップだって! 彼女が居るのに、ちょっと複雑だよね~』


「おー、おー、やきもち焼いてる。可愛い奴め」と、拓真はニヤついた顔で呟いた。


『彼女、焼き餅やいてくれるかな~。可愛い姿が見れそうで楽しみだ』


 その後の反応は『ずるい!』の一言だった。


「ちょっとからかい過ぎたかな? でも……元気そうで何よりだ」


 ※※※


「拓真」


 拓真が学校に向かって歩いていると、後ろから真奈美が声を掛ける。拓真は振り返ると「おはよう」


「おはよ」


 真奈美が駆け寄ってきて、肩を並べて歩き出す。紺のブレザーのポケットから、チェック柄の紙袋を取り出すと、拓真に差し出した。真奈美のその表情は心なしか、怒っているようにも見えた。


「はい、誕生日プレゼント」

「ありがとう。中身は何?」

「開けてみたら?」

「うん」


 拓真は紙袋に付いた青色のリボンを外し、丁寧に金色のシールを外すと中身を取り出した。中身はもう知っている。だけど――。


「おぉ! これはカレンさんのラバーストラップじゃないか!」と、大袈裟に驚いていた。


「どう?」

「メッチャ可愛くて、気に入った!」

「あ、そう」と、真奈美は素っ気なく返してくる。


「焼き餅を焼いてるの?」

「べっつに~」

 

 真奈美の言い方に、いつもと違う何かを感じたのか、拓真はハッとした表情を浮かべたが、直ぐに優しい笑顔を見せる。拓真はストラップを黒のリュックに付けながら「これを選んだ理由を教えてあげようか?」


「可愛いからでしょ」

「うん、そう」


 真奈美は冷たい視線を拓真に向けているが、拓真は気づいていないのか気にしている様子はなかった。


「だってこの子、性格も顔の感じも真奈美に似ているんだもん」

「は?」


 拓真の言葉に真奈美は目を丸くして驚く。拓真はその表情、待っていましたと言わんばかりに嬉しそうな表情を浮かべる。


「だからこうして、側に付けていたかった訳」と、拓真は言って、ラバーストラップをポンポンと叩くと、真奈美は表情を戻し、正面を向く。


「ずるいなぁ……もう」


 真奈美が、呟くようにそう言うと、拓真は真奈美に近づき、手を握る。


「ごめん、ごめん」


 ※※※


 学校に着くと、二人はそれぞれ自分たちの席に向かう。拓真は真奈美の斜め後ろの席に座り、彼女を見つめた。真奈美は席に座ると、直ぐに携帯を触り出した――拓真は少し様子を見てから、SNSを開いて真奈美のところへ覗きに行く。


『彼氏が女の子のラバーストラップを選んだのは、私に似ているからだって! その子の事をメッチャ可愛いって言ってたって事は……つまりそういう事だよね!? ヤバ、想像したら興奮して鼻血でそう!』


「ふっ」


 続いて真奈美はこう書き込みしていた。


『本当はサプライズでポッペにキスでもしようかと思ったけど、あの雰囲気じゃ絶対無理』

 

「まじかよ……」


 拓真は大チャンスを逃してしまったと愕然としている様子を見せると、真奈美の方に顔を向ける。真奈美がチラッと拓真の方にに顔を向けると、二人の視線があった。真奈美はプイっと、顔を背ける。拓真はその仕草をみて「これからは弄るのも大概にしておこう」と、反省するのだった。

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