性悪女子に振られたら、なぜか恋愛相談所を手伝うことになりまして、様々な出会いのお蔭で、学校の人気者になっていました。振った女性? もう眼中にありません
【陽キャラだった頃の性格を隠しているはずなのに、彼女と居ると本性が晒されていく。周りに人が集まってくるけど、俺は彼女にだけ本性を見せたいと思う】
【陽キャラだった頃の性格を隠しているはずなのに、彼女と居ると本性が晒されていく。周りに人が集まってくるけど、俺は彼女にだけ本性を見せたいと思う】
続いての春樹のお客さんは、恵の友達の
「私と汰月君は接点があまりないんですけど、どうしたら良いと思います?」
「そうですねぇ……」と、春樹はショートの髪を撫で「何かキッカケが出来れば良いですが」
「そうね。それを待っているのだけど、なかなか……」
「──そうだ! 典型的ですけど、こんなのはどうです?」
「え、なになに」
日向は興味津々の様子で春樹のアドバイスを聞いていた。
※※※
次の日。昼休みという事もあり、日向の教室内はガヤガヤと様々な声が飛び交っていた。日向は自分の席に座り、友達の友恵と話をしている。
「ねぇ、日向。次の日本史、だるくない? 昼休み後は眠くなるから、やめてほしい」
「そうだね」
汰月は自分の席でうつ伏せになって寝ていたが、二人の会話が聞こえたのかピクッと体を震わせた。
「しかもあの先生、ちょっと教科書忘れただけでもネチネチうるさいし、受けつけ無いんだよね私」
「分かる、分かる」
日向がそう返事をすると、予鈴が鳴る。汰月はムクッと体を起こした。
「じゃ、日向。私、席に戻るね」
「うん」
友恵が日向に向かって小さく手を振り、席に戻っていくと、汰月は大きく背伸びをする。
「ごめん、うるさかったかな?」と、日向が汰月に話しかけると、汰月は素っ気なく「いや、大丈夫」
「そう、良かった」
日向の声は穏やかで可愛らしいと男子生徒に定評があったが、汰月はその声を聞いても反応がなく、無表情で机の中に手を突っ込み、教科書を探し始めた。
「あ!」と、日向が声を漏らすと、汰月はどうしたのかとビックリしたようで、視線を日向に向けた。
日向は机の中に手を突っ込み、固まったまま「教科書、忘れた……どうしよう……」
汰月は俺には関係ないと思っているのか視線を日向から離す──でも気になっているようで、もう一度、日向の方に視線を向けた。日向は困ったように眉を顰めて、まだ固まっていた。
汰月は項垂れると目を瞑る。少しして目を開けて顔を上げると、日向の方に顔を向けた。
「日向さん。俺ので良ければ、貸してあげるよ」
「え」と、日向は言って汰月の方に顔を向けると「でも、そうすると汰月君が困るじゃない」
「別に大丈夫だよ」
「駄目だよ」
日向は机と椅子を引き摺りピタッと汰月の机にくっ付ける。
「じゃあ、一緒に見せて」
「あ、うん……」
――本鈴が鳴り、授業が始まる。汰月は何だか落ち着かない様子で、教科書をチラッとみては正面を向くを繰り返していた。日向は汰月の様子が気になったようで視線を向ける。 すると二人の視線がガチっと合った。
日向は円らの瞳を細めてニコッと微笑むと、艶のあるショートボブの黒髪を耳に掛け「思ったよりも近いね」と、照れくさそうに言った。
汰月はそう言われて更に恥ずかしくなったのか、何も言わずに正面を向いた。
「──ねぇねぇ、汰月君」と、日向が話しかけ「何でこの人、チョビ髭が生えてるの?」と、教科書に載っている偉大な人物を指さした。
汰月は教科書をみた瞬間、驚いた表情を浮かべるが、直ぐに表情を戻して「何でって……暇だったから」
「ふふふ、何それ」
「おい、そこ! うるさいぞ」と、教師が言って、二人を睨みつけている。
「すみません」と、汰月が謝ると教師は「まったく……」と、言って授業を再開した。
「――日向さんが笑うから、怒られちゃったじゃないか」
「汰月君が笑わせるからだよ」
「日向さんが勝手に笑ったんだろ」
「ん、ん!」
二人は小声で話していたが、教師の耳には入っていたようで、教師は咳払いをした。日向は人差し指をプクッとした唇に当て、シーっとジェスチャーをする。汰月は笑顔を見せ、黙って頷いた。
※※※
授業が終わり、教師が教室を出ていく。日向は机を元に位置に戻しながら「汰月君、ありがとうね」
「別に礼を言われるようなことしてないよ」
「そんな事ないよ」
汰月は日向の返事を聞くと、教科書を机にしまい、机にうつ伏せて寝る準備を始めた──。少しすると友恵が席を立ち、日向に近づく。
「日向、授業中に相原君と何を話してたの?」
滅多に誰かと話す事のない汰月が、日向と話していたのが不思議だったようで、友恵がそう聞くと、日向は「何でもない普通の会話だよ」
「へぇー……よく会話続いたね」
「そんな言い方、良くないよ。私みたいにしゃべるの好きだって人も居れば、苦手って人も居るんだから。友恵だって苦手の方でしょ?」
「まぁね」
汰月はそれが聞こえていたのか、日向の方に顔を傾けていた。
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