第6話

 タレの染み込んだ鶏もも肉は、いつもより爽やかな香りを放っている気がした。

 仕上がりに満足して衣をまぶし、一度目を低温で揚げていく。衣は片栗粉に胡椒とガーリックパウダー、五香粉ウーシャンフェンを混ぜたものだ。愛用の五香粉は八角茴香と花椒・陳皮・シナモン・クローブのもので、揚げてもほのかに香り立つところが気に入っている。

 並行して、にんにくつけダレの準備も続ける。刻んだにんにくを低温の油でじっくり炒めて香りを出し、砂糖と醤油、酢を入れて味を調整したあと刻みネギを入れて仕上げる。にんにくの香ばしさとネギの青い香りがふわりと立ち上って、腹が鳴った。

 タレもできたから、二度目を揚げてしまえばいいが。

 確かめた時計は六時半、夕飯はいつも七時だから問題はないが……まあ、この程度はしてやってもいいだろう。ごはんは、誰にとってもおいしい方がいい。遅れて来るらしい清一郎のためにいくつか取り分け、高温にした油で残りを揚げた。

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