第3話 ホワイトベースでの出会い
私の以前の生い立ちが私の生き方にどのような影響を与えてかと言う事に関しては、先ほどお伝えした通りです。ジャーナリストとしての私の仕事は検索をすればすぐにわかるでしょう。ここからは、セイラさんやアムロやブライト、そして惜しくも私達が失った戦友であるハヤト、リュウ・ホセイと出会ったホワイトベースに初めて乗った時の話をさせて下さい。
あの時私は、可能な限り、軍隊へのコミットを避けるつもりでした。なにぶん私は、前世の記憶として80年余りのジャーナリストとしての記憶がありますから、将来は日本にどうにかして行き、日本でジャーナリストになるつもりでした。そうすればジャーナリストとしてのアドバンテージどころか、宇宙世紀になっても発見されていない秘密文章などの在処も私はわかっていましたから、いくらでも活躍できると考えたのです。ですから、あの時セイラさんに「軟弱者!それでも男ですか!」と言われた時、本当にびっくりしました。人類が宇宙に進出する時代になっても、貴女のような古風で毅然とした女性がいるとは思わなかったのです。
しかし、貴女にきつい平手打ちをされた時、私は長い人生経験でしか得られない感覚で、ある事に気がつきました。この女性は生まれながらにして高貴な血筋であり、先天的な精神の気高さを持っていると。
なぜ私がそう感じたか、理由を明確に説明することはできません。しかし、私が子供の頃は、体罰などあるのが当たり前でしたし、親も教師も警察も近所の人も、子供を多少の体罰で躾けると言うのは何一つ悪いことであるとはされていませんでした。当然私も何度も親や教師から体罰を受けたのですが、貴女のあの時の立ち居振る舞い、身のこなし、物腰は、私が実際に見た野蛮な大人達とは明らかな違いがありました。強いて言うなら、相手よりも高い立場に立ちながら、その精神においてどこまでも対等であろうとする、本当の意味で高貴な精神の持ち主しかにしか出し得ない、勢いとでも呼ぶべき何かが、貴女にはありました。私は正直、貴女に殴られた時は妙だなと思いました。リベラルで何事も対立を避ける地球圏コロニーの文化の中で、貴女の鮮烈な精神の発露は旧世紀の日本を生きた私にとってこの上なく懐かしい物でした。
しかし、そんな精神を持った人間が、あのコロニーと言う人工空間の中で生まれ得る物であろうか。この人は宇宙育ちではおそらくないはずで、それもどこか高貴な血筋の生まれではないか。人が持ちえない人生経験に加え、ジャーナリストして数えきれない程の政治家、有力者を間近に見てきた私は、直感的に貴女の正体を捉えました。あとはその正体の裏を取れば、私の宇宙世紀でのジャーナリスト活動は17歳にして華々しく幕開けとなる。あの時密かに私はそう計画していたのです。
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