宇宙に田原総一朗
第2話・【銀牙系】織羅・レオノーラ〔脳髄惑星〕
二つの星雲が交差衝突している【銀牙系】──巨大な眼球型の衛星級宇宙船【極楽号】の、船橋でバグ・フリーダムのガンファイター。
織羅・レオノーラはヒマを持て余してアクビをしていた。
「ふぁあ……ヒマ」
先端が白銀色に変色した、背中まで伸ばした赤い髪をバンダナで束ねた箇所はキツネの尻尾のように見える。
バグ・フリーダムの無法者、銀牙系屈指の大富豪『織羅家』の三女、レオノーラの今の格好は。
ブーツを履き、脚の片側だけがショートパンツのように短い、特殊加工のデニムを穿いていて。
太モモのレッグホルスターには、黄金色に輝く大型の光弾銃『レオン・バンドライン』
デニムと同様の特殊加工が施された、シャツとカウガールハット。
少しオシャレな銀色の防光弾ベストを着ていて。
片腕には肩から指先まで、大型銃の光弾発射時の衝撃を緩衝したり、各種装備が内蔵されたガンアーマーが装着されている。
宇宙を進む極楽号の船橋で、収集した情報や目安箱システムに飛び込んできた。銀牙系内の助けを求める人々からの、惑星声をチェックしていた。通信&諜報総責任者で、暗号解読と古代文字の解読を得意とする『男ディア』がレオノーラに言った。
「レオノーラさま、奇妙な信号が、極楽号の目安箱でキャッチされています」
ディアは周期的に少女になったり、少年になったり性別が変化する。
「奇妙な信号? どんな?」
「助けを求めていると言うよりは、挨拶のような」
「発信元は?」
「アサマデ星系です……ほとんど何もない、恒星が一つあるだけの星域で。確か砕けた血球の残骸小惑星が一個浮かんでいるだけの星域のはずです」
「小惑星の名前は?」
「小惑星【タハーラ】」
「ヒマだから行ってみますか……カプト・ドラコニスさん、極楽号の進路をアサマデ星系へ」
極楽号の航行総責任者で、東洋竜頭の竜人種族。
口から火を吹く『カプト・ドラコニス』は。
「あいよっ!」
と、アサマデ星雲に向けて舵をきった。
アサマデ星雲に跳躍航行〔ワープの一種〕でやって来た、極楽号クルーは漆黒の宇宙空間に浮かぶ、巨大な脳髄を見た。
レオノーラが驚きの声を発する。
「何あれ? シナプスが発達した脳ミソが宇宙空間に浮いている」
検索していたディアが言った。
「一種の臓物空間ですね……あの脳髄は、小惑星を内部に取り込んで成長を続けています……信号の解析終わりました『田原の脳髄』? 小惑星の表示名称が【タハーラ・ベイジュ】に変化した?」
脳髄の衛星軌道上を銀色の宇宙服を着た、人型の生物が周回していた。
顔は銀色に反射している顔面カバーで、確認できない。
宇宙服の内部を、スキャンしていたディアが言った。
「内部の生き物は、乾きモノになっていますね……スルメか干し魚のように、その乾いた生物が田原?」
その時、船橋の扉が開いて憑依体質のイカ巫女少女、横髪がイカの触手で口元を包帯マスクで包んだ『亜・穂奈子三号』が、何かに憑依されている口調で呟いた。
「こんばんは、田原総一朗です」
「うわぁぁ!? 穂奈子に田原総一朗が憑依した!」
「さあ、朝まで生討議で、口から何かを論客に向かって飛ばしましょう」
慌てるバグ・フリーダムの織羅・レオノーラ。
「ムリムリムリ! ボクには難しい政治や経済や世相の話しはムリムリムリ! アサマデ星系から緊急離脱! 穂奈子から憑依した田原総一朗が離れる座標まで! 早く!」
逃げ出した極楽号が、穂奈子の体から田原総一朗が抜ける、座標まで跳躍撤退する。
落ち着いた船橋で、ディアがポツリと言った。
「ちなみに、銀牙系の多くの種族の平均寿命はニ百歳ですから……百歳未満は、まだまだ壮年です。
ワクワクな気分と、新たなチャレンジをする気持ちを持ち続けている限りは、脳力と心は壮年期ですね」
宇宙に田原総一朗~おわり~
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