第57話周防国と長門国




村上水軍が敗れたことで、周防国すおうのくに長門国ながとのくにへ上陸することが容易く出来た。

今川水軍と本郷水軍が上陸作戦を一手に担って、船の運航をしている。


今回本郷水軍は、兵を大量に上陸させる船を開発。

23隻程の上陸船が兵を乗せて向かっている。


「あの砂浜がいいだろう」


「船長、了解しました」


船底の浅い船が、砂浜にそのまま乗り上げた。

その途端に前方が前に倒れ込み、そこから兵が砂浜へ雪崩れ込んだ。


「敵が居ないか確認しろ!!」


「ぐずぐずするな、さっさと降りろ。こらーーそこで嘔吐おうとするなーー」



毛利軍は、石見と安芸の国境に兵力を集中し過ぎた。



最初に上陸したのは周防国。

手薄になった城を攻略することは既に決まっていた。

真っ先に狙われたのは高嶺城こうのみねじょう


ここは、もともとが大内氏の詰の城として建てられた城だ。

大内氏の最後の拠点となる山城だった。その為にろう城に適した城で、攻め難い。

今は毛利の城となっている。



すでに鵜殿長照うどのながてるの軍勢が取囲んだ。


城を守っているのは、数百人。


「皆!!打ちかかれーー。抵抗する者には、地獄を見せてやれーー」


寄せて来る軍勢に立ち向かう弓隊は、呆気なく火縄銃の餌食となった。

門に、かぎ爪がくくられたロープが投げ入れられて、ロープをよじ登り門の上から火縄銃で撃ち始めた。

そんな撃ち手が3人6人と増えて、何度も撃っている。

そして、その1人が内側に下りた。

すぐに門が内側から開いた。


一斉に兵が突入、次々と門が破られ。

本丸に突入した時には、数人が自害した後だった。


高嶺城は落ちた。




松井宗信まついむねのぶが長門国へ上陸したのも、2時間遅れだった。


勝山城を目の前にして、降伏勧告こうふくかんこくの使者を送り込んだ。

しかし、門が開いた瞬間に、その使者の頭部が投げ出された。


双眼鏡でのぞく松井宗信は、怒鳴っていた。


「なんて奴だ。使者を殺すなんて。あんな奴は容赦なく殺してしまえーー」


その号令で軍勢が動いた。その動きは早い。

一斉に四方から軍勢が攻め入った。

ここも兵数が少なく、ろう城など無理なことだった。

城内に攻め入ると、1時間も掛からず終わってしまった。



そして、石見へ侵攻。

津和野城つわのじょうを包囲して、伊賀忍者の案内で本丸の後ろから攻め入った。

この津和野城は、連郭式山城れんかくしきやまじろで前方方向が防御力が強いタイプだ。

しかし、本丸の三方ががら空きで、デメリットがある。

しかし、崖などの自然に守られているかたちだ。


それでも見張りは居たが、伊賀忍者によって倒されていた。


しかも忍者が垂らした縄梯子で、兵たちが次々の本丸へ流れ込んだ。

油断していた毛利兵は、奇襲されたかたちになり本丸が落ちた。


門で戦っている毛利兵から、「なぜ本丸が落ちたのだ」と唖然としている。

そして、諦めて降伏をしている。




俺は、そんな光景を望遠鏡で見ていた。


「殿、我々も行かなくていいのですか」


「ここで、手柄を奪ったら恨まれるぞ。それに終わってしまったよ・・・」


「それがしは、戦いたいです。なんとかならないですか?」


「本郷家は、十分に手柄を立てたよ。ここは見守るのが一番だ。ほら毛利軍がやって来たぞ。しかし急いで来たみたいだな、相当に疲れ果てているぞ」


「すぐに攻めてきますか?」


「あの状態では無理だな。望遠鏡で見てみろ」


「あ!陣を張っていますね」


「松井に早く知らせろ。前方の津和野城しかみていない、そんな性格の奴だ」


「はは、行ってまいります」


そう言って、そそくさと走りだした。


「皆!!毛利を休ませるなーー、ライフル隊は撃って撃ちまくれーー」


ライフル隊は、各々おのおのが撃ちやすい場所を確保して撃ち出した。


「やったーー、大物を俺様が倒したぞーー」


「俺もやったぞー」


そんな奇声がライフル隊から聞こえてきた。

どうやら確信があるのだろう。



そうなると毛利軍はあわただしくなってきた。


火縄銃では、届かない場所に踏み止まっていたはずなのに、武将クラスが次々に倒されてゆく。

指揮系統が混乱してしまい。ただ逃げ惑っていた。


そして毛利家が陣を張ろうとしていた場所へ攻め入った。

俺がそこに到着した時には、すでに戦は終わっており、武将の首実検も終わっていた。


「殿、吉川元春きっかわもとはるを討ち取りました」


小早川隆景こばやかわたかかげを討ち取りました」


なんと、毛利元就もうりもとなりの次男と三男を討ち取ったことになる。

『三本の矢』の二本をへし折ったことになる。



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