第56話村上水軍




山陰地方の進攻は順調だった。

快進撃が続き出雲も手中に収めた。


今は石見まで進攻して、火縄銃が一斉に放たれた。


「バン、バン、バン、バン」と絶え間なく鳴り響いた。


火縄銃の脅威きょういに、敵兵が驚き撤退して行く。

石見を手に入れて、井伊直親は「でかした」と叫んでいた。


しかし5日後に、毛利が攻めてきた。


「何故あのように、毛利軍が多いのだ。岡部様と菅沼様は何をしているんだ」


「殿、安芸あきの境で進攻が止まったままだと、伝達を受けました」


「なんだと・・・岡部様と菅沼様は、まだ安芸に入ってないのか・・・約束が違うでないか・・・」


余りにも悔しさで、椅子を蹴り倒していた。


「折角、石見を手に入れたのに・・・」


防衛戦に徹するしかなかった。

毛利側も火縄銃の音にも慣れたのか、例の竹で製作された盾で前面に出して来た。

垂直に当たれば、それでも貫通して被害も出ていた。

今度は、竹の数を増やして2人で盾を持って移動している。

移動スピードにも限度があるが、それでも向かって来ていた。

それでも死亡率はぐっと下がっている。


毛利も何度も何度も猛攻撃をして、ある一定の距離までは近づいた。

しかし、そこから先には進めなかった。貫通して被害が多く出てきた。

俺のコピー火縄銃と火薬の為、威力と射程距離がいいのだ。


まさにどちらも、攻めあぐむ事態だった。




山陽方面は、進攻が出来ないのは理由があった。

どうやら瀬戸内海を支配する村上水軍に手こずっている。

やはり瀬戸内海の覇者はしゃで、今川水軍も敵わない。

海の流れに長けていた。


それに陸上の補給物資が海から上陸した兵によって奪われていた。

海からの補給も出来ない有様だった。

反対に船を取られている。


油断していると、後方の備中の城が落とされることもあった。

なんとか取り返したが、そのせいで海岸に軍勢を分散させるムダなことまでさせられていた。


本当は四国からの水軍を回せばいいのだが、ことごとく沈めた為に造船中であった。



その為に、本郷家に新たな通達が舞い込んだ。

『村上水軍を攻め滅ぼせ』



その為に、なばな・はばなの同時期に造船した双子的な駆逐艦が出向く事となった。

そんな駆逐艦2隻の後を続くように、沿岸海域警備艦えんがんかいいきけいびかん7隻が続いている。

この沿岸海域警備艦は小型で高速の艦で、装備を交換することで救助艦にも対応出来る艦だ。

今は、機銃を前後に装備されている。


播磨はりまでは、補給船団を守るように沿岸海域警備艦4隻が護衛。


なばな・はばなと沿岸海域警備艦3隻が、村上水軍の勢力拠点の芸予諸島げいよしょとうへ向かっている。



「船長、作戦の準備をするように」


俺は目を細めて、遠くの海を見ていた。


「聞いたか、早く持って来い。ボートも下ろせ」


なばなから手旗信号で他の艦へ伝達が行なわれた。


「船長、敵がやって来たぞ。手はず通りに頼む」


「任せて下さい。野郎どもてきぱきと済ませるぞーー」


「了解しました」


備え付けられた小型ボートに荷物を放り込まれた。

続いて15名が乗り込み、小型ボートが下ろされてゆく。

下ろされた小型ボートからエンジン音がして、駆逐艦から離れだした。



小型ボートと沿岸海域警備艦が、村上水軍の船に向かって発射を開始。

船から白い煙が見えだした。

この煙を吸った者は、目眩めまいが起きたように次々と倒れた。


麻酔弾が打ち込まれたのだ。

この麻酔ガスは無色無臭だが、ガスの流れを見る為に白く見えるようにしている。


次々に船に向かって打ち出された。

村上水軍は、なす術もなかった。


そこに、今川水軍の船が近づき乗り込んだ。

村上水軍の船を大量に捕まえる事が出来た。


「これで、船の心配も解消されたな。船長、小型ボートを回収したら芸予諸島へ行こう」


「今度は、攻撃してもいいですか?」


「まあ、いいだろう」



芸予諸島では、分散するように3ヶ所に分かれていた。

因島村上いんのしまむらかみが真っ先に猛攻撃を受けて落ちた。


次は能島村上のしまむらかみの位置だが、瀬戸内海航路の最も重要な航路の一つに存在していた。

能島と鵜島とが海の流れをさえぎるような位置であった。

その為に、干満時には激しい潮流を生み、渦巻く急流は天然の要害にもなった。

そして能島には、能島城が建っていて防衛力が高い。

本丸、二の丸、三の丸、出丸などがあり、水軍城としても大きい。

しかし2日後には降伏をして来た。


俺は、麻酔弾を打ち込む作戦を提案したが、船長は「ここは、海の男に任せて下さい」と譲らなかった。

能島城では水を得ることが出来ないので、鵜島や木浦から補給していた。

その補給が断たれて、度重なる攻撃で諦めた。

どうやら能島城の水事情を知っていたようだ。


最後の来島村上くるしまむらかみには、来島城が建っていた。

しかし我が水軍が来ると、落とされる前に降伏をして来た。

来島村上は、海上まで張り出した建築物が多く存在していて。

そこを生活基盤にしていて、漁業も行なっていた。

煙りと爆音で2ヶ所が落ちてダメだと悟ったと、来島の者が後で語っている。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る