第50話地方への進攻




小田原城攻めが終わり。

来ていた大名が帰ってから来た大名は、一切が殿に会うことが出来なかった。

そして、その場で領地を明け渡すように迫られた。

怒ってそのまま帰る者もいるが、そのまま残り誠心誠意に平謝りして半分にして貰っている。

中には、3割の領地に甘んじる場合もあった。


それでも滅ぼされるより良かったかも知れない。




今回の家臣団の褒美には、小田原城攻めに来なかった大名の領地が与えられた。

与えられたと言っても、向こうは素直に引き渡してくれないだろう。

褒美が欲しければ実力をみせろ的な感じだ。

なので自ら奪い取る必要があった。

その為にも兵力は貸し与えてくれるらしい。



そして今回の領地没収には、もう1つの意味があった。

朝廷と公家の預所あずかりどころの復活だった。

昔風なら荘園だ。

今回没収される領地を、朝廷での話し合いで事細かく決められた。

なので、今回の没収は勅命ちょくめいであった。

天皇の命令と言う大義名分が出来たのだ。


京の近くの領地をあえて避けた。遠くの領地を朝廷と公家の預所と定めた。

公家には遠くに成る程、預所が大きくなるメリットを力説することでコロッと騙されていた。


何故なら、そこも今川が一括で管理して、米や銭に変えて献上する形に誘導したからだ。

朝廷や公家に恩を売る為と、弱みを握る為だ。

今川氏の要求に反対するような場合には、何かと理由をつけて献上を遅らせる作戦。




朝比奈泰能は、出羽国の大名の最上氏を成敗する為に出発している。

冬になるまでに成敗すると、息巻いて2万の軍勢で向かっている。


成敗が成功すれば、晴れて大名になれるのだ。

泰能に付いて行く中には、浪人も多数が参加している。

その数5000人。そして火縄銃の数1000丁が一緒に運び出された。

どうやら出羽国の近隣大名にも、書状を送りつけて味方しろと迫っている。

近隣大名は、どのような行動をするか楽しみだ。




中国地方は、進攻される噂で身動き出来なかった。

えらいとばっちりを受けた被害者に似ている。

しかし、書状を受け取った事実は変わらない。

公家を通して、許しの書状が来ていたが一切受け付けていない。


反対に、公家の預所が少なくなると言うと、公家は大人しくなっている。



その為に、大勢の家臣団が共同の軍勢で出発している。

岡部元信は、1万7千の軍勢。

菅沼定盈は、1万5千の軍勢。

飯尾連龍いのおつらたつは、1万1千の軍勢。

井伊直親いいなおちかは、8千の軍勢。

この井伊直親の親(直満なおみつ)は、井伊家の家老の嘘によって今川義元に殺されたんだ。

後で嘘だと分かり許された過去があった。

今川義元も、それに対しては充分に後悔していた。

なのんで、今回の絶好のチャンスを用意したのだ。


なので井伊直親は、特に意気込みが凄かった。


「われに従って付いて来る者には、充分な地位を約束する」と触れ回った。


それに中国地方の進攻には、重要な役目もあった。

石見銀山を直轄地にする役目だ。

世界遺産になる程の石見銀山は、銀生産量が半端ない。



俺が与えられたのは、陸奥国の青森地域と北海道の蝦夷えぞだった。

北の寒い地域で、家臣団が見向きもしなかった所だった。

俺の領地からも離れた、飛び地になってしまう。

しかし、北海道は面積も大きく手付かずの大地が広がっている。


昆布も気兼ねなく収穫が出来る。

毛蟹も欲しい。それならば冷凍庫が必要だ。

長期保存と鮮度を保つ為に、温度もマイナス18度以下まで下げる必要がある。

俺の水魔法でも急速冷凍も簡単なのだが、錬金術での冷凍庫は難しい。

更なる開発が必要だ。


急速冷凍するには、全体に一気に温度を奪い取る。

そしれ全体を冷気にさらし続ける必要がある。


魔法なら簡単なのに、いざ錬金術で再現するのは難しいぞ。




「殿、書状を携えた明智光秀殿が出航しました」


「何処だ・・・」


「殿、あちらですよ」


「静香は目が良いな。あんなに小さくなっているのに見えるのか?」


「うふふふ」と手で口元を押さえて笑っている。


あ~あ、静香は可愛いな~。



成る程、白浜城の天守閣から駆逐艦紀伊が、海をひた走っているのが見える。


それに続くように、港では駆逐艦なばなが出航してゆく。

山田のおっさんに書かせた書状には、すみやかに本郷の配下にくだれと書かれている。

小田原城がどんな惨状になったかも、細かく書きつづった。


所領は安堵するが、当主は剥奪して臣下になるのだ。

北海道は、貿易を通してぼちぼちとなれさせて行けばいいだろう。



それにあの2隻には、充分な武器も積み込んで、明智光秀に初仕事を任せた。

反抗する者がいれば、そのまま戦って来いと言っている。



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