第38話ヨットと学問所
今まさにヨットが作られようとしている。
俺が知っている知識では、完璧な物は作れないが、それらしき物になるだろう。
簡単に作れるヨットタイプの小型船から始まった。
マスト1本に対して、三角の帆が前後2枚、そして後ろ帆は稼動する仕組みに出来ているだっけ。
そして和船との違いで言われるのが、竜骨が有るかだ。
船の前後方向に一本の竜の骨のように太い木材を使う。
そして、たしか船底には平べったい板が生えていたはず。
重りの役目にもなり、風の風圧で風下に流されない役目が有るんだと聞いた覚えがある。
ようは倒れない仕組みだ。
出来上がったヨットで、俺のおぼろげな操作方法をレクチャーしてから試させた。
後方では舵をきる人間がいて、風で傾いたら上半身を乗り出してヨットが倒れないように重心移動をしている。
ああ、ひっくり返っていた。
最初はそうなるだろうと予測していた。
人が溺れないように、救命具を付けさせて正解だった。
ながしまの甲板では、双眼鏡をのぞく船大工や船員があれこれ話していた。
「お~い!大丈夫かーー」
手を振って、大丈夫だとアピールしている。
「あの場合は、もっと早く帆の操作をしないと」
「それもあるが、風を読みきれてないぞ」
ああだこうだと話していた。
これだと3本マストの帆船が作られるようになるのに、いつ頃になるだろう。
しかし、この計画を諦める訳にはいかない。
駆逐艦は、俺しか造船出来ないのだ。
水軍を強化するには、西洋の帆船が有効なんだ。
それに遠い海洋に出るには、必要な知識と技術だった。
将来は灯台も作って、夜間の夜行もしたい。
それと
この道具を使って、天体と地平線の角度を調べる。
そして、時刻で経度を決定する。
その為に、日本に来た南蛮船からなんたら標準時の航海に必要な物など、根こそぎ忍者隊が盗んできた。
それを真似して、作ったのが羅針盤や六分儀だった。
まだ完成出来てないのは、時計だけだ。
その為に、歯車の知識やゼンマイの知識も教えた。
後は職人に手にゆだねた。
なので、携帯の時計も作ってくれるだろう。
それに星の観測も始まっている。
星座を、季節ごとに観測して共通の固有名詞を与えている。
そして、日本地図と海図の作成も始まっていた。
「あの山の山頂とあの大岩で位置を測ってくれ」
「分かりました船長」
「時間は丁度、12時だ。田中、ちゃんと記録したか」
「はい、記録してます」
その近くでは、重りの付いたロープを船上から垂らしていた。
「1メートル・2メートル・3メートル・・・・・・10メートル半だな」
紀伊や伊勢や志摩へと作成中だった。
そんな、知識改革がいつしか広まったのだろう。
遠くから知識に飢えた人々がやって来ている。
その為の学問所も作った。
そして、その学問所の中の1室では、旋盤が分解されていた。
「成る程、このネジなる物で固定しているのか?」
「これが歯車で動力伝達を可能にしてる・・・凄い」
「よく見ろ。このギアで減速や増速、回転軸の向きや回転方向を変えたり、動力の分割なども行なわれる」
「これギアなのか・・・」
そして、違う教室では座学が行なわれていた。
「いいか、歯数の比とピッチ円径の比は等しくなる。すると駆動歯車をア、従動歯車をイとして式で表すと次のようになる」
イの歯数/アの歯数=イのピッチ円径/アのピッチ円径=アの回転角度/イの回転角度=アの角速度/イの角速度=イのトルク/アのトルク
そして、違う教室では活版印刷がされていた。
「なんて綺麗な文字なんだ。木版と違った風格が感じられる」
「いいか、数学に使う教科書だ。しっかりと作れよ」
「分かってますよ」
教室の壁には、ぎっしりと活字棚が並んでいて、印刷される活字を1つ1つ取って箱に集めていた。
漢字の活字を減らして、ひらがなを多用していた。
漢字を使いだすと膨大な活字が必要だった。
隣の部屋ではエッチングがされていた。
椅子に座って、銅版の表面をカリカリと絵を描いている者も居る。
その奥では、2人してプレス機を通して版から紙に転写させている。
室内にはインクの独特の匂いが漂っていた。
エッチング法
防食処理を施した銅版の表面を針などで傷つけて、その後で
後はインク塗って拭き取った後に、紙とフェルトを載せてプレスで圧縮すると印刷される。
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