第33話丹波国




丹波国たんばのくには、京の都に近かった。

その為か都の政局に巻き込まれやすい国でもあった。


そして、山と盆地、また山と盆地と山が続く地形であった。

その土地土地で各地の国人が固い結束で結ばれて、治められているお国柄だった。


「朝倉殿、ここは朝倉の力を見せてもらいたいものですな。なにぶんに若狭国攻めに遅れた失態を補ってもらいたい」


山田のおっさんの嫌味が炸裂さくれつ


「分かり申した」


朝倉義景がガバッと立ち上がり出て行った。




「殿、鉄砲500も貸し与えて勝てますか?」


「なんとかするだろう。そうでなくてはこっちまで疲れ切ってしまう」



今、攻めているのは京に近い宇津城うつじょう

小さな石を積み上げた山城で、弓を構えて立上がった者に5発の鉄砲が放たれた。

3発は外れて2発が命中。その2発の1発が致命傷になって事切れた。


命中率が40%とは、初めてにしては良い方だった。

しかも、玉と火薬は充分に与えている。

それで勝てないはずが無い。



「殿、攻め入りましたぞ」


「やっと城に入ったか?」




丹波守護代内藤氏の八木城やぎじょうに攻め入ったのは、2日目の早朝だった。

忍者隊が門を開けて、見張り達は眠りこけていた。


そこへ一気に攻め入った。

呆気なく落城。


『丹波三大山城』と言われていたが、呆気ないものだった。




園部城そのべじょうは、外堀に守られて大手門・不明門・南門の3つの門があった。


我が本郷が大手門を軽く攻めて、1時間後に南門に朝倉勢が殺到して門を開けて進入。

一気に本丸まで攻め入った。


「複数で1人を相手しろ。まだまだ戦は続くと思え――」


城内に入られて、複数に攻め立てられて、ここも落城。




八上城やかみじょうは、険しい山の頂上に建っていた。


「殿、斜面が険しいく、そうとうな苦労が考えられます」



たしか、明智光秀と因縁があった城だ。

この戦場には、明智光秀は連れて来ていなかった。

惨い事に、明智光秀の母が・・・


明智光秀の母・お牧の方がはりつけとなり殺されたという松があるはずだ。

光秀は波多野家が降伏するのに、命の保証をする証として母を人質に出した。

しかし、信長により秀治兄弟が斬首されたことで怒った城兵が磔にして殺したんだ。


その母は、今は生きているが・・・なんとなく山城を見上げてしまった。



「殿、どうしますか?」


「夜にまぎれて忍者隊に例の物で眠らせろ。そして合図で夜に襲う」


「権六、聞いたか・・・」


民家の天井から「分かりました」と声が聞こえた。

山田のおっさんが、ギロリッと天井を睨み付けた。


俺には分かっていた。

もうそこには居ないことが・・・




暗い山の頂上に、松明の明かりが大きく左右に振られた。

合図だった。


簡易照明を手に持って、軍勢が山城に攻め入った。


眠りこけていた城兵は、ことごとく縛られて放置。

朝日が見えた頃には、ようやく目覚めたようで驚いていた。




八上城にて、俺は対面して話していた。


「殿、赤井・牧野の両名が挨拶に参ってます」


石野久兵衛いしのきゅうべいと話が終わったなら会おう」


「はは」


落城の知らせを知った者どもが、せ参じていた。

全面降伏を伝えると、うな垂れて承知した。

あまりにも落城に費やした日数が早過ぎた。


丹波の国人が連携して助ける暇も無かった。

次はおのれの番だと恐怖したのは仕方ない。



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