第20話今川の上洛




どうやら今川の殿様は、無事に上洛を果たした。


京を支配していた三好は、京には居なかった。

いち早く三好勢は戦うこともなく四国へ帰ったらしい。

それは、六角と戦っていた最中の出来事だった。



そんな中、堂々と今川の軍勢が京へ歓迎されながら入って行った。


そして俺が渡した、ふとんと銭を天皇や足利幕府に献上したのだ。

天皇や公家は、大いに喜んだ。



それなのに足利幕府と不味い雰囲気になったらしい。

足利義輝あしかがよしてるの味方だった、六角を滅ばしたのが原因。


たしか、ある何年間の間に足利義輝は三好に追いやられて、近江の朽木くつきに身を寄せていたはずだ。

そして、ようやく京へ戻れたのも六角が両者の仲介を務め、和睦わぼくさせたんだ。

だから六角に恩義を感じているのだろう。



そのせいで、なにやら嫌味を言われたらしい。

それも、足利義輝の家臣の前で・・・

1対1なら耐えられただろうが、皆が見ている前で言われたら・・・立つ瀬がない。


今川義元は、足利の親族の吉良家の分家だ。

足利義輝から上洛しろと手紙に書かれて、来てみればこれだった。

誉められると思って挨拶にうかがったのに、ねちねちと嫌味を言われたら溜まったものでない。


今川にとって六角は、上洛に対してすんなりと通してくれれば良いものを、抵抗したから滅ぼしただけだった。

それを今更、ねちねちと言われたくなかった。


どうやら泊まっていた寺で、家臣に不満をもらした。

本当なら当り散らしたい気分だったろうに、太原雪斎の教えで怒りを見せることを良しとしなかった。

そして回り回って、俺の所までその噂は伝わった。



それ以降、足利義輝の所へは行かなくなり、もっぱら天皇や公家の方へ行くようになった。


今川義元は、京をはじめて見て驚いたらしい。

公家の家の塀は、所々壊れていて、門も半分も燃えた状態でみすぼらしい光景ばかりであった。

何度もの戦いで京は衰退していた。

それを復興させる為の相談に、なんども足を運んだ。



俺の所にも、銭をどうにかするようにと手紙がきていた。


近江や伊勢と紀伊で戦いに明け暮れて駆け巡って結果。

金属に反応した俺は、埋蔵された金属を取り尽くした。

そのおかげで大量の銅が手に入った。


それを使って作った新銭を、もってけ泥棒がとののしって家臣に託した。

大量の銭に別れを告げた。


武藤一郎と竹中半兵衛が俺の名代として、1000人を連れて京へと出発。

それでも、半分の新銭は残ったので大切に使ってゆこう。




「殿、大変で御座います」


「なんだそんなに慌てて、なにが起きた」


「一昨日からの大雨で、熊野本宮に被害が出たそうです」


「それで、俺にどうしろと言うのだ」


「ここは、殿の心のひろい所を見せる時と存じます」


「銭を出せと言いたいのか・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


「持ってけーー泥棒がーー」




熊野本宮なら行った事があった。

八咫烏やたがらすが描かれたのぼりが目立っていたなーー。

足が3本のカラスらしい。

日本の神話に出るカラスで有名だと書いていた。


あの時は、別の場所に建ってたが、この時代では川の中州に建ってたんだ。

そりゃー大雨が続いたら、被害も出るだろう。



たしか、昔の天皇家が参拝したんだっけ。

どこかの道の駅でそんな説明を読んだことがあった。


熊野古道で世界遺産にもなってたなーー。



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