第14話長島への見学




伊勢の国のお百姓さんが、長島の田園を見学に来ていた。


「なんて大きさだ。おらの田んぼがみすぼらしくて情けねー」


「うんだな~あ、こげん田んぼがきれいだと・・・米もうまかー」


合金製の水車が、水を汲み上げて水路に流れてゆく風景にも驚いている。


「こげんな物が水を汲むのか・・・」


「川の流れを利用して、汲み上げる仕掛けでその回転を更に利用して発電もしてるよー」


「発電てなんだ」


説明していたのは、百姓の三男坊だった佐助で、今は水路見回り組の役人。

水車小屋の中のスイッチを入れると、水車小屋の中がパッと明るくなった。


「なんだね!急に明るくなって・・・?」


「殿が言うには、LED照明と言う物らしい。ほれこれが光の照明具だ」


「ほう、ほんとだ。たまげただ」


「これが照明か?おらが村にもできるか?」


「ああ、協力してくれたら夜も明るい下で過ごせるよ」



切馬鍬きりまんが・足踏み脱穀機だっこくき唐箕トウミ・乾燥機なども見せてうならせていた。


「切馬鍬は、田んぼの土をさらに細かく砕く道具だ。田植え前の田んぼを平らにならす道具にもなるんだ。牛や馬に引かせて使うから楽だよ」


「おらが村は、そんなのいねー」


「ならば、殿に言っておくよ。馬か牛を手配してくれるはずだ」


「こっちの唐箕は、このハンドルと言う物を回して風をおこして米とゴミを分けるんだ。上から米を入れると、重たい米は下に落ちて、実っていない軽い米やゴミを吹飛ばす便利な道具だ」


「それも村にくるのか?」


「ああ、それぞれの村へいくよ」




温泉施設の湯治場で、支給された食料を使って料理を作っていた。


「なあ田吾作、おらもあんな暮らしができるだかー」


「ああできるよー。だから村に帰って納得させねばならん」


「田吾作は口がうまいからたのむべー」


「まかせろやー、おらがうまいぐあいに話すべー」



七輪で焼かれた焼き魚と味噌汁とご飯を、鱈腹たらふく喰っていた。

あっちこっちのお百姓さんは、希望に満ちていた。

そして、後の伊勢の百党の結成の瞬間だった。


お百姓さんだけの組織で、お百姓さんの為に一致団結して運営された。

今で言う農協みたいなものだった。




納得した村々から、田園計画が進めることになった。

自己申告された田より大きくした田を与えた。

その為に田を新たに広げることになった。


水路もまんべなく行き届き、水問題も起きないだろう。

そして、水害が起きないように堤防も作った。

その堤防沿いに、桜の苗木を植えていった。


後に伊勢の桜と言われるようになり、観光スポットにもなってゆく。


そして検地も同時に書き残されて、戸籍も同時に行なわれた。

山田のおっさんが言うには、土地台帳と言うらしい。



そして、大きな道も作った。

水はけも良くして、泥濘ぬかるみが出来ないように工夫している。

迅速に大軍を移動できるだろう。

それに商人が、物を運ぶのも便利で伊勢の発展にもつながる。



そしてこの戦国時代に似つかわしくない電柱が立っている。

ついでに、通信も一緒に繋げている。

通信と言っても「ツートトツー」のモールス信号で、簡単な仕組みで出来ている。

時間があれば電話に発展させたい。

将来は無線も考えているが、やることが一杯あって手が足りないの現状。




山では、しいたけ栽培が始まった。

木屑きくずのブロックを作り、菌を念じて作り出して付着させてゆく。

直射日光が当たらない15~20℃程の場所に置くのがいいらしい。

菌を作り出した時に、しいたけの栽培に適した知識が見えた。

余りにも万能過ぎて、驚くしかない。


1日に2回ぐらい霧吹きで表面が湿るぐらいにする。

そして芽がついたら10日~15日で収穫だ。


そして、天日干しにして天日干し椎茸にする。

案外、簡単に作れてしまった。


天日干し椎茸の良いのは、常温で数か月の長期保存ができること。

そして、椎茸の中の物質が紫外線を浴びるとビタミンDに変化。ビタミンDの量は、天日干し前のしいたけと比べて10倍以上にもなる。

ビタミンDはカルシウムの吸収率を上げて骨を丈夫にしてくれるので、骨粗しょう症の予防や妊娠中の女性にもおすすめなのだ。

それに椎茸にはもともと、うま味成分があって、更に干すことでアップする。


これは、俺が見ていて透明の表示に出てきた説明文で、色々なことを教えてくれる。

山田のおっさんに渡す時に、同じ説明をした。

山田のおっさんは、その説明を武器に喜んで商人に売りつけに行ってしまった。




そして、伊勢の国の大改革も2ヶ月でようやく終わった。

お百姓さんは協力的で順調に進んだ。




一部の国人が一揆をあおったが、お百姓さんは見向きもしなかった。

反対に報告までしてくれて、お礼に銭1貫文を与えた。

喜びながら村人は帰っていった。


山田伊助が率いる捕縛隊によって、捕り物が起きた。

麻酔銃の制圧で呆気ない捕り物だったらしい。

しかし、倒れる時に打ち所が悪く、死者1名が出てしまった。


「その方らは、殿の慈悲を無碍むげにした事は許されると思ってか!!よって伊勢の国から追放。戻れば即刻死罪と思え」


取り敢えず国人だったので、俺が定めた国法によって伊勢の国から即刻追放した。




いよいよ、1ヶ月後だ。

山田のおっさんも、家臣の戦闘訓練や内政に忙しい。

誰かいい人材はいないかな・・・



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る