第10話竹中重治




たしか長島には温泉があったような気がする。

あっちこっち探し回った結果、ようやく見つけた。


たしか、鉄管を突き刺して、切削用の物をガンガンと上から差込んで、引っ張り出したパイプから土を取り出していた。

そんな動画を見た事がある。手掘りの井戸動画だ。


しかし、俺はそんなことはしない。

作った鉄パイプに土魔法を使えば、地中に自然と埋まってしまう。

そして、新たな鉄パイプを錬金術で繋げる。

そして、地中に更に埋める。それを何度も繰り返した。


温泉にようやく当たった。

じわじわと鉄パイプから溢れ出てくる。


俺の目では、源泉温度は60度ぐらいの高温。

そして、泉質はナトリウム-炭酸水素塩温泉 (低張性・弱アルカリ性)

湧出量は500t/日ぐらいかな。


早速、温泉施設を作るぞ。

両手を地面に付けて、風呂をイメージする。

ドドドドと地面がせり出してくる。

そして、大きな岩が出てきた。それも1つ2つでなく無数に、俺が想像した岩風呂が完成。

水漏れしないように固まっているから大丈夫なはず。

源泉からパイプで引いて、岩風呂へと注いでみる。


順調に温泉の湯が流れている。

まだまだ一杯にならないが、その間に排水路を作ろう。

近場の川まで1キロだが、頑張って作ってゆく。


あと少しなのに、あ!やばい、もう流れてきた。

後500メートルを必死に頑張って作り終えた。



あれ!源泉のパイプと排水出口が近すぎて、湯の温度がばらつきが酷い。

離れた所は35度ぐらいだが、源泉近くだと50度。

あそこに入ったら火傷しそうだ。


俺は温めの温泉が好きだからいいか・・・

早速入ろう。


「はーぁ、癒される」


何ヶ月ぶりの風呂だろう。それにしても広い岩風呂になった。

気合が入り過ぎて、1000人が入れる岩風呂が出来た。


後は大工達に、作らせよう。

目隠しの囲いや脱衣所と岩風呂の一部に屋根が欲しいな。



「殿、何をしているのですか?」


「温泉に入ってるよ」


「これが、温泉ですか?成る程、温かいですな。いやいや、美濃から家臣になりたいと竹中重治たけなかしげはるなる物が一門を連れて参ってます」


「竹中・・・竹中半兵衛たけなかはんべえはその中に居ないのか?」


「それは、それがしには分かりませぬ」


「今、入ったばかりだから、その人を連れてきて」


「え!ここへ」


俺が、頷くと武藤は諦めて「竹中重治を連れて参れ」


「では、行って参ります」と八郎太が走ってゆく。


「殿、それがしも入っても・・・」


「いいよ、これが手ぬぐいだ。向こうは熱いから気を付けて」


「熱いのは好きです」


なぜか、熱い所へドボンッと入って、「ギャー」と言ってこっちに逃げてきた。


「だから、熱いって」


「死ぬところでした、はあはあは~」


仕方ない、湯の中で回復魔法を掛けてやった。


「あ~癒されますな~」


それは違うだろう。




しばらくして八郎太は、大勢を引き連れて来てしまった。

俺の感覚だと、竹中重治1人でいいんだよ。

何故、一門を連れてきた。女子供も居るぞ。


ほら見ろ、武藤の顔が赤くなっている。武藤は怒っているぞ。


「殿、この者が竹中重治です」


「高い位置から申し訳ありませぬ。竹中重治と申します」


「家臣になりたいと聞いたので、この武藤に従ってください」


「すると、家臣にしてくれると・・・」


「その一門に、竹中半兵衛が居ませんか?」


「半兵衛は、それがしのことです」


「え!・・・」


何それ、訳分かんないぞ。だから戦国時代の武将の名はややこし過ぎるんだ。

どんだけ名が有るんだ。たしか幼名もあるだよ。


たしか、竹中半兵衛は肺結核に犯されていたはず。


「こんな格好でわるいけど、手をだしてみてくれるかな・・・やはり病気ですね。今、この瞬間に竹中半兵衛の病気が完治したはず」


「うお!嘘のように痛みが無くなりました。斎藤義龍を殺さず捕まえたあなたには、天命があると思っていました。どうか一門ともどもよろしくお願いします」


なにか半兵衛は、大事おおごとのように言っているが、天命か・・・そんな考えも出来るのか?



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