第9話駆逐艦もどき




稲葉山城の戦いで、俺の家来の戦いが目立っていたらしい。

一突きで鎧ごと仕留める姿は、敵味方を震えさせた。

そして足軽の活躍が凄かった。

武士も活躍していたが、足軽の活躍が特に目立っていた。



数日後に銭が貰えると喜んでいる。

武士の中には、槍の方が目立つなーとぼやいていた。

俺の褒美は、銭の褒美と伊勢方面の領土切り取り自由だった。


又も太原雪斎の企みだと思う。


今度は北近江の戦国大名、浅井長政あざいながまさの領土を狙っているのだ。

そして、浅井の次は近江の戦国大名・六角義賢ろっかくよしかたが狙いだ。

六角さえ倒せば、京都は目の前だ。

なんでも六角に手紙や人を送っていたが、上洛要請じょうらくようせいを拒否し続けてるらしい。

太原雪斎も諦めたようだ。その為の伊勢侵攻だと思う。



伊勢が狙われたら六角義賢も黙って見ていられない。

伊勢方面に兵力を残す必要があって、今川への兵力を出来るだけ少なくする作戦。

六角も分かっているが、仕方ないようだ。



「ちょっと待て、ここで休憩でもしていてくれ」


「殿、又ですか」


呆れた顔で俺を見ている。

家来たちは、俺が小便に行っていると思っている。

それは絶対に違う。


金属の反応がしたから、金属を取りに来たのだ。

この辺で間違いない。大量に反応がしている。


手を地面に付いて、土魔法を使う。

金属を取り出して、そのまま亜空間収納に収納。

5分程度だが、大量に金属が手に入った。


草を分け入って、家来の所へ戻って来た。


「殿、もう5回目です。今度は許しませんぞ」


「分かった、分かった」


充分な金属が手に入った。色々と作りたい物があって色々困っている。

まあ、そんなことはいい。早く帰って色々作りたい。

少し歩く速度を速める。


「殿、早よう御座います。足軽が付いてこれませぬ」


なんだよ、休憩は充分取っただろうに、もたもたした奴らだ。




暗鬼城に帰って来ると、鉄製の船に取り掛かった。

水門をしっかり閉めて、溜まった海水は亜空間収納に収納。


仮土台を作って、鉄板を作りながら曲げてゆく。

徐々に船底が出来上がり、雷魔法で電気溶接で繋げてゆく。

途中で困ったことが起きた。

スクリューの回転軸と船体の受け軸だ。

メカニカルシールのごちゃごちゃした仕組みが再現できるかが問題だ。


失敗してもいいからやってみた。

もうイメージ的に作ってみたが、果たしてこれで正解だったのか疑問だ。

軸を手で回してみたが、支障なく回る。

しかし、高速回転したらどうなる。


失敗しても作り直せばいいかな・・・

ドンドン鉄板を作って電気溶接してゆく。


どうにか駆逐艦級の船が出来上がった。

電気モーターも案外簡単に出来てしまった。

磁石が作れるかと心配したが、これも1発で完成させられた。


電気を溜めるバッテリーだが、錬金術を駆使すれば何となくのイメージだけで出来た。

今は俺から充電中だが、結構な電気が溜まっている。



そして俺は、昔の常識に慣れ切っていたようだ。

錬金術を駆使すれば、黒色火薬の木炭と硫黄、硝酸カリウム(硝石)が無くとも違う火薬が出来てしまった。

美濃で集めた金属や色々溜め込んだ物で、亜空間収納とリンクさせて錬金術を発動すればオリジナル火薬が完成してしまった。


稲葉山城で盗んだ火縄銃で試し撃ちをしてみることにした。

狙いはあの木でいいだろう。狙いを定めて、引き金を引く。

「バンッ」と鳴って火縄銃ごと爆発。


「ゴッホ、やっちまった。初めての負傷がこんなヘマな事になるなんて・・・」


体中が怪我だらけだ。急いで回復魔法を使って回復。

レベルアップしていなかったら、死んでいただろう。

回復が進むうちに、体に突き刺さった鉄の破片が徐々に押し出されるのが感じられる。

全身の破片がポロポロと落ちだした。

そして傷ついた傷が治り元に戻っている。


ジャージを洗濯にまわして助かった。スマホや財布はあの時のごちゃごちゃ騒動で紛失してしまった。

残ったのはジャージと下着と腕時計だけだが、今ので下着と腕時計がボロボロだ。

なんだか、大切な物を失くした気分だ。



それにしても半端ない威力だ。

それにしも着替えの着物を収納していて良かった。

裸のまま、家臣の前に出るのは恥ずかしい。


「殿、これは一体なんですか!!」


あの音を聞きつけて、武藤と数人の家来が見に来て驚いていた。


「心配ない。火縄銃の試し撃ちをしただけだ」


それにしても、この水門内は造船所のドックみたいになった。

もっと小さな船を考えていたが、目一杯大きな船を造ってしまった。


そうだな、ここをドックとして使っていこう。

亜空間収納の海水をドックに戻した。

一瞬に溜まる海水に、家来たちは又も驚く。


確認の為、船底まで行って見たが何処も水漏れが無い。

急いで甲板に戻って叫んだ。


「水門を開けてくれ」


水門に家臣が駆け出して、取っ手をぐるぐると回転させると徐々に水門が開き出した。



モータースイッチを押すと順調に動いている。

水門を出るとそこは広い海で、伊勢湾だった。

モーターの回転数を上がる。感覚だと30キロぐらい出ているかな。

これだけの速度が出れば充分だ。


後は大砲だが、あの火薬の威力から考えても、小型程度の物でも充分な気がする。



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