第8話斎藤義龍




久し振りの戦にかり出された。

山田のおっさんは長島に残して、武藤と100人程の家来で最後尾を歩いていた。


「殿、馬に乗らないのですか?」


「そんな小さな馬に乗ったら、馬が可哀想だろ」


俺は183と身長が高いし、体格もいい。

それに比べて、日本の馬は小さい。

俺は初めて見た時は、ロバかと思った。


なので俺は徒歩であった。

いつもの赤いジャージ姿に、左手にはバックラーを握っている。

右手には、金剛杖を持っている。

刀だと気合が入ると、ポキッと折れてしまう。

仕方なく折れない、六角の金剛杖を作った。

長さは3メートルもあって、自由に操れるように訓練も万全にこなしている。


馬上から武藤や数人の侍が、複雑な顔で俺を見ている。

後ろに付いて来ている足軽の手には、あの素晴らしい槍が握られている。

新規に銭で雇用した者達だ。鑑定して選んだつわもの達で、今回の戦で手柄を立てて欲しい。

俺は百姓を連れてきていない。


武藤の話でも、これくらいの人数でいいらしい。

まだ領地を治めて間がないからだ。




「そんな公の場に、俺が出てもいいのかな・・・」


「今川義元様からの命令です。拙者も同席を許されています。いざ参りましょう」


俺は末席に、ちょこんと座っている。


俺の実力を知っている者は、わざわざ挨拶をしてくる。

松平元康が挨拶に来た時には、注目を集めてしまった。

三河の一向宗のお礼を直に言いたかったらしい。


俺の読み通りに生臭坊主は、夜逃げをしていた。

寺の金目の物は全部持って行ってしまった。

それでも、松平にとってありがたいことだった。



なんか話が始まったようだ。

しかし、俺はここに集まった武将を鑑定で見ていた。

赤の●は無いが、ピンク色をしている奴が何人か居た。


俺を嫌っているのだろう。



「殿、終わりましたぞ」


え!もう終わったの、何も聞いてないよ。



後で武藤から聞いた話だと、美濃三人衆は既に今川に下った。

家老である安藤守就あんどうもりなり稲葉一鉄いなばいってつ氏家卜全うじいえぼくぜんの三家老だ。

それを聞いて、既に詰んでいる戦だ。



しかし稲葉山城は、攻め難い城だった。

斎藤義龍さいとうよしたつは、今はどんな気持ちでいるのだろう。



それで密かに特命を受けた。


山の絶壁を俺一人で登り、奇襲する作戦だ。

奇襲と聞けば、聞こえが良いがめちゃくちゃな作戦だ。


【クエスト発生 稲葉山城に一番名乗りをしろ】

又もクエストが発生している。

戦国時代に名乗りなんて、余り無いのにするしかない。


俺の家来は、手柄を立てさせたいので、前面の合戦に参加させている。

俺を見届けているのは、今川義元の側近の2人だけだった。


俺は、金剛杖とバックラーを亜空間収納に収納して、険しい絶壁をスイスイと上っていた。

しかも目立つ赤なのに、誰にも気付かれないまま本丸まで来てしまった。

ここからジャンプして、本丸の屋根にふわりと乗った。

ここからだと下で戦っている風景がよく見える。

気合を入れて叫んだ。


「やあやあ我こそは!今川義元の家臣!本郷勇なるぞーー!!我に勝てるものは尋常に勝負しろ!!」


そんな俺の叫びが響くと、合戦最中だった戦いが止まり、敵味方関係なく俺を見ていた。

俺は恥ずかしいと思った。


本丸の屋根をコブシに力を入れて殴った。一気に大きな穴が開き、そこから城に入った。

そこには斎藤義龍が切腹しようと、脇差を構えた瞬間だった。

しかし、俺の乱入でその動作が止まった。


俺は素早い動きで、近付きポンと首を叩き気絶させた。

我に返った家来も、俺の動きにあらがうことが出来ずに気絶していった。

その数は14人だ。


亜空間収納から縄をだして、縛ってゆく。

身動きできなくして、ようやく一安心。

すぐさま屋根に飛び乗った。


「我!本郷勇は、斎藤義龍を召し取った。斎藤家は終わった!!戦は終わった!!」


戦いの最中だが、シーンと静まり返った。

その言葉を聴いた斉藤の家来達は、抵抗を止めてしまった。

膝を崩して、泣き叫ぶ者も現れた。


下では、「えいえいおー!えいえいおー!えいえいおー!!」と騒いでいた。


【クエスト完了 報酬に雷魔法を差し上げます】


雷魔法が貰えた。

もしかしたらモーターを作って産業革命をしろと言っているのか?



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