第7話永楽銭
又も暗鬼城の開かずの間で、悪銭をまともな永楽銭に作り変えた。
その途中で、混ざった他の金属を取り出した。
微々たる金属だが、金や銀が混じっている。
この戦国時代には、銅から金や銀を取り出す技術は知られていない。
海外では知られている技術らしい。俺は知らんけど。
そして出来た永楽銭は、綺麗過ぎる。
これでは足が付いてしまう。銭を作るのは多分違法だと思う。
たしか、足利幕府が管理してるような気がする。知らんけど。
詳しいことはあまり覚えていない。しかし、ばれたらヤバイ気がする。
なので金型を作ってみた、1文が10枚も作れる金型だ。
微妙に文字に変化も付けた。
溶かした銅を流し込んだ。しばらくして10枚が繋がった状態の物が出来た。
前回よりなんとか落ちるが、まだまだ綺麗過ぎた。
そうか、土の型に流し込むんだ。
この10文を使って、土の型で作り直せばいい。
俺は残った悪銭から金や銀を取り出して、銅のインゴットを作ってゆく。
又も厳重な扉を開けて、山田伊助を呼び寄せた。
「これを使って、銅銭を作ってくれ。サラサラの土で湿らせると固くなる土がいい。それで型が作れるはずだ。これが銅を溶かす時に使う【るつぼ】だ。七輪で溶かして使うといい」
「分かりました。頑張らせて貰います。しかし、七輪って何ですか?」
落ち込んでいた顔が明るくなった。
そうか、七輪てまだ無かったのか?七輪って昔のイメージはあったのに・・・
「七輪は、後で作っておくから始めてくれ」
「では、行って参ります」
元気よく飛び出してゆく。
早速、土を使って七輪を作った。
これって魚焼くのに便利なんだよ。
ついでに、この城の台所用と鋳物用を10個も作った。
5日後に銭が出来たと、飛ぶような勢いで山田のおっさんがやって来た。
見た目も普通の銭だ。これなら使ってもばれない。
これを作るのに、城の近くに鋳物用の建物を建てた。
そこで、職人が働き永楽銭の試行錯誤を繰り返して、ようやく出来上がった。
山田のおっさんの工夫なのかそれとも職人の工夫なのか、古びた手垢みたいな物まで付けている。
そして、悪銭の交換を始めよう。
普通なら永楽1貫文に対し悪銭4貫文。
ならば永楽銭1貫文を悪銭3貫文で交換しよう。
商人が喜んで交換しに来るはずだ。
そして、永楽銭1文と悪銭3文の比率で、小額交換もしよう。
そうすることで、商人以外の交換する者が増えるだろう。
作り変えるだけで利益が出るのだから、ドシドシと交換して利益を上げよう。
「分かりました。城下に新しい両替商をやりましょう。中間人が増えると儲けも減るでしょうから」
山田は、あの一件から凄い商才を見せだした。
よっぽど悔しい思いをしたのだろう。
ついでに、銀行のように融資もやればいいだろう。
領内だけの業務だから、文句は言わせない。
この手のことは、寺が仕切っているみたいだが、俺の知った事でない。
あくまでも領内の商売人と製造業を作る切っ掛けを作りたい。
何事にも最初は資金が必要で、その手助けがしたい。
そのことを山田に言うと、乗り気になって「任せて下され」と引き受けた。
なんか、城下の商人に活気が沸いている。
銭の流通が増えた為に、商品の売れ行きがいいようだ。
この時代は銭自体の流通量が少ないのだ。
だから、あんな悪銭が使われ続けている。
俺のように、勝手に銭を作っている者も入るだろう。しかし、作る技術が未熟なのだ。
それに、新しく商いを始める者も増えた。
山田の方針なのか、悪い噂の商人はすぐに捕まり、吟味される。
そんな捕まる商人に限って、俺も全然知らない商人であった。
そしてその噂が本当なら財産は没収されて、2度と領内に入れ無くなるらしい。
俺が指紋を取らせて、悪い奴を識別できるようにしたからだ。
この時代には、指紋の識別は知らなかった。
それなのに、判子のかわりに親指を証文に押しているのだ。
そしてそんな取締りが評判になっている。
そのせいで、百姓のなり手も増えた。
まだまだ空いた田があるので、次男坊や三男の募集を掛けている。
尾張からの百姓は来ないが、別の方面から来ている者が増えた。
詳しく探索しないが、必ず俺が鑑定した者に限定している。
一目で間者か、悪者かも分かってしまうからだ。
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