第6話山田伊助はだまされた
暗鬼城の開かずの間で、俺は作業をしていた。
山田のおっさんのすすめで、ガラスの器を作っている。
なんでも伊勢の商人に売れる商品になるはずだと、山田のおっさんが言うのだ。
そうだ、この城の食器は竹を割った簡単な物だ。
俺は当り前のように飯を食べていたが、やはり竹の器だけだと不自由だ。
ついでに城の食器も作っておこう。
薄い器でも、目線の高さから落としても割れない強度だ。
錬金術の成せる不思議としか言うしかない。
透明なガラスコップや透明な皿とワイングラスも作った。
中にはレッド色のガラス製品も作って、切子細工にしてみた。
なんだか作っていて楽しい。
厳重にした扉の鍵を開けて、山田伊助を呼び寄せた。
「出来たぞ。結構薄い器だが壊れ難くなっているはずだ」
「こんなに薄いと壊れませんか?」
誰でもそう思うだろう。試しにコップを投げてやった。
あたふたしながら落としてしまう。コロンコロンと薄いコップが転がっている。
「不思議ですね、こんなに薄いのに・・・」
木箱に移して、明日には伊勢に向かうらしい。
今川義元から貰った金銭も、少なくなったと泣き言を言う筆頭家老の武藤も、これで安心するだろう。
2日後に山田は戻ってきた。
早速、皆が見ている前で、固い木箱のフタを開ける。
表面にはまともな銅銭が紐で括られていたが、下の方には屑銭ばかりが入っていた。
山積みにされた箱を全部調べたが、同じ結果だ。
「何故だ、あの時は確かにまともな銅銭だったのに」
青い顔した山田は、泣き出していた。
「山田、心配するな。こんな悪い商売をする商人とは、二度と商売をしなければいい。その経験を山田が買ったと俺は思うぞ。その悪銭も使いようがあるから大丈夫だ」
見かねた武藤も、山田の肩に手を添えてなだめている。
それでも結構な銭になった。
皆は、がっかりしていたが俺はよく分からなかった。
そして、内容を聞くと納得。
悪銭とは、悪質の銅銭・破損した銭・摩滅した銭・私鋳銭であった。
粗悪な銭で1文の価値がないらしい。
受取りを拒否されたり、価値を低めにして流通させられる物だった。
結局、銭500貫文で売ったらしいが、悪銭を引くと100貫文に成ってしまった。
銭500貫文が妥当な値段だったのか、それ自体が怪しくなってきた。
しかし、改めて銭の価値が分からない。
何度も武藤に質問して、ようやく合点がいった。
一石一貫(米1石=銭1貫文)らしい。
銭1貫文は銅銭1000枚を意味する。
そして、米中心に換算してみた結果で、ようやく納得出来た。
1石は米150キロ
砂糖1斤:144文 1斤は約600グラム
塩1升 : 4文 1升は約1.8リットル
酒1升 : 70文
油1升 : 66文
味噌1升: 65文
大工1日:100文
賃金
鍛冶職人: 50文
1日賃金
刀 :12貫文
火縄銃 :65貫文
こう考えると、どれだけ火縄銃が高いか納得だ。
しかし、俺なら火縄銃を1つさえあれば、複製出来る気がする。
火縄銃を足掛かりにして、狙撃銃でも作れないか考えてしまう。
狙撃銃ならライフルで、銃弾を込めて撃てる。
雨にも関係なく撃てるから、火縄銃の弱点がなくなる。
それに、次の発射もすぐに撃てる。
まさに、この時代の最強の兵器になれる。
更に発展して大砲も作りたいが、鉄の残りが少なくなってきた。
この辺に鉱山って何処にあるんだ。
色々と考えてしまう。今度、武藤に聞いてみよう。
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