05 カリブの朝焼け
深い暗青色の空が、徐々に明るみを帯びていく中、鉄太郎は呟いた。
「終わった……」
「……ああ」
ミラーが
「ともあれだ」
ミラーは立ち上がった。
「朝メシにしないか」
*
「これを」
ミラーに持って行け、という意味だろうと思い、鉄太郎はそれらの切り身を受け取って、キッチンへ向かった。
そこでは、ミラーが大きめの皿の上に、小麦粉を散らしていた。
「それは?」
「ああ、そいつをこの皿に置いてくれるか」
鉄太郎が指示通りに皿に切り身を置くと、ミラーは手を洗ってから、棚から小瓶を取り出した。
そして小瓶の中身――茶色い粉を、皿に振り
どうやら、切り身を小麦粉でまぶし、さらにその茶色い粉で味付けしているらしい。
小瓶に注がれた鉄太郎の視線に気づくと、ミラーはくくっと笑った。
「カレー
東洋人ならいけるだろうと勝手な推論を述べ、ミラーは切り身を転がして小麦粉とカレー粉にまぶしていく。
「よし。じゃフライパンにオリーブ
「はい」
鉄太郎はさっとフライパンにオリーブ
「うまいもんだな」
「ハンバーガーショップでアルバイトをしていたので」
「そうか」
ミラーが感心したように
じゅっ、という音がして、切り身が焼ける。
小麦粉も焼ける。
いいにおいがする。
懐かしい香りだ。
そうか、カレー粉も入っていたっけ。
目を閉じて、少し回想にふける鉄太郎に声がかかる。
「チーズを」
「チーズ?」
「あ、いや、これはおれがやるか。そのままフライパンを持っていてくれ」
ミラーがチーズを何枚かスライスし、それを切り身の上に置いた。
「お」
「ここからが重要。ふたをする」
ふたの下で、チーズが溶けていく気配がする。
「そのまま。そのままだぞ。ちょっと待ってろ」
きこきこという、缶切りで缶を開ける音がした。
ミラーがトマトソースの缶を開けていた。
「よしッ、ふたを取れ」
鉄太郎が素早くふたをどけると、トマトソース缶の中身が、フライパンに飛び出した。
あっという間にフライパンはトマトソースの海だ。
「いいにおいだ」
「だろう?」
ミラーは得意げに胸を張り、少し水を足した。
「あとは、ちょっと待てば完成。そうだ、
しかし鉄太郎が呼ぶまでもなく、
彼はもうすぐ料理が完成することを知り、ブラボーと言った。
「もうすぐ夜明けです」
ぜひ
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