第40話 城神高ダンジョン部の危機
世界中のハンターや企業が、クラスチェンジオーブ〈侍〉と〈陰陽師〉を入札合戦している頃、ゴールデンウィーク中にダンジョンで課外活動をしていた城神高校の生徒達が、ダンジョンゲートから出て来た。
彼らは以前、穂華が会った生徒4人組と教師のパーティーだった。
城神高校のパーティーは朝からダンジョンアタックをして、昼過ぎまで潜り帰還を果たした。皆の表情からは疲労が溜まっているのが窺える。
「はぁー疲れたぁ」
壷川 誠がダンジョンゲートから出て早々出た言葉がそれだった。その言葉に部長の魚原 賢一が壷川を嗜める。
「壷川しっかり歩け、他のハンターにぶつかるぞ」
「へいへい分かってるよ」
「壷川先輩、家に帰るまでがダンジョンアタックですよ」
「そうですよ、早くアイテムを換金して打ち上げをしましょう」
深瀬 優梨と足立 花美は壷川と違い、元気な足取りだった。彼女達はダンジョンの1層と2層しか探索はしていないが、地道にダンジョンアタックをしているせいかレベルは高く、その実力は10層のオークを倒せるほどだ。
「あ、先生は明日の授業の準備があるから、若者だけで楽しんで来なさい」
「「はーい」」
顧問の杉林 静先生は用事があるようで、打ち上げには参加しないようだ。
ダンジョンセンターの換金所でアイテムの売却を済ませ、杉林先生は生徒達にお金を全て渡して別れを告げると、足早に去って行った。
城神高校の教師である杉林先生は教員であり、副業が原則禁止なので、基本ダンジョンで得た収入を得ることはできない。
しかし届け出を出せば副業が許可される場合があるが、職務遂行に支障を及ぼさない副業、職務の公正な遂行に支障を及ぼさない副業、公務員として不適切でない副業と明記されており、杉林先生はダンジョンでの活動での副業は認められない。なので、杉林先生はダンジョン部の顧問になってからは、ダンジョンで得た金銭は1円もお金は受け取っていなかった。
「先生も打ち上げ来れればよかったのにね」
「仕方ないよ、本業は国語の先生だし」
「そうだな、忙しい中、僕たちに付き合ってくれる先生に感謝しないとな」
「OKOK、先生に感謝しつつスイパラ行こうぜ」
「「賛成~♪」」
深瀬と足立は壷川の提案に声をハモらせて賛成する。
城神高校パーティーの4人は、渋谷ダンジョンセンターと繋がっている渋谷マルコに行くと、あまりの人の多さに愕然とする。普段も混んでいるが今日に限って長蛇の列なのだ。
「……原宿まで行くか?」
「面倒だけど、腹を空かせる為に歩くの良いかもな」
「少し歩くだけだし原宿まで行こうよ」
「そうだね、原宿でスカウトされるかもだしね」
彼らはまだ高校生で青春真っ只中だ。
学生らしい会話をしつつ、原宿へと向かう。
4人が目的の場所まで暫く歩いていると、目の前に6人のガラの悪い男が立ち塞がる。
その6人は着崩したスーツを着ていて、派手なシャツに貴金属を身に纏い、派手な頭髪で明らかにホストっぽい風貌だった。
「ようよう、お前達ちょっといいか?」
「な、なんですか?」
部長の魚原がガラの悪い男の前に出る。
内心ビビっているが、後輩の女子生徒もいる事から勇気を出した結果である。
「後ろにいる女に用事がある」
魚原が深瀬と足立に視線を送ると2人は何かを察したの顔色悪くしている。
「すみません、僕達はこれから帰らないといけません、彼女達も体調がよろしくないみたいなので遠慮してもらえますか?」
「……これだからガキは」
男がそう言うと、魚原の鳩尾に強烈なボディーブローを決めると、魚原は胃液を吐き出し地面に蹲る。
「魚原!」
「先輩!」
「だ、誰か警察を! ……きゃ!」
「おっと静かにしやがれ!」
足立が助けを呼ぼうとした瞬間、背後から何者かに取り押さえられる。
深瀬と壷川が背後を見ると10人以上の不良達が集まっていた。
「な、何この人達?」
「大人しくしな、抵抗すると男はボコボコにするし、女は輪姦すぞ」
「ひっ……」
「く、くそ! 一体俺達が何したってんだよ!」
「威勢が良い奴は黙らせておけー」
「ういっす」
金髪のホスト風の男が命令すると仲間と思われるスーツを着た不良達は壷川を寄ってたかって暴行を加え始める。
「ぐっ…や、やめろ! ぎゃぁぁぁ」
「壷川先輩!!」
「あーあ、お前達やりすぎー。腕イってんじゃん。まぁ〜いいや、店に連れてけー」
「い、嫌……離して……ううぅ……」
不良10人以上に囲まれては為す術もなく、城神高校の生徒4人は不良グループに拉致されてしまった。
▽
渋谷のとある場所にホストクラブがある、まだ開店の時間ではないが照明は薄暗く爆音で音楽が鳴っている。
城神高校の生徒は豪華なソファーに座らせられていた。
4人の顔色は悪く、特に壷川は折られた腕が変色し、額から脂汗を垂らしながら激痛に耐えていた。
「おーし、ネットに流したかー?」
「OKっす白石サン!」
白石と呼ばれた男、白石 迅はこのホストクラブの店長で渋谷ナンバーズ10位の男だ。
そんな彼は渋谷ナンバーズの1位から金の話を聞いて真っ先に動きだした1人だった。
「100億の半分はー、俺がいただくぜー!」
白石はリシャールのボトルをラッパ飲みをし、馬鹿騒ぎを始める。
そんな光景を見た深瀬は恐怖のあまり震えが止まらなくなった。
そんな深瀬の精神状態を少しでも落ち着かせる為に、足立は深瀬の手を握り必死に励ます。
「優梨、大丈夫よしっかりして……私が付いてる」
「花ちゃん…」
2人の友情を見た白石が悪意の満ちた笑顔で足立の横に無理やり座ると、足立の肩に腕を回して露出した白い太ももに手を乗せる。
「きゃっ……や、やめて下さい……」
「ん〜? 君処女ー?」
「……」
「処女なんてさっさと捨てちゃえば世界は変わるのにー。なぁお前ら!」
「「そうだそうだ」」
「魔法少女ほのりんだっけかー? 巫山戯た名前だよなー、君友達なのー?」
「……」
「なんか言ってよー、言わないとみんなの前でショーツの中に手を入れちゃうぞー」
「嫌……」
虫の鳴くような声で足立は拒否するが、室内に響く音楽に掻き消される。
白石が足立のスカートの中に手を入れると、それを見ていた魚原が止めに入る。
「止めろ! その手を離せ!」
白石がホスト風の男達に顎で指すと、魚原に対して数人で殴りかかる。
「ぐっ! う! がはっ! や、やめて下さい……かん…勘弁して下さい……!」
「お願い! 止めて! お願いだから!」
足立は必死に白石に頼み込む。
そんな足立を見た白石の笑顔がさらに邪悪に歪む。
「魔法少女が来る前に少し楽しもうか?」
足立の震える太ももが白石の手に伝わると、白石の欲望の塊が下半身に集まる。
「大丈夫大丈夫ー、みんな通った来た道さー。痛みは一瞬、快楽は永遠! 君の思い描いた初めての経験はちょっとだけ違うかもしれないけど、な〜に、少し観客がいて経験人数が一瞬で10人以上になるだけさー」
足立が辺りを見渡すと薄暗いホストクラブの広いホールには10人数以上の男達がニヤけた表情を足立に向けていた。
その表情を見た足立はこれから起こる事を想像し、絶望し、涙が溢れる。
(どうして私達が……どうして私がこんな目に遭わないといけないの……誰か助けて……誰か……)
男達がスマホを片手に撮影を始め、白石が足立の下着の中に手を入れた瞬間、ひとりの男のスマホが鳴る。
「……白石さん、例の奴ッス」
「カーッ! 今から最高に盛り上がる瞬間だったのにー! お前らもそう思うだろー?」
白石はスマホをふんだくるように取り上げると、スマホを耳に当てる。
「お前は本物の魔法少女か?」
《だったら何? 私に用事があるようだけど、城神高校の生徒達に手は出してないでしょうね?》
「あー、男はボコったー。清楚な黒髪ロングの子は、ショーツの中に手を突っ込んだところー」
《……それが本当なら許さないわよ》
「早く来ないと始めちゃうよー。もう滾ってヤりたくてヤりたくてさー。住所送るからカモーン」
白石は通話アプリを切ると、ホストの男に投げてよこす。
「よし、おまえらー。準備しなー! 死なない適度に痛めつけて50億ゲットだぜー!」
「「イエーイ」」
白石達は武器を取り出すと、魔法少女ほのりんを捕まえる為に動き出した。
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