第30話 思ったより強くなったようです
結局、須藤さんは私がダンジョンへ行くまで喫茶店に居座った。
咲さんとも普通にお喋りして仲良くなっていたし、コミュ力は高いようだ。恐るべし須藤奈々子主任。
昼食を取り、午前11時に渋谷へ到着した。
ダンジョンセンターで受付を済ませていると、カウンターの奥で須藤さんがニコニコした表情を私を私に向けていた。ストーカーかな…本当に怖すぎる……。
どこに転移しますか?
ダンジョンセンター前〈現在地〉
渋谷ダンジョン 1層〜
渋谷ダンジョン 10層
渋谷ダンジョン 11層
渋谷ダンジョン 41層〈移動不可〉
渋谷ダンジョン11層を選択し、ダンジョンゲートの中に飛び込む。
ダンジョンゲートの先は薄暗く、荒れた大地と朽ちた墓標があちらこちらに立っているのが見えた。噂のメジャーアップデートされた新しいダンジョンのようだ。
「……お化けが出そう…人の気配は無いし変身しちゃおう。らんらんらぶはーと♡まじかるどれすあっぷ!」
キラキラした虹色の粒子が辺り一面に溢れ出し、効果音と共に身体にジャストフィットする可愛らしいデザインの魔法少女の衣装が次々と装着されていく。
キラキラした虹色の粒子が辺り一面に溢れ出し、荒れた大地が花で埋め尽くされていく。そして、可愛らしいデザインの魔法少女の衣装が、私の身体に次々と装着されていく。
「まじかる☆が〜る♡ すとろべり〜ほのりん☆彡只今参上!」
さて、変身完了。ルル様や〜、ルル様や〜い。
「来たか」
「来ましたよー。ねぇルル様、ここが新しくなった渋谷ダンジョン?」
「そうだ。今までの難易度より遥かに難しくなっているから、この先から脱落者も多く出るはずだ。心して征くのだ」
っとその前に、ルル様に相談しなくてはいけない案件がある。まずはそれについて相談しちゃおう。
「ルル様、探索の前に相談があるんだけど」
「なんだ?」
私は昨日のダンジョンセンターの換金所での出来事と、喫茶しぐれに乗り込んで来た須藤さんについて話した。
「なるほどな。我はどちらでも良いぞ? ほのりんが有名になれば我は嬉しいが、身バレしたくないのも理解できる。外界からダンジョンを管理する組織の中でも強い権力を持った者達だ、その者達がほのりんを利用したいのなら、我らも利用すれば良かろう」
ルル様はルル様で、私を人目を引くような事をさせるので非常に困るけど、とても頼りになるので文句は言えない。
相談の結果、私が魔法少女なのは隠し通し、アイテムの売却を全て須藤さんに一任する流れになりそうだ。ダンジョンの探索が終わり次第、少しだけ高価そうなアイテムを持帰り様子を見てみよう。
「おっと忘れていた、念の為にスキルの強化をしておこうか」
「突然だね。スキルの強化って何?」
「魔法少女のランクが上がった事により、スキルポイントを消費して魔法とスキル、さらにはEXスキルの強化が可能になったのだ」
「お〜、そういえば女郎蜘蛛を倒してランクが上がったね」
「うむ、早速だがEXスキル【まじかる☆ドレスアップ】の強化を済ませよう」
「はーい」
私はまじかる☆スキルブックを開くと、EXスキル【まじかる☆ドレスアップ】を選択する。
『EXスキル【まじかる☆ドレスアップ】をスキルポイント100ポイント消費して強化しますか?』
私は、はいを選択した。
『レベルアップ! EXスキル【まじかる☆ドレスアップ〈☆→☆☆〉】』
『残りスキルポイント1115』
「ほのりんよ、もう1段階強化してみよ」
「うん」
『EXスキル【まじかる☆ドレスアップ】をスキルポイント200ポイント消費して強化しますか?』
消費スキルポイントが倍になった。
これは強化する度に、消費ポイントが多くなるのかもしれない。
『レベルアップ! EXスキル【まじかる☆ドレスアップ〈☆☆→☆☆☆〉】』
『残りスキルポイント915』
「では、好きなスキルにポイントを振ってみるが良い」
「これって魔法や普通のスキルも強化可能なの?」
「可能だ。しかし、ポイントは有限だ無駄の無いようにな」
ぐっ……そう言われるとスキルポイントを使うのを躊躇してしまう。普段使っているもので、使用頻度が高いものは……まじかる☆スターライトのみかな。
跳躍やまじかる☆グリッターネイル、まじかる☆シールドはあまり出番は無いけど、いざという時使う事がある。今後の事を考えると、グリッターネイルとシールドは1段階強化しておくのが良いかもしれないね。
悩みに悩みに、結局こうなった。
まじかる☆ドレスアップ〈☆☆☆→☆☆☆☆〉
まじかる☆ウエポン〈☆→☆☆〉
まじかる☆スターライト〈☆→☆☆〉
まじかる☆シールド〈☆→☆☆〉
まじかる☆グリッターネイル〈☆→☆☆〉
毒耐性→毒無効
残りスキルポイント15
まじかる☆ドレスアップの強化にはスキルポイントの消費が400ポイントだった。予想通り消費ポイントは倍に膨れ上がるようで、今後は効率良く尚且、新しいスキルや強化の為にスキルポイントを貯める必要がありそうだ。
そして、興味深いのがスキルクリスタルで入手したスキルは、強化すると別のスキルへと変化する事が分かった。もしかしたら他のスキルも強化次第では化ける可能性があるので、便利そうなスキルどんどん取得中していこうと思う。
「バランスよく上げたな」
「まじかる☆ドレスアップはなるべく上げておいた方が良いと思うの」
「気づいたか? それは真理だ」
「え? し、しんり?」
「いずれ分かるだろう」
意味深な発言をするルル様。
まじかる☆ドレスアップは自身の防御力を上げてくれる大事な衣装だ。これが無くては魔法少女ではいられなくなるし、この先に強敵が現れれば厳しい戦いになるだろう。
▽
荒れた大地をルル様と進む。
空は薄暗く今にも雨が振りそうだ。
「本当にダンジョンの中なの? 空もあるし、周りは…古戦場後みたい」
「これでもダンジョンの中らしいな」
「らしい? ルル様はダンジョンに詳しいでしょ?」
「メジャーアップデート後の情報が一部ロックされている。先に進むか何かしらのクエストを消化しないと、我の知識が増えないらしい。まぁ細かい事は気にするな。フハハハッ!」
これは予想外だ。
万能ルル様に機能制限とかこの先どうすれば……。
「敵の反応だ」
「え? 私の耳には何も……」
索敵の為にうさ耳カチューシャを装着していたが、何も聞こえてこない……いや、私達の周りから複数の反応! 地中から!?
ボコボコと地面が盛り上がり、人骨が這い出てくる。さらに、人骨の他に黒っぽい物体がゆらゆらと揺らめいている。
あれは…お化けだろうか? 2つの黒い窪みから赤い目のような光が揺らめき、私を見つめている。
「囲まれたようだ、相手はスケルトンとゴーストだ。どれも大した事が無い相手だが、ゴーストは、属性武器や魔法じゃないと倒せないぞ」
「私の魔法なら倒せるって事だね」
「うむ、強くなったほのりんを、試すには良い相手だ。思う存分暴れてみよ」
よし、まずはまじかる☆スターライトの試し撃ちだ!
「眠れぬ魂に安らぎを! まじかる☆スターライト」
オタマトーンから流れるメロディーと共に、虹色の尾を引いた星とハートの塊がスケルトンに命中すると、辺りに弾けるように拡散し、周りのアンデット達を巻き込んでいく。
「え…威力が上がってる」
「フハハハ! まだまだ序ノ口だがな!」
今までの、まじかる☆スターライトは、敵に命中するとそのまま消えてしまったが、1段階強化されたまじかる☆スターライトは命中すると爆発し、キラキラした星とハートが辺りに飛び散ると半径2m程度にいるモンスターにダメージを与えられるようだ。
上手く使えば、女郎蜘蛛の巣のように1匹づつ相手にしなくても纏めて倒せるようになるかもしれない。
「それじゃ、サクサク次の検証に移りますか。まじかる☆グリッターネイル!」
左手をアンデットに向けると、爪に散りばめられたネイルアートが輝き出す。
ゴーストの正面に強い光が発光した瞬間、光の粒子になり消えてしまった。
「ありゃ……」
「ふむ。相性のせいか効果がわからんな」
オーク戦の時はまじかる☆スターライトが変化し、まじかる☆グリッターネイルに変化した。
効果は目眩ましだと思うが、ゴーストに対しては目眩まし以上にダメージを与えられるようだ。
「生身のモンスター相手に再度検証だね」
「なら次だな」
ボロボロの剣を持ったスケルトンを私に迫り、剣を上段から振り下ろす。
「まじかる☆シールド!」
弧を描いたその一振りを、まじかる☆シールドで防ぐと甲高い音共に、ボロボロの剣が折れてしまった。
「……本当にモンスターって強くなったの?」
「一般のハンターなら苦戦するはずだ……」
ルル様は歯切れの悪い言葉を呟いた。
肩透かしを食った状況に、これ以上検証をしても無駄だと判断した私達は先に進む事にした。
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