第28話 ヤバい…バレたかも!?
現在、まじかる☆ボックスには大量のアイテムがある。数日前までの私は金欠でひもじい思いをしていたが、これらのアイテムを売れば大金が手に入るだろう。……勿論、売れたらの話だが。
しかし、私の本来のレベルは1だし、そんな私がこんなに高価なアイテムを持ち込んだら、いらん疑いを掛けられそうだし……。ちまちま売ってもアイテムは増える一方だし……どうしたらいいんだろう?
まじかる☆ボックスに表示されたアイテム一覧を見ると、
スキルクリスタル〈麻痺攻撃〉×1
スキルクリスタル〈毒胞子〉×2
スキルクリスタル〈跳躍〉×1
スキルクリスタル〈溶解液〉×1
スキルクリスタル〈アイテムボックス〉×1
スキルクリスタル〈軽量化〉×1
スキルクリスタル〈剛力〉×1
クラスチェンジオーブ〈侍〉×1
クラスチェンジオーブ〈陰陽師〉
クラスチェンジオーブ〈モンスター使い〉×1
クラスチェンジオーブ〈魔法使い〉
ポーション ×8
ハイポーション ×2
性転換薬 ×1
蜘蛛の糸 ×18
鞄 ×1
マタンゴキノコ ×4
アッシュウルフの牙 ×6
ラウンドシールド ×1
鉄のナイフ ×1
深緑色のローブ ×1
音が鳴る金槌 ×1
モンスターのドロップ率は、体感で約2割以下って感じがする。
ボスの宝箱の中身は当たりハズレが多いが、当たりの場合はスキルクリスタルが入っている事があり、必ずひとつはポーションが入っていた。
回復手段が無いので、ポーションはとても貴重品だ。無一文で空腹に耐えられず、ダンジョンセンターで4,500円で売ってしまったのが悔やまれる。
「さて、帰ろうかな」
「ゆっくり休むがよい」
辺りを確認し、変身を解除する為の魔法を唱える。
「普通の女の子にな〜あれ♡」
変身する時は時間を掛けるのに、変身解除は一瞬だ。ピカッと光ったら元に戻っている仕様だ。
これは魔法少女あるあるなのかもしれないが、変身を直ぐに解除しないといけない場合や、尺の都合上カットされている場合が多い。
これもダンジョンデータベースが集めた情報を元に、魔法少女の仕様にされた可能性がある。
ダンジョンデータベースって本当に謎だ。
渋谷ダンジョンから出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。それでも渋谷は明るく、街頭やネオン、お店から光が溢れ街を照らしている。
私はアイテムをひとつ売りにダンジョンセンターへ向かうと、ダンジョンセンターの裏手に沢山の人集りが出来ていた。
「おいおい! まじかよ本物だよ」
「カッコいいな〜」
「メアリーさんの身体ヤバスギィ!」
有名人が来たのかな?
私は背伸びをして覗いてみると、そこには長髪のホワイトブロンドの髪をした超イケメンの白人がいた。身長は高く、身体の線は細いが服の上からでも分かるくらい鍛え抜かれた身体で、まるで片翼の堕天使だ。
「え!? あれって…マイク R.エバンスだ!」
マイク R.エバンスから溢れるオーラはもの凄かった。流石ダンジョンランキング1位のダンジョンランカーだ。
しかし、何故、彼が渋谷に? 本拠地はロサンゼルスのダンジョンだと聞いた事がある。
マイク R.エバンスの隣には、どうやらチームメンバーもいるらしく、SPに厳重に守られなが渋谷ダンジョンセンターの裏口から入って行く。
凄い有名人を見てしまった。
そんな混乱の中、人混みを避けながらダンジョンセンターの換金所へと向かう。
「すみません、これの査定をお願いしたいのですが」
リュックサックの中から、マタンゴキノコと蜘蛛の糸を取り出し、カウンターの上にあるトレーの上に載せる。
「お預かりします。番号札が呼ばれるまでお待ち下さい」
番号札18番を片手に、備え付けられた長椅子に腰を掛けながら、人の流れを観察して時間を潰す。
「18番のお待ちの方〜」
あ、呼ばれたから行かなきゃ。
受付の方から私の番号が呼ばれ、指定されたカウンターへと向う。
「十条穂華さん。今日のダンジョンアタックは如何でしたか?」
「え?」
私の名前を呼んだのは、今日の昼頃にダンジョンライセンスカードの更新の時に別室で話をした須藤さんだった。
「驚きました?」
「ま、まぁ……」
「本日から十条さんの専属になりましたので宜しくお願いします」
「はへ? 専属って?」
須藤さんの突然の専属発言に理解が追いつかない。私専属ってどうゆうこと?
「ご説明致します。我々の言う専属とは、ダンジョンセンターに所属している専門知識を持った職員が、個人のハンター、もしくはパーティー、更には大規模クランの運営管理サポートをする者の事を指します」
「えーと、須藤さんが私の専属になったって事ですか?」
「はい。そうです」
「丁重にお断りします」
「なんで!?」
なんでって言われてもメリットが感じられないのよね。
そもそも魔法少女である私は、他人に正体をバラす訳にはいかない。恥ずかしいのもあるけど、身バレしまうと日常生活に支障をきたし、ロハスな生活を送る事ができなくなるばかりか、両親に連れ戻される可能性があるのだ。それは何としても回避したい。
須藤さんが専属になると言う事は、ダンジョンセンターやそれを管理する国、更には企業からのサポートがつくのだ。これらはメリットに聞こえるが、それは即ち権力者達に管理される意味を持つ。
「何でって言われても……私に専属が付く理由が不透明ですし、ダンジョンセンター側にも私にもメリットは無いように見えます」
「メリットはありますよ。隠し事は絶対に外に漏らさないとか……例えば、巷で話題の魔法少女の件とか」
「な、何故それを……」
「フフフ。やっぱり……」
「あっ……」
「ここじゃ何ですし、別室でお話ししましょうか」
「し…失礼します!」
「あ! ちょっと待って! 十条さん!?」
私は蜘蛛の糸とマタンゴキノコを査定に出したまま、ダンジョンセンターから逃げるように走り出した。
やばい! カマをかけられた……。どこでバレたんだろう? 怪しい事は一切していないはずなのに……。うぅ、恥ずかしさと不安で気持ち悪くなってきた……。
電車に揺られる事、約30分。
喫茶しぐれに辿り着くと、私は咲さんに挨拶を済ませ、急いで部屋に戻り布団の中に包まる。
やばいやばいやばい。須藤さんは何かしらの確証があって、私に対して接触を図って来た。そして、須藤さんは魔法少女の事を口にした。
私が魔法少女だと言う証拠は無いはずだった。しかし、今日の昼に接触し、夜には私の専属になっていた。
それにしても早すぎる……、いや……もしかしたら早い段階で目星をつけられていた?
暫くダンジョン行くの止めようかな……。
いくら考えても、何故バレたのか分からない。カマをかけられて答えてしまった以上、これ以上隠し通す事はできない。
「きっと弱みを握った須藤さんは、私に対してあんな事やこんな事を強要してくるに違いない。あぁ…どうしよう……」
想像すればするほど、悪い状況が浮かび上がってくる。
唸りながり布団の上でゴロゴロしていると、部屋の扉をノックする音が聞こえる。
「穂華? また体調悪いの? 夕食どうするの?」
「……食べる〜」
布団からのそのそと這い出し、重い足取りでダイニングへと向かうと、既にまひるちゃんが椅子に座って夕食をみんなで食べるのを待っていた。
「ほのかおねえちゃん。きょうのゴハンおいしそうだよ!」
「わぁ本当だね!」
テーブルには色とりどりのサラダと副菜、出来たての炒め物があり、食欲を唆る良い香りが漂って来る。
不安でいっぱいだった気分が、その香りで空腹だった事を思い出させる。
「はぁ、お腹空いちゃった」
「ほらほら、早く穂華も座ってご飯にしちゃいましょう。寿司、ご飯できたよー」
「……おーう」
下の喫茶店から寿司さんの声が聞こえて来る。
寿司さんは閉店後の後片付けをしていたのだろう。
そして、みんなが揃うと「いただきます」をして夕食を食べた。
こうやってみんなで食べるご飯は、とても美味しかった。
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