第5話 まじかる☆スキルブック
「どうしようどうしよう! このままじゃ日常生活に支障が出ちゃうっ!」
頭の中でこのまま私が、まじかる☆が〜る、ほのりん☆ミ(十条穂華)として世界に周知される事を想像する。
「十条さんって、魔法少女なの? ウケるw」
「ぷっ、ほのりん☆ミ(十条穂華)ってなんだよwww自己主張強すぎwww」
「いい歳してまじかる☆が〜るはないわぁ」
「偽名で登録した為、ダンジョン国際条約違反で逮捕します」
ネガティブな可能性が頭の中に次々と溢れてくる。これでは憧れの魔法少女になったとしても、世間から嘲笑われてしまい、最悪な場合は一生、日の目を見る事が出来ないかもしれない……
ふと見たステータスウィンドウの中にタブを見つけるとそれには、まじかる☆スキルブックなる表記が見えた。
講習で受けた内容を思い出すと、スキルとはダンジョンで稀に手に入るスキルクリスタルと呼ばれたアイテムを使用したり、クラスを得てレベルが上がるとスキルを覚えられるらしい。
何か解決策があるんじゃないかと考え、早速まじかる☆スキルブックのタブを押すと、ウィンドウが一冊の大きな本になる。
「デスボールを倒したら何かの条件をクリアしてスキルが出現したよね……取り敢えずそれを探してみようかな」
まじかる☆スキルブックに様々なスキルが載っており、文字が光っているのを見つけた。
「あった! たぶんこれだ!」
まじかる☆スキルブックに記載されたスキル【魔法少女は普段は普通の少女】を見つけた。これはデスボールの魔石を取得したきっかけで出現したのだろう。
もしかしたらデスボールと呼ばれたモンスターはボールに擬態して襲うタイプだったので、隠蔽効果のあるスキルが出現したのだと推測する。もしかするとこれは名前の通りの効果なはずであり、私は迷わずスキルを取得する為に画面をタップする。
『スキルポイント60ポイント消費し、まじかる☆スキル【魔法少女は普段は普通の少女】を取得しました』
『ダンジョンデータベースに登録された、十条穂華の情報が全て偽装、隠蔽されます』
「おお! これは当たりだ!」
早速自身のステータスを確認する。
名前 まじかる☆が〜る ほのりん☆ミ
ダンジョンランキング 10位
※以下隠蔽効果によりダンジョンデータベースから非表示になります。
レベル なし
称号 初代魔法少女
クラス 魔法少女〈☆〉
ひっとぽいんと ☆
まじかるぱわー ★☆☆☆☆
ちから ☆
たいりょく ☆
まじかる ☆☆☆☆☆
はやさ ☆
うん ☆
「お、ほのりん☆ミの横についてた(十条穂華)が消えてるしステータスも非表示になった! これでランキングに私の本名が消えたはず……後は変身を解除して私のステータスを確認しないと……」
『魔法少女を解除するには まじっく☆ウエポンを上に掲げ、可愛くポーズをとり』
『まじかる☆ドレスアップ解除♡ と可愛く言って下さい』
ポップアップしたヘルプウィンドウに表示された内容を読むと、ダンジョンデータベースに遊ばれてるんじゃ? と勘繰ってしまう。
(魔法少女を解除して即ステータス確認して、私の名前が10位に入っていたら……詰む……)
あのスキルを何処まで信用して良いか分からないが、魔法少女を解除し確認する必要がある。
念の為に辺りを見回しモンスターがいない事を確認すると、オタマトーンをクルッと一回転させ片足を上げて可愛くポーズをとり、秘密の呪文を唱える。
「ま、まじかる☆ドレスアップ解除♡」
背筋がゾクゾクするが、変身が解除されたようで、魔法少女の衣装が光の粒子になって消えると、変身前の服装に戻っていた。
「よし、ステータスオープン」
名前 十条穂華
ダンジョンランキング 圏外
レベル 1
称号 なし
クラス なし
HP 5/10
MP 1
力 1
体力 1
魔力 0
速さ 1
運 1
ステータスウィンドウに表示された内容を確認すると、魔法少女の時と全く内容が違かった。名前が本名になりランキングも圏外になっていたので、取り敢えずひと安心だ。
ステータスの表記も星から数字になり分かりやすくなっているのも確認できた。
「うわっ…私のステータス、低すぎ…?」
某国民的RPGでもスライムすら倒せそうにないステータスに驚く。私のステータスは一般人、あるいはそれ以下のステータスであり、魔法少女にならないとまともに戦う事はできないと思う。
ダンジョンであの触手モンスターと戦って分かったが、私のような訓練も受けていド素人がダンジョンに入れば1層ですら命を落とすだろう。
正直、怖くて早く魔法少女に変身したい気分だ。
『魔法少女に変身するには秘密の呪文を唱えましょう』
ウィンドウがポップアップしてくる。早く魔法少女に変身しないと、突然モンスターに襲われては目も当てられない。
「……らんらんらぶは〜と♡まじかる☆ドレスアップ!」
可愛く声を作り可愛いポーズを取ると、魔法少女の変身エフェクトが発生する。
ハートと星が溢れ出しピンク色のファンシーな世界が広がると、ぴょん、キラキラ、ちゃりんなどの効果音と共に、魔法少女の衣装が身体に装着されていく。
「らぶり〜まじかる☆が〜る♡ すとろべり〜えんじぇる☆彡」
抵抗虚しく、声色を可愛く変えたセリフとポーズを強制的にさせられる。
くっ…駄目だ…、魔法少女の変身中は勝手に身体が動いちゃう……。
魔法少女に変身するデメリットは強制だろうね。変身するにも解除するにも可愛くやらないといけない。
そういえばアニメの魔法少女達は毎回変身シーンは可愛くやっている、これはテンプレで一番盛り上がるシーンのひとつだよね。
一度魔法少女の変身を失敗したのは単純に、魔法少女のテンプレをしなかった事が原因だね。
ピコン。
電子音と共にウィンドウが開く。
『魔法少女の力は無限大です、貴女の目指す魔法少女を創り上げて下さい』
『それは唯一無二です』
身体が熱くなる。
唯一無二の魔法少女、それが私。
ポップアップウィンドウを見て何かが吹っ切れた私は、まじかる☆スキルブックを漁りだす。
「取り敢えず、魔法少女にならないと魔法やスキルは使えない。生き残る為に必要な物を取得しよう」
スキルや魔法を取得するにはまじかる☆スキルブックを見て選ぶしかない。
だけど、まじかる☆スキルブックには取得したスキルや魔法が載っているだけで、他のスキルは載っていなかった。
もしかして……モンスターを倒して魔石をゲットしないとスキルが開放されない?
デスボール、あの触手モンスターを倒した時に、赤い宝石が手に入った。
あの時、ウィンドウに表示された内容を思い出すと『条件をクリアした事により、まじかる☆スキルブックに【魔法少女は普段は普通の少女】のスキルが出現しました』示されていた事を思い出す。
「そうだ……モンスターを倒して魔石をゲットしないといけないんだった……」
またあのモンスター達と戦うと思うと憂鬱になり、この暗いダンジョンの中でひとりぼっちだと思うと、急に怖くなってくる。
触手モンスター、デスボールと戦っている間はアドレナリンが大量に出ているのか興奮し痛みも我慢出来るレベルだったが、鞭の攻撃を受けた胸と腕と左太ももが痛い。
更に再度変身して分かった事があるが、魔法少女の衣装は破けたままだった。
「衣装も直ってないし、怪我も治せない……なるべくモンスターと戦闘は避けるか、もし戦闘になった場合は攻撃を回避して戦う必要があるって事ね……」
ダンジョンゲートさえ見つけてしまえばダンジョンから出られると講習で習っていたので、暗い洞窟の中を息を潜ませゆっくりと進み出した。
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