第13話 享受する者
一週間が経った。卒論を巡って依然揺れ動いていた僕に、転機が訪れた。
今日は久々に講義室へ来ている。特別講義を受けるためだ。
つい先日、教務課から各学生宛に連絡があった。エネルギー政策論の枠が空いているから受講しないか、とのことだった。卒研以外の単位は足りているから取らなくても良いのだけれど、ちょっと面白そうだからと受講することにしたのだ。どうせ学費は同じだから、取った方がお得である。
開始二分前の講義室は既に二十人程が着席していて、その多くは真ん中から後ろに集中していた。これは大学の常である。存在感がないからどうせ当てられないだろうと思って、僕はやや前方に座った。
時間ちょうどになり、教員が喋り始めた。
「エネルギー政策論を始めます。この講義は全四回で、今日が初回ですね。
まず皆さん気にしている評価方法ですが、毎回のレポートで評価します。出席はオンラインでも結構です。
授業は毎回外部から先生をお招きして、我が国や世界が抱えるエネルギー政策の現状と将来について講義していただきます。初回の今日は、環境省○○局□□課の
続いて、外部講師が登壇した。
「皆さん初めまして、ただ今ご紹介いただきました山川です。私は
僕たちとそう年齢が変わらないであろうその人は、にこやかに喋り続けた。
「というのも、既に色々な先生方からお聞きになっているかもしれませんが、皆さんはこれからの我が国を担う重要な存在であり、その働きを政府や社会全体から期待されているからです。
例えば予算という観点から見てみましょう。この円グラフは、政府が日本中の高等教育機関に対して与える補助金の額を示しています。その総額は決して十分ではありませんが、それでも内訳を見ると、この玄海大学などいくつかの高等教育機関に対し重点的に予算を配分していることが分かります。つまり政府は皆さんにそれだけ期待しているということなんですね。ただし一方で、国民の税金で質の高い教育を受けている以上は、それに対するアウトプットを出す責務も皆さんにはあるということで、この先の人生で苦労されることになるとも思いますが……。
皆さんとは今日これっきりの一期一会だと思いますが、そういう訳で、これから社会で活躍される皆さんにとって、私の講義が少しでも実りあるものになればと思います。
……では、講義を始めます」
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