生まれ変わったら、私は犬になっていた。


「ワンワン!」


 どうも犬の言葉しか使えないらしい。必死に自己存在証明のため声を張り上げるも、口から出るのは犬の鳴き声ばかり。


 さて、どうしてこんなことになってしまったのだろう。よく思い出せない。


 確か昨晩は部長について行き、潰れるほど酒を飲んでいたはずだ。



 もしかして、これが例の転生というやつだろうか。私はもしかしたら、急性アルコール中毒で死に、犬として生まれ直したのだろうか。


 ともなれば、犬らしく犬の人生を全うするのが幸せだろう。


 私は正直ここ数年間過労に過労を重ねていた。せっかく手にした二度目のチャンスなのだ、幸せを謳歌してやろうじゃないか。


 などと思っていたら、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「おい、何をやっている。早く来い」


 この声は部長のものだ。私は部長に呼ばれた途端、反射的に声が出た。


「ワンッ!」


「いい返事だ。ほら、これを取ってこい!」


 部長は昔から犯罪に手を染める悪どい商売ばかりしていた。だが、犬には優しくしてくれるらしい。こんな一面があるなんて思ってもいなかった。昨日の飲み会、部長に歯向かわなくても良かったなぁ。


 そう思いながら、私は部長が指定した通り契約を強引に取ってきた。


「ワンッ!」


「いいぞいいぞ、会社の犬。この催眠術はよく効くなぁ」

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