第2話 巻き込まれたい訳じゃない

 「入り口どこ!?」

 パーティ会場だと錯覚させる程建物の周りを人々が囲っている。ひしめき合い隙間も僅かなギャラリーのお陰で入り口がわからずかなり入店困難な状況だ。


「突っ込んでみようか?

..流石に無謀だよな、取り敢えず降りよう」

車内からでは判別がしにくい、目立たないところに車を停め手探りをする他ない。


「確かあの辺に..見えないな、何処だ?

建物の中心....ちょっとごめんね」

群れを掻き分け入り口と思われる箇所へ辿り着くと、内側から栓をするように重しが乗せられていた。


「あ、バリケード貼ってあんじゃん!」

誰かが避難した痕跡だろうか、内側からの封鎖となると他の入り口を探す必要がある。


「なんか裏口とかねぇかな、あ..すみません。

...っと、関係者入口的なやつあるだろ」

再び群れに紛れ建物の側面を目指す。かなり大きな建物だ、入口が一つとは考えにくい。


「ここかな...あ、ここトイレだ。

..中で探すの面倒だから入っとくか」

一度は扉を閉めたが後の尿意を考えると選択肢として間違いではない、しかし入口でない事だけは確かである。


「ふー..。

取り敢えずはひと段落、ってあるじゃん!」

トイレの脇に設置された銀の扉。

はっきりと〝関係者入口〟と書かれていた


「…開いた、やっと中入れるわ」

トイレからの棚ぼたにより入店に成功、何の関係者でも無いがあしからずの配慮を願う。


「ここは裏方..的なとこか。

まぁ関係者入口だもんな、そりゃそうなるか」

中へ入る扉を見つけた後は商品の売り場へ入る入口を見つける。


「そんな入り組んではいない筈...あ!

嘘だろ、あのゆるゆるしたでかい扉だろっ!」

店内でよく見る大きく緩やかな動きの扉。

選ばれし者のみが通過する事を許されるあの扉の内側に自らがいる事を深く実感する。


「一度入ってみたくなるやつだ..!

でもどうしよう、あれ外から押してみたいな。外から押して中入ってみたいな!!」

目先の誘惑に晒されそうだ、一時の快楽に身を任せるべきでは無い。ただ通るだけ、ただそれだけだ。


「…ふぅ〜っ。さて、買い物しよう」

もう一度外側から潜ってしまえば二度と出られないような気がする。いや、出られない。


「ホームセンターは2階だったかな?

..軽い菓子でも買ってからにするか」

一階はスーパー、今朝向かったコンビニよりも破格の値段で食材が手に入る。


「…ふむ、安いな。

晩飯の支度も買っていくとするか」

シーツに辿り着くまで随分と時間がかかりそうだ、今日中に扉の修理が出来るだろうか。


「どうしようかな〜。

先にシーツとか揃えてからに..」

方向を転換し魚のショーケースから目を離した瞬間、黒い塊が瞳をよぎる。


「動くな」 「…は?」

黒いそれは強く額に突き付けられ、目の前には屈強な姿の音が立っていた。


「ここで何してる?」


「え、いや買い物..。」

彼は強盗か何かだろうか?

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