第3話 これが日常
ご飯の時間になりテーブルにつくと、そこにはとても美味しそうな料理が沢山並べられている。
「すごい!創志さん料理得意だったんですね、少し意外でした。」
「いやいや、自分は恋奈ちゃんの手伝いをしてるだけだよ。本当に凄いのは恋奈ちゃんだから、褒めるなら恋奈ちゃんを褒めてあげて欲しいな」
創志さんは少し笑いながらそう言った。
そうなんだ、恋奈は昔から料理が苦手で、創志さんが来るまで、ずっと俺が作ってたのに。本当にすごく練習したんだろうな〜。
料理の大変さは俺もよく知っている。
俺は恋奈に作るために、どうやったら美味しくなるか、どうやれば美味しそうに見えるかなどを、考えて作ってきたからな。
最初はたまに指を包丁で切ってしまったり、油がはねて火傷した事もある。その時は、恋奈が泣きながら心配してくれたっけ。懐かしいな〜。
「どう?私、お兄ちゃんみたいに料理上手になったでしょ。」
「いや、恋奈は俺より上手になったよ」
感心するように言うと恋奈はとても嬉しそうにしていた。かわいい。
「さぁ、もう全部作り終わったから、お兄ちゃん!早く、恋奈が作った料理食べて♡」
うわ、めっちゃかわいい。すごくドキドキする。え、なにこれ、本当に俺が居ない間に何かあった?ヤバい、これ以上恋奈、妹にこの気持ちはヤバい。落ち着け、落ち着け。
俺はそんな事を思いながら、椅子に座った。
「手を合わせて」
「「「いただきます!」」」
今の時間は約11時、普通は少し早めの昼ごはんなんだが、俺は朝ごはんを食べてないので、朝昼兼用のご飯になった。そのため、メニューはあっさりした物が多く、量も少し多かった。メニューは、パン、クリームシチュー、サラダ、卵焼きだった。
まず俺は、クリームシチューを食べた。
「美味しい、すごく美味しい!」
「ありがとう!お兄ちゃん♡」
恋奈は笑顔でそう答えた。俺は少し驚いた、恋奈のこんな顔を見るのはいつぶりだろうと。
しかし、どれもこれも本当に美味しい。サラダも卵焼きも、パンをクリームシチューに付けたやつなんて絶品だった。
そして、全ての料理がなんだか暖かい。それは、一つ一つにちゃんと気持ちが込められていて、それが伝わったからだと思った。
「「「ご馳走様でした」」」
俺は昼ご飯が終わり、ソファに座った。
まじで美味しかったな〜、これが毎日食べれるなんて、太るかもしれん。これがずっと続いたら良いのに。
そんな事を考えていたら、洗い物が終わった恋奈が抱きついてきた。
「これからはずっとお兄ちゃんがいるから、恋奈は幸せだな〜」
そんな事を言いながら恋奈はいっそう力を入れ、廻斗を抱きしめた。それは、もう絶対に離れない、離れたくないという、強い意思が表れていた。
「俺もだよ恋奈」
「うん」
そんな、
夜になり、恋奈が昼のように美味しいご飯を作り、それをみんなで他愛の無い話をしながら食べていた。ふと、廻斗は時間が気になり、時計を見ると、やはり幸せな時間は短いな。
もう10時だった。廻斗は2人に先に風呂に入ると伝え、浴室に行った。廻斗は一通り頭と体を洗い、
「はぁ〜、気持ち〜」
廻斗はまるで天国にいるかのように、疲れが取れていき、顔がふやけるほど気持ちよく浸かった。
風呂を上がり寝ようとしたら、気付いてしまった。寝る所がない。どうしよ、リビングの、ソファにでも寝ようかな。そう考えながら、リビングでゴロゴロしてたら、
「お兄ちゃんは恋奈の部屋で一緒に寝よ♡」
風呂から上がった寝間着姿の恋奈がそう言った。そして気付いたらいつの間にか、恋奈の部屋に来ていた。
あー、えーっと、ちょっとやばいかもしれん。恋奈は普通にしてても可愛いのに、そんな恋奈の寝間着姿。破壊力やばい、ダメだ、さっきから自分の、心音がドクドクドクドクしてる。恋奈の寝間着は冬なのもあってか、モコモコのゆるふわ系の服だった。
「お兄ちゃん、早く一緒に寝よ」
「う、うん...」
そんな恋奈の顔を見ると心なしか、ちょっと赤くなっている気がする。恋奈も恥ずかしいのだろうか。
俺は恋奈がいつも使っているであろう1人用のベッドに恋奈と一緒に入った。
「暖かいね」
「そうだな」
そんな少ない言葉だけを交わして、恋奈はすぐに俺に抱きついて寝た。
そりゃ今日は一日中元気だったもんな、疲れるに決まってるよな。でもなんか悲しいな。
「おやすみ恋奈」
そんな事を思いながら俺も眠りについた。
そんな幸せなごく普通の日常を、生活して約1ヶ月したある日の夜。
「ねぇ、お兄ちゃん。散歩しない?」
「いいけど、冬の夜だからすごく寒いよ」
「大丈夫、ちょっとだけだから」
そう言う恋奈に手を引かれ、玄関まで行く。
「じゃあ、創志さん。行ってきます。」
「行ってらっしゃい、楽しんできてね」
そう、創志さんに言い俺と恋奈は外に出かけた。
「やっぱり寒いね、でもお兄ちゃんと一緒だから大丈夫だよ」
そんな恋奈に俺は自分のしていたマフラーを恋奈に巻いた。
「なんか....デートみたいだね..」
恋奈は顔を赤らめてそう言った。
まじでかわいいかよ、俺の妹。
そんなことを思いながら、甘ったるい幸せの時間を過ごしていた。
「そろそろ帰るか」
「うん!」
俺がそう言って帰ろうとした時、後ろから足音が聞こえ、普通なら気にしないだろうが、今は気にしない訳にはいかない。何故なら、今は夜遅くて、俺たちがいる道路は人気が少ない、そして後ろにいる人はこちらに一直線に走ってきているからだ。
俺はすぐに振り向き、恋奈を守るように動いた。すると、
グサッ
そんな音がなり、その瞬間俺の心臓あたりにすごい激痛がはしった。一瞬何が起きたか分からなかった。でもそれはすぐに分かった。
俺はこの目の前の人、男の人に刺されたんだ。力が抜ける、やばい、死ぬかも。恋奈は大丈夫かな。
俺は
俺は安心して小さく息を吐いた。だんだん意識が遠退いてく。
これで死ぬのか、あぁ、もっと恋奈、創志さんと、一緒に居たかったな。もっと生きたかったな........
そして俺は意識を手放した。
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