第2話 帰る場所
目を覚まし、ゆっくりと窓の外を見ると、そこには、さっきまでとは全然違い、少し明るい景色が広がっていた。
「そうか、寝てたのか」
眠気から覚めた廻斗は少し体を伸ばし、気持ちよさそうに小さく息を吐く。窓の外を見ると、そこには大きな住宅街が見えてきた。少し時間が経つと、廻斗は少しやる気を入れるかのように、近くにあった降車ボタンを押した。
バスから降りると、冬だな〜と実感するほど、肌寒かった。俺はすぐにカバンに入っているコートを着た。
それから北に10分ほど歩くと、すぐ横にあった公園の砂場に、黒猫がポツンと座っていた。その黒猫は何をするでもなく、ただ廻斗をじっと見つめていた。それを見た廻斗は黒猫に近づいて、撫でようとした。そうすると黒猫はすぐさま、素早い動きで逃げていった。
「昔から動物には好かれないんだよなー」
廻斗は小さく吐き捨てるように言い、公園を出た。公園から5分ぐらい経って見えてきたのは、周りの家より少し大きい綺麗な家だった。その表札には倉宮と書かれていた。それを見て廻斗はどこか嬉しそうに、思い出に浸る思いで、門を開け、ドアの前ある防犯用のカード認証、顔認証をして、ドアを開けた。
ドアを開けると、すぐに何かが胸に飛び込んできた。そこには雲ひとつ無い夜空のようにきれいな黒髪のロングストレート。くりっとした愛らしさと曇りのない澄んだ宝石のような瞳。ベージュ色の少し大きめのセーターを着てる、そんな天使のような女の子がそこにいた。
「お兄ちゃん!会いたかったよ〜」
彼女は
「ただいま、元気にしてたか?」
そう言うと妹はとても嬉しそうに頷いた。
「久しぶりだな廻斗君、元気にしてたか」
「はい、この通り元気です」
そう話してきたこの人、
「こんなとこで立ってないで早くリビングに行こ!」
そんな妹、恋奈に連れられて家の中に入って行こうとした。そのとき恋奈は、何故か手を引くのではなく、腕を組んできた。
そうすると恋奈の柔らかい豊満な胸の感触が伝わってきた。俺は驚き、すぐに恋奈の方を見た。すると、恋奈はとても幸せそうに俺に抱きついている。そんな恋奈を見た俺は離れようにも離れられず、そのままリビングの方へと向かった。
リビングへ着くと俺は、恋奈と一緒にソファーに座る。そうすると、創志さんはそっと2人分の暖かいお茶を置いてくれた。
「ありがとうございます創志さん」
「これぐらい気にしなくてもいいよ」
そう言って創志さんは笑顔で接してくれた。
やっぱり創志さんは優しいな。この優しさがもっと昔に、俺が誰かに向けられてたらな...と考えていると、
「検査はどうだった?」
「やっぱり、なかったです」
創志さんに聞かれ、そう答えた。そうすると
「やはりそうか」
「え?」
創志さんは真剣で、そしてなんだが、深刻な顔つきで話した。それを見て俺はつい声が出てしまった。そして、創志さんは話を続けた。
「まずは廻斗君について整理しよう、まず君は
「はい」
「だから3ヶ月間神戸にある
「そうです」
俺はそう答えると創志さんはもっと深刻な顔で話していった。
「だから僕は廻斗君の異能力がどんなのかを研究した。そこで分かった事がある」
俺は息を飲んだ。
「それは...君の異能力は、ある特定の行動、現象が起きた時に発動するものだということが分かった。」
なるほどだから今まで能力が出なかったのかそれなら納得がいく。じゃあ、なんで深刻な顔をしてたんだろう?
そう思った時、それはすぐに分かった。
「この異能力はいつ、どこで、誰が、どのように発動するか分からない。だから、分かるまではとても危険なんだ。」
それを聞いて俺は、昔の事を思い出してしまった。昔、初めて世界の残酷さを知った時の事を。
「でもこれは廻斗君だけじゃない、ただ世界にもほとんど無い能力だったから、時間がかかってしまった。本当にすまない。」
創志さんは本当に残念そうに謝った。
「そんな、謝らないでください。逆に俺が謝らないと、いけないぐらいです。」
そう言うと、創志さんは少し気まずそうに、小さな声で、ありがとう、と言った。
そうやって一段落つくと、
「そういえば私の異能力って分かりました?」
恋奈が質問した。すると創志さんは、嬉しそうに答えた。
「恋奈ちゃんの異能力も凄かったよ!恋奈ちゃんの異能力は、異能力の干渉を無効にする異能力だよ。」
恋奈は嬉しそうに俺に抱きついてくる。まじで可愛い。でもこれで俺の異能力が発動しても恋奈には干渉しないってことだな。
そう思うと俺は、それが嬉しすぎて、つい恋奈に抱き返した。
すると恋奈は体がビクンっとなて、思いのほか、恋奈の体が熱くなった気がする。
そんな事をしていると、
「さぁ!全員揃ったからご飯でも食べますか」
と元気な声と共に立ち上がって台所の方へ向かった。そして、俺が抱きしめていた恋奈も少し顔を赤くして台所の方へ向かった。
そして俺はそんなどうしようもない、ごく当たり前な日常生活を実感して、少し感動してしまって、涙がこぼれてしまっていた。
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