だから俺は死にたい

桜坂虚無

悲劇の始まり

第1話 ぬるま湯の中で

暗闇に包まれる人気の無い道路に、夜行バスが前方を照らして躊躇無く進んでいく。その中にいる乗客は家に帰る者、寝ていて乗り越した者、それ以外の目的がある者がほとんどだからか、乗客はとても少ない。周りを見ても約数人しかいない。 それを確認した俺、

倉宮くらみや廻斗かいとは、そっと視線を下ろし、異能力ネインと書かれた分厚い古い本に視線を向けた。それは、約200年前にあった、ある出来事を書いた本だった。そして、ゆらゆらと揺れるバスの中、微睡まどろみの中で本を読む。そこにはこう書かれていた。


異能力ネインとは、世界人口の約99%が持つと言われている力で、力を持つものは異能力者ネメア、力を持たないものは無異能力者ネレスと言われる。だがこれは最初からあった力ではない。


この力の初めは2017年に世界に突然降ってきた謎の隕石5つによって引き起こされたと考えられている。それはその当時、隕石の研究をしていた世界最高の研究者カール・マレクインという男が

「この隕石は特殊な光を放っており、その光を長時間浴びた者は特殊な能力に目覚める」と公言したからだ。


それからというもの、研究者やその関係者などが次々に異能力に目覚め、大地を操る異能力、水を操る異能力、10キロまでしっかりと見える異能力、中には人の心を読める異能力などを持つ者も現れた。

異能力には大きくわけて2つある。


1つ目は、火、水、風などの元素を使う異能力。これを元素異能力という。世界の約7割がこの異能力と言われている。


2つ目は、それ以外の能力。この能力は元素異能力と違って使える人が少なく、世界の3割がこの異能力と言われるほど、希少な異能力。これを、特殊異能力という。


そんな神のような隕石は国と国同士の争いの火種にしかならなかった。そして2029年

第三次世界大戦が勃発ぼっぱつした。参加した国はほぼ全て。そして戦争が起こった国は隕石の落ちた、アメリカ合衆国、ロシア、イギリス、サウジアラビア、そして日本だ。これらの国はすぐに危機を察知し、同盟を組み、そしてある組織を作った。それは、世界異能力者平和機関ネメシスという、異能力者を中心に構成された組織、その目的はただ1つ、世界の平和維持のため。


そのおかげで2032年、第三次世界大戦は終了した。その決定打になったのは、隕石のある事実だった。それは、隕石の光の中に含まれる不思議な成分、原初ソウルアレイによって、異能力が目覚めるのだが、原初ソウルアレイは感染病みたいに人に人に感染していくことだった。このことにより、異能力者への妬み、憎しみの感情が薄れていった。


その、およそ3年という期間で、沢山の人が泣き、苦しみ、死んでいった。これは、どれだけ時間が経っても誰一人、絶対に忘れてはいけない事だ。だからこれだけは覚えていて欲しい。もし、これから先また同じような出来事があったら、必ず...........


と作者が読者に思いを伝える、大事なところの手前で、廻斗かいとに強烈な睡魔が襲い、ゆっくりと目を閉じ眠りについた。それは、まるで暖かくもなく冷たくもない、それはまるで、ぬるま湯の中に浸かっている、いや、



これは、第三次世界大戦が終わり、それから200年後の世界、2232年のある少年の物語である。







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