第10話 新たな標

眠り姫のお世話に追われた翌日。突然の右眼の激痛にエリックは飛び起きた。


「痛え。何だよ突然、ってコレは何だ⁇」


目覚めたエリックの視界に入ったのは突然に現れたとしか思えない宙に浮くディスプレイ。遺跡探索などで見かける古代文明の文字が表示されていく。


訳もわからないまま、とりあえずそのディスプレイを手に取ろうと手をのばすがそれに触れる事は出来ずに宙を切る結果に終わる。


「どうなってる? 実物があるわけじゃないのか。片眼を閉じると消える。って右眼にしか見えてないって」


色々と試すうちにそれが右眼にしか映らない事に気付き思わずため息が溢れる。自分を叩き起こしてくれた激痛、そして現れた妙なディスプレイ。どう考えても無関係であるはずもない。

触ってみた限りは右眼に以上は感じられない。何かしらの機械が取り付けられている訳でもない。だとしたらどうやって見えているというのか。

手がかりもなく途方に暮れる。一応手鏡でも持って来て確認しようかと動き出そうとしたところでとある事に気がつく。


「これって良く遺跡とかで見かけてる古代文字のハズだよな。何でオレ理解出来てんだ?」


遺跡の探索などの最中で見かける事はあった古代文字。それがそうであると判断するほどの知識こそあれそれを解読するほどの学はエリックには無い。

一流に探索者を目指してる以上、何れは簡単に解読出来るくらいになりたいと考えてはいたが彼はまだ見習いレベルでしかない。

そのはずなのに何故かエリックはディスプレイに表示された文字列を理解できた。


“統合管理システム再構築完了。ミーミル再起動します“


そして頭に直接響いてくるかのように聴こえる声。それはあの戦闘の途中で聞こえてきた声に似ていて。


『おはようございます我が契約者。統合管理システム《ミーミルの泉》再構築完了、再起動しました。システムチェックーーーエラー。一部の不具合を確認、兵装に制限が掛かっています。設定検索中---現状使用可能なレベル1で設定を完了します。ミーミルの泉は早期のアップグレードを推奨します』


突然の自体にただただ呆然とするしかないエリック。内容ほとんどは理解できなかったものの唯一分かったことといえばこれがあの遺物に関連して発生した出来事だということ。

何とか噛み砕いて考えを落ち着けようとするものの事態は彼を待ってはくれない。


最重要保護対象第一姫からの情報を受信。情報確認、最重要案件と判断。至急契約者に行動を求めます。地理データフィードバック、アップデート完了。目標は旧研究所名称第4魔科学研究所です』


緊急要請の声と共に右眼へと表示される情報群。それはエリックもよく見たことのあるこの周辺の地図そのもので。いや更に言うなら彼の知る周辺地図以上の詳細な情報を載せた高性能版であり、ベルカの遺跡らしきものも正確に写っている。そして一つの光点がある場所を示していた。


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