第7話

猛攻を何とか掻い潜りいったん距離をとることができた。だが消耗は大きく呼吸は激しく肩で息をするよな状況に陥っていた。



「今のを受けきったか。っち、予想以上にいい動きだ、いや異常と言っても良い」


「え――――?」


 忌々しげに呟かれた男の言葉を聞いたところである違和感を唐突に感じた。




 なぜまだ自分は生きているのか―――




 先ほどは避けることに必死で他の事を考える暇などなかったために気づかなかったが、冷静になった頭で考える。

 先ほどの敵の猛攻、あれは自分が避けれるような攻撃ではなかった。事実何度か避けきれないと直感的に感じたものが何度かあったように思う。相手が手加減をしていたとも思えない、仲間が倒されていたことで確実に殺そうとしてきていた。

 

 しかし、それらを何とか避けきった自分がここにいる。


 眠っていた力が目覚めたなどという夢物語はあるはずもない。しごかれ続けた修業時代、何度も死にそうになった。その中で自分の限界というものは嫌でも知れた。

 

 それなのに明らかに今、自分はその『限界』を超えた動きをしていた。


 それは突然の身体能力の上昇と言うべきか。振り返ればこの戦いが始まった時からそうだったように思う、先の戦いでは感じることが無かったこの違和感。自分自身に起きる突然の変化というの恐怖を感じるものだ。それによって戦闘中にも関わらず混乱状態に陥ってしまう―――それを相手が待ってくれるはずなどなく、事態は最悪の状況に向かう。


「手加減をしたつもりはないんだがな。もしや・・・のと・・がすんでいるのか?…いやそれならばこんなものではあるまい。だがその危険はありそうか…ならば今のうちに全力でもって消させてもらおう」


 ぶつぶつと何かをつぶやいていた男が何か動きをみせる。それを受けて混乱する頭のままでありながら何とか対応しようと構えをとった。


その視線の先でまた新たなる異常事態が起きる。後ろの仲間たちに合図をしてさらに距離を取らせた男は拳を眼前にもってくると祈るように一言つぶやく―――


「―――女神よ!!」


 その言葉とともに鎧が輝き光を帯びた―――その瞬間に嫌な予感に襲われる。頭の隅で『神の加護』という単語が何故かよぎる。 


「いくぞ――」


 男が呟いた瞬間に男の姿が掻き消える、そして感じる衝撃。気が付いた時には真横から受けた衝撃で吹っ飛んでいた。それは消えたように見えた男によって放たれた横切りだ。おそるべき速度で近づいてきた男に攻撃されたのだ。身体能力が上がっている状況にも関わらず反応が追い付かない、攻撃が当たる瞬間にそれを認知出来た程度である。


「―――ぐはっ」


宙に浮いた体に加えられる何度もの斬撃によって意識が遠のいていく、斬り傷から流れ出ていく血、打撃によって砕かれていく骨、一瞬のうちに与えられたダメージによって崩れ落ちる。


「―――が、…こんな――」


 地面に伏せる自分の体を何とか動かそうとするが、ピクリとも動かない。言葉が言葉にならず今にも意識を失いそうになる、そんな自分に近づいてくる気配。


霞む視界に剣を振り上げる男の姿がみえた。


「手間取らされたが、これで終わりだ―――安心しろ用が済めばそこの娘も後を追うのでな」


 男の言葉に少女の事を思い出す、視線を動かすと少女に近寄る男の仲間たちの姿。そして今だ眠る少女を見たその瞬間に意識は暗転する。

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