第4話

油断大敵、絶体絶命、今さら後悔しても遅いのは分かっていても過去の自分の選択に文句を言いたくなってくる。危険性があると分かっていながら飛び込んだのだから自業自得以外の何物でもないとしても。


「ん? 何事だ?」

「何だそいつは?」


 言い争っていた二人も仲間の声に気づいてこちらへとやってきてしまった。だがそのおかげで首からは剣が遠ざかった。この間にひたすらに対抗策を考える。


「分からん、20階で声がしたのが気のせいとは思えなくてな、念のために隠れて待ってみたらこいつが現れたというわけだ」


 剣先を向けられて通路の中央まで追いやられてしまう、そして明かりを向けられる。


「何だまだガキじゃねーか。何でこんな場所にいるんだよ、子供はオネムの時間だろうが」


「だよな~ ガハハ」


 俺をみて小馬鹿にしてくる相手にムッとするが、この状況では言い返せない。俺の年齢は今年で15だ、ガキ扱いされても仕方がない年齢かもしれないがプライドとして許せなかった。


「その服装は―――お前もしかして探索者か?」


 俺に剣を向けている男に言い当てられてしまった。


「探索者~?こんなガキがか?」

「ナイナイ」


 他のふたりは相変わらず馬鹿にしてくるが、剣を構えたこの男だけは俺から目を逸らさない。


「おいお前ら油断しすぎだ、ここまで一人で来るような奴だぞ。年齢など関係なく油断ならんさ。―――――まず腰元に隠し持っている武器をこちらに渡してもらおうか?」


 武器の存在まで感づかれていたようだ、反撃の機会を狙っていたのを見抜かれたか。探索者としての修行の中にはもちろん戦闘も含まれていた。生半可な鍛え方はしてこなかったしそこらへんの探索者より強いという自負はあった。実際に過去には師匠と一緒に盗賊を倒したこともある、人の命を奪った経験は既にあるのだ。甲冑を着込んでるような相手だ、剣の腕前もあるだろうと考え油断してるうちに返り討ちにしようとしていたのに―――この男、多分リーダー格だと思われるコイツは油断できなさそうだ。


 そんな時、剣を抜き放ち俺を馬鹿にしていた男の一人が不用意に近付いて来た。


「なに言ってんだよリーダー、まだガキだろう? それに俺たちを見られた以上殺すしか無いんだ、ひと思いに殺ってやろうぜ」


 そして言われたその言葉、俺を生きて帰すつもりは無いようだ。覚悟が決まった―――――仲間が近付いて来たことで剣を俺に向けていた男の視線が一瞬逸れた!!


 その瞬間に腰にあった短剣を抜き放って、まず不用意に近づいて来た男の兜の隙間へと突き刺す、肉に食い込む感触のあとに硬い衝撃、骨まで届いた致命傷だろう。まずは一人目!!


 すぐさま短剣を抜くとその男を蹴り飛ばしてリーダー格の男へとぶつける。

 

 そして今倒した男が落としたロングソードを拾うと呆然としていたもう一人へと斬りかかりその首を飛ばす!!二人目


 返り血を浴びてしまったが、そのまま動きを止めずリーダー格の男へと向かう、仲間の死体からまだ抜け出せずにいるそいつへと剣を突き立てた。


「ぐっぐふッ―――――きさまっ」


 血を吐き出しながらも俺へと未だ声をかけてきた。もう長くは持たないだろう。


「悪いねオッサン。アンタだけは油断できないと思ってたけど運が良かったみたいだ。俺はまだ死ぬわけにはいかないのでね」


 最後にそう言って彼らへと背を向ける。今回はギリギリであった運がなければ死んだのは自分だったろう。


「いてっ。やっぱり無傷とはいかなかったか」

 

 痛みに脇腹を見てみると斬られた個所から血が滲んでいた、深い傷ではなさそうだ。すべてうまく避けたつもりだったのだがそうはいかなかったようだ。


「っと――そういえば…」


痛みに顔を顰めながらあることを思い出した。傷口を押さえながら歩き出す、向かう先は先ほど男たちが騒いでいた光があふれていた部屋。


 



そして向かったその場所で俺は一つのアーティファクトとある一人の少女と出会った。

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